日本とブルネイは,エネルギー面での協力をはじめ,長年にわたって良好な二国間関係を築いています。今回は,2014年に外交関係樹立30周年を迎えるブルネイという国について紹介するとともに,ますます深まっていく日本とブルネイの交流について解説します。
■ブルネイとは
ブルネイは,東南アジアのボルネオ島(カリマンタン島)の北部に位置する国です。正式名称は,ブルネイ・ダルサラーム(Brunei Darussalam)で,「永遠に平和な国」という意味があります。面積は5,765平方キロメートル(日本の三重県とほぼ同じ大きさ)で,人口は39.9万人(2012年)です。公用語はマレー語ですが,英語も広く通用し,中国系住民の間では中国語もある程度用いられています。国内は,ブルネイ・ムアラ,トゥトン,ブライト,トゥンブロンの4つの地区(District)に分かれており,首都バンダル・スリ・ブガワンはブルネイ・ムアラ地区にあります。ブルネイは1984年に英国から完全独立し,以降,国際社会における存在感を徐々に高めています。
■“豊かな自然と資源に恵まれた平和な国”
地球儀で見るとブルネイはとても小さな国ですが,自然と天然資源に恵まれた豊かな国で,石油や天然ガスを世界に輸出しています。そのため,東南アジアでは,シンガポールに次ぐ高い経済水準と充実した社会福祉を実現しています。ブルネイ国民であれば,原則,医療費(公立病院)や教育費(公立学校)は無料,個人の所得税もかかりません。さらに,治安が良く,自然災害が少なく,豊かな観光資源を有することでも有名で,世界最大の水上集落「カンポン・アイル」や世界最大級の王宮「イスタナ・ヌルル・イマン」,旧モスク「スルタン・オマル・アリ・サイフディン・モスク」や新モスク「ジャミ・アサル・ハサナル・ボルキア・モスク」などの美しい建造物は,多くの観光客を魅了しています。また,国土の約6割が熱帯雨林であるブルネイは,空気や水が清浄で,ボルネオ島にしか生息しないと言われるテングザルのウォッチングや,ジャングルトレッキング,ラフティングなどのエコツーリズムを楽しむことができます。


■国王のカリスマ性
ブルネイは,敬虔なイスラム教国であり,スルタン(宗教的権威)と呼ばれるハサナル・ボルキア国王が治める立憲君主制の国です。ボルキア国王は,国の象徴としてだけではなく,首相として政治に関わり,さらに財政,国防のトップも兼任しています。名実ともに頼れるリーダーとして,国民からの深い敬愛を受けています。また,スポーツマンであることでも知られており,バドミントンやポロ,水泳,サイクリングなどを趣味とし,2013年の日・ASEAN特別首脳会議の際には,自ら専用機を操縦して訪日したことでも話題になりました。
■ブルネイの国旗の意味
ブルネイの国旗に描かれているモチーフには,それぞれ大きな意味が込められています。背景の黄色と上部の傘は「王家の象徴」,その傘を支えている4つの羽からなる翼は「正義・平穏・繁栄・平和」を表しています。三日月は「イスラム教の象徴」であり,それらを包み込む2つの手は「福祉・平和・繁栄を誓う証」です。その下にはアラビア文字で,国名とともに,「常に神のお導きとともに」と記されています。
■ブルネイの国民性
では,ブルネイ人とは,どのような人々なのでしょうか。一般的に,大変温和で穏やかであると言われています。そして大家族が多く,家族の絆を非常に大切にするという特長があります。伝統的なしきたりや儀式的な行事を重んじるとともに,国王や王族への尊敬心が深いことでも有名です。またイスラム教が社会に根付いており,信仰心が厚く,ハラル認証は政府が行っているので,ブルネイのハラルは信頼度が高いと言われています。対日感情は良好で,最近では若者を中心に,マンガやアニメなど,日本のポップカルチャーへの関心も高まっています。
■日本とブルネイとの交流
日本とブルネイは,エネルギーを基盤とした良好な関係を構築しており,お互いに欠くことができない大切なパートナーとして歩みをともにしています。日本がブルネイから輸入している天然ガスの量は年間で約500万トン,日本が消費する全ての天然ガスの約6%にあたります(2013年)。一方,ブルネイにとっての日本は,最大の貿易相手国であり,ブルネイが輸出する天然ガスの約90%は日本向けです(2012年)。また,人的交流,特に青少年交流も活発で,「21世紀東アジア青少年大交流計画(JENESYS) 」を通して,約350人近いブルネイの青少年が訪日しました。そして
2013年からスタートした「JENESYS2.0」でも,青少年
交流が引き続き行われています。また,東日本大震災
の際には,ブルネイ政府から100万米ドルの寄付と,民間からの義援金の他,天然ガスの緊急調達が行われるなど,多大なる支援を受けました。
■日本との経済関係
ブルネイの外交政策は,ASEANの結束と強化を柱としており,2013年には,ASEAN議長国を務めました。日本との二国間関係では,幅広い経済関係の強化を目指して,2007年6月,ボルキア国王の訪日時に「日・ブルネイ経済連携協定(EPA)」に署名しました(2008年7月発効)。2009年12月には,両国間の経済的交流,人的交流等に伴って発生する国際的二重課税の回避を目的とした,「日・ブルネイ租税協定」が発効しました。日本は,これまで同様に,天然ガスの安定供給を希望し,日本企業によるメタノールなどの製造事業やハラル食品製造等を通して,ブルネイの産業多角化や雇用創出に貢献しています。また再生可能エネルギーや省エネルギー分野等で,日本の技術を活かした協力を進めていく方針です。ブルネイも,エネルギー面での協力や日本からの投資を含め,日本との良好な経済関係を引き続き強化していく考えです。
■日・ブルネイ友好30周年
2014年,日本とブルネイは外交関係樹立30周年を迎えます。記念すべき年のスタートに先立ち,2013年12月13日,東京で開催された日・ブルネイ首脳会談後の共同記者発表にて,安倍総理とボルキア国王が,「日・ブルネイ友好30周年」のロゴマークを発表しました。ブルネイの国花であるシンプール(和名:カンボクビワモドキ)と日本の桜のイメージが交わり合ったこのロゴマークは,2014年に行われる様々な友好年記念行事において使用されています。今回の友好30周年をきっかけに,日本とブルネイ両国の絆が,より一層深まっていくことが期待されます。
