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Vol.115 2014年5月26日
ブラジル ~ 日本の反対側にある,多様性に富んだ国

2014年6月,「2014 FIFAワールドカップ・ブラジル大会」が始まります。また2016年には「リオデジャネイロ・オリンピック・パラリンピック」も予定されており,世界的なスポーツイベントの開催に向けて,日本はもちろんのこと世界中の人々の注目が,今ブラジルに集まっています。今回は,南米最大の国であるブラジルを紹介し,その豊かな魅力とともに,日本とブラジルの深い絆について解説します。

ブラジルとは

ブラジル地球儀で見ると,ちょうど日本の反対側に位置するブラジルは,南米で最も大きな面積を有する広大な国です。その面積は約851.2万平方キロメートルと,南米大陸のおよそ半分を占めており,アマゾン地域の熱帯雨林地域から南部の温帯湿潤気候まで,様々な気候帯を有しています。南米大陸の中でブラジルと国境を接していないのは,エクアドルチリの2カ国のみ。北はフランス領ギアナ,スリナムガイアナベネズエラコロンビア,南はウルグアイアルゼンチン,西はパラグアイボリビアペルーの10カ国に囲まれています。東側の大西洋に面した海岸線は,7,367kmにも及びます。この海岸線の膨らみは,アフリカ大陸の西部のへこみとちょうど合う形になっていますが,これは大陸移動説によると,かつては陸続きだった南米大陸とアフリカ大陸が,何百万年以上も前に分かれたからだと言われています。

 

ブラジルに暮らす人々

ブラジルの人口は,現在約1億9,840万人で,世界的に見ると,中国,インド,米国,インドネシアに次いで,第5位の規模を有しています(「世界人口白書2012」より)。「移民の国」とも言われるブラジルは,暮らしている人々も様々で,北部は先住民であるインディオやサハラ砂漠西方から来たアフリカ系,中部はポルトガル系移民の他,イタリア系も多く,サンパウロ近郊には日系人や,シリアやレバノンなどの中東系の人々もたくさんいます。南部ではウクライナやポーランド,ドイツなどヨーロッパからの移民,アルゼンチンに近い地域では「ガウーショ(牛飼い)」の文化も見られます。このように,多種多様な人々が生活しているブラジルは,人種だけではなく「文化のるつぼ」でもあり,多様な文化や生活様式が育まれ共存しています。

 

ハイテク技術と豊富な資源を有する経済大国

日本人にとっては,サッカーやコーヒー,サンバカーニバルの印象が強いブラジルですが,BRICS(ブラジル,ロシア,インド,中国,南アフリカ)の一員である経済大国であり,ハイテク産業が発展した工業国でもあります。中でも航空機産業は有名で,売上台数世界4位の旅客機メーカー・エンブラエル社はブラジルを代表する輸出企業であり,日本をはじめ世界中の航空会社や企業と取引を行っています。また,鉄鉱石やボーキサイト,レアメタル,エタノール等の鉱物・エネルギー資源が豊富で,ブラジルの石油採掘会社・ペトロブラス社は,深海油田から石油をくみ上げる技術に関する世界トップクラスの企業です。一方でブラジルは,世界最大の農業大国であり,砂糖,コーヒー,オレンジジュース,鶏肉,たばこ,トウモロコシ等は,世界一の輸出額を誇ります。日本も多くの一次産品をブラジルから輸入しており,私たちの食卓には,様々なブラジル産の食品が並んでいます。

 

私たちの身近にある「ブラジル」

その他にもいろいろな場面で,私たち日本人は「ブラジル」と触れ合っています。例えば,ブラジルの音楽では「ボサノヴァ」が有名ですが,その他にもブラジルのジャズと称される「ショーロ」や,今世界で注目されている「セルタネージョ」など,多くのファンから支持されている音楽がたくさんあります。さらに,最近,東京を中心に「シュラスコ(ブラジル・バーベキュー)」や「フェイジョアーダ(豆と肉の煮込み料理)」などを提供するブラジル料理店が増えていたり,「アサイー」などアマゾンフルーツのドリンクがスーパーやコンビニエンスストアに置かれるようになったりと,ブラジルの食文化が徐々に日本に浸透していっています。また,ブラジルと姉妹都市関係にある自治体が日本各地に57もある一方で,群馬県大泉町や静岡県浜松市には「ブラジルタウン」が形成されていたり,浅草をはじめ,日本各地でサンバカーニバルが開催されていたりと,地方自治体レベルでの交流も活発化しています。また,近年の日本サッカーの躍進は,多くのブラジル人選手やブラジル人監督の存在なしには語れません。

フェイジョアーダ  アサイードリンク
 

ブラジルの身近にある「日本」

リベルダーデ広場でのラジオ体操の様子ブラジルの人々にとっても,日本はとても身近な存在です。ブラジル各地で,日本文化を紹介する祭りが盛んに開催されていますが,中でも毎年7月にサンパウロ市で開催される「日本祭り」は,3日間で約18万人を集める,世界最大規模の日本イベントです。日本食を提供するブースでは,焼きそばなどが大人気です。若者たちの間では,手巻き寿司ショップが「テマケリーア(Temakeria)」と呼ばれてブームになっている他,日本のアニメやカラオケも人気で,コスプレも大流行しています。日本映画や日本人監督の人気も高く,最近では滝田洋二郎監督の「おくり びと(ポルトガル語タイトル“A Partida”)」はブラジルでも大ヒットしました。また,「ラジオ体操」は長年の静かなブームであり,街の広場でユニフォームを着てラジオ体操をしている光景が,サンパウロ市などでは朝の名物となっています。

サンパウロ市の「日本祭り」の様子  フルーツの手巻き寿司
 

100年を超えるブラジルの日系社会

このように,地球のほぼ反対側にあるにもかかわらず,ブラジル社会に日本文化が浸透しているのは,100年を越える日系社会の歴史と深くかかわっています。1908年,最初の移民船「笠戸丸」がサントス港に到着してから,戦前・戦後を合わせて約25万人もの日本人がブラジルに移住しました。移民に寛容な社会環境のもと,今では6世も誕生する,160万人を擁する世界最大の日系社会がこの地に築かれています。ブラジル人は非常に親日的ですが,それは日系ブラジル人の「勤勉」「正直」「信頼できる」という人間性が,高く評価されていることも要因の一つでしょう。ブラジル社会における日系人の活躍も目覚ましく,政治家や知的専門職である裁判官や弁護士,そしてスーパーモデルのジュリアナ・イマイや,歌手のフェルナンダ・タカイ,タレントのサブリナ・サトウなど,多くの有名人を輩出しています。

サンパウロ市にある「日本移民ブラジル上陸記念碑」
 

日本とブラジルの交流史

二国間関係で見てみると,1895年の外交関係樹立以来,日本とブラジルは友好的な関係を築いており,国連安保理改革(G4)等,国際場裏における協力関係を推進しています。経済協力についても,農業,インフラ整備など,様々な分野において進めており,ウジミナス製鉄所やアマゾン・アルミプロジェクトなど,息の長い,国家的プロジェクトをいくつも行ってきました。中でも「日伯セラード農業開発プログラム」では,ブラジル中西部地帯に広がる,“不毛の地” と呼ばれるセラード(Cerrado)を,世界的穀倉地帯へと変身させることに成功し,ブラジルの穀物生産を飛躍的に増大させました。近年では,環境・防災の分野の協力を進めている他,人材育成の面では,ブラジル政府が推進する「国境なき科学(Science without Borders)」計画に日本も協力し,日本への派遣を希望するブラジル留学生に対する受け入れを,日本の大学や研究機関等で実施しています。

「国境なき科学」計画の記者会見時の様子  「国境なき科学」計画ロゴマーク

「国境なき科学」計画で訪日しているブラジル人留学生の声

ギリェルメ・エドゥアルド・クルス・ピオベザン・マシャドさん
(留学先:北海道大学/専門分野:土木工学)

 

●留学の動機

新しい文化や,異なった生活様式,社会的な立ち居振る舞いを持つ人々に出会い,自分の世界を広げたいと思い,「国境なき科学」計画に参加しました。日本を選んだ理由は,工学,都市工学,建設分野において高い水準であることが知られているため。まさに1ミリ1ミリ,緻密に計画されたような札幌の街中では,自分が学ぼうとしているものに日々出会うことができます。

 

●日本の印象

キーワードで言うと,①努力,②組織力,③便利。サラリーマンの勤勉さや就職活動の際の努力,あらゆるものが計画され実行される組織力(友人との集まりや娯楽でも開始時間と終了時間がある),コンビニや公共交通機関,観光のためのインフラなどに見られる便利さが,特に印象的です。

 

日ブラジル外交関係樹立120周年

日本ブラジル交流年に開催された「ブラジル・ポップ・カルチャーナウ」(2008年9月)の様子日本でもここ数年,ブラジルに関する話題が増えてきており,2008年の日本ブラジル交流年では,日本人のブラジル移住100周年を祝うとともに,両国で幅広い交流事業を行ないました。これからは,2014年6月の「2014FIFAワールドカップ・ブラジル大会」や,2016年8月の「リオデジャネイロ・オリンピック・パラリンピック」に向けて,日本からブラジルへの渡航者数も増え,ブラジルをより身近に感じることとなるでしょう。また,この世界的な二大スポーツイベントと前後した2015年には,「日ブラジル外交関係樹立120周年」として,様々な記念事業が実施される予定です。日本とブラジルは,距離的には遠い国ですが,お互いを尊重し合う文化や協力の歴史があります。今後行われるスポーツイベントや記念行事を通して,両国の人々が,さらにお互いをよく理解するようになることが期待されています。

 
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