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Vol.109 2014年2月7日
「障害当事者の声が実を結ぶとき~障害者権利条約の締結

2014年1月20日,我が国は障害者権利条約を批准しました。2006年12月,国連総会で障害者権利条約が採択されてからおよそ7年。今回は,条約締結にいたるまでの道のりを紹介するとともに,障害者の権利の実現と人権尊重に向けた日本の取組について解説します。

障害者権利条約とは

国連総会で,「障害者の権利に関する条約」,いわゆる「障害者権利条約」(略称)が採択されたのは,2006年12月のことです。障害者権利条約は,障害者の人権や基本的自由の享有を確保し,障害者の固有の尊厳の尊重を促進するため,障害者の権利を実現するための措置等を規定しており,障害者に関する初めての国際条約です。その内容は前文及び50条からなり,市民的・政治的権利,教育・保健・労働・雇用の権利,社会保障,余暇活動へのアクセスなど,様々な分野における障害者の権利実現のための取組を締約国に対して求めています。

障害者権利条約とは
 

条約の主な内容

障害者とスロープ障害者権利条約では,障害に基づくあらゆる差別を禁止しています。ここで言う「差別」とは,障害者であることを理由とする直接的な差別だけでなく,例えば過度の負担ではないにもかかわらず,段差がある場所にスロープを設置しないなど,障害者の権利の確保のために必要で適当な調整等を行わないという「合理的配慮の否定」も含まれるということが,明確に示されています。またこの条約は,障害者が他の人と平等に,住みたい場所に住み,受けたい教育を受け,地域社会におけるサービスを利用できるよう,障害者の自立した生活と地域社会への包容について定めています。さらに,条約の内容が実施されているかを監視する機関を国内に設置することが明記されています。

 

条約成立までの国際的な経緯

国連で障害者権利条約が採択されるまでには,様々な取組がありました。1975年に,日本も共同提案国となり,障害の種別や程度を問わずあらゆる障害のある人を対象とする「障害者の権利宣言」が採択されました。翌年には,1981年を「国際障害者年」とすることが決議され,1982年には,「障害者に関する世界行動計画」,「国連障害者の十年」(1983年~1992年)の宣言が採択されました。1993年には,「障害者の機会均等化に関する標準規則」が採択され,障害者の社会的障壁を取り除くべきとの理念が示されました。その間,障害者差別撤廃のための条約作成を提案する動きもありましたが,コンセンサスに至りませんでした。最終的に,2001年12月の国連総会にて,メキシコ提案の「障害者の権利及び尊厳を保護・促進するための包括的総合的な国際条約」決議が,コンセンサスにより採択されました。この決議で,同条約に関する諸提案について検討するため,すべての国連加盟国及びオブザーバーに開かれた「アドホック委員会」を設置することが決まりました。

 

“私たちのことを,私たち抜きに決めないで”

アドホック委員会条約の起草に関する交渉は,政府のみで行うのが通例ですが,このアドホック委員会では,障害者団体も同席し,発言する機会が設けられました。それは,障害当事者の間で使われているスローガン「“Nothing About Us Without Us”(私たちのことを,私たち抜きに決めないで)」にも表れているとおり,障害者自身が主体的に関与しようとの意向を反映し,名実ともに障害者のための条約を起草しようとする,国際社会の総意でもありました。日本からも延べ200名ほどの障害者団体の関係者が交渉の行われた国連本部(ニューヨーク)に足を運び,実際に委員会を傍聴しました。日本の政府代表団には,障害当事者が顧問として参加し,日本は積極的に交渉に関与しました。2002年から8回にわたるアドホック委員会の会合を経て,2006年12月13日,障害者権利条約が国連総会で採択されました。

 

日本の署名

障害者権利条約に署名する高村正彦外務大臣(当時)国連総会で条約が採択された翌年の2007年9月28日,日本は国連本部で障害者権利条約に署名 しました。2008年5月3日には,条約の発効条件が整い,障害者権利条約が正式に発効しました。

 

“締結の前に,国内法の整備を”

条約の成立から締結までの日本の取組日本国内では,障害者権利条約の締結に先立ち,国内法の整備をはじめとする諸改革を進めるべきとの障害当事者等の意見も踏まえ,政府は2009年12月,内閣総理大臣を本部長,全閣僚をメンバーとする「障がい者制度改革推進本部」を設立し,条約締結に向けて集中的に国内法制度改革を進めていくこととしました。これにより,障害者基本法の改正(2011年 8月),障害者総合支援法の成立(2012年 6月),障害者差別解消法の成立および障害者雇用促進法の改正(2013年6月)など,障害者のための様々な制度改革が行われました。このように,条約の締結に先だって国内の障害者制度を充実させたことについては,国内外から評価する声が聞かれています。

 

日本の障害者権利条約締結

吉川国連代表部大使からヴィラルバンド国連条約課長へ手交2013年6月の障害者差別解消法の成立をもって,ひととおりの国内法整備の充実がなされたことから,同年10月,国会において条約締結に向けての議論が始まりました。そして2013年11月19日の衆議院本会議,12月4日の参議院本会議において,全会一致で障害者権利条約の締結が承認されました。これを受けて2014年1月20日,吉川元偉国連代表部大使が,障害者権利条約の批准書を国連に寄託し,日本は140番目の締約国となりました。2014年1月20日現在,米国を除くG8,中国,韓国,EU等,140 か国・1地域機関が,同条約を締結しています。

 

条約締結後の取組

日本がこの条約を締結したことにより,障害者の権利の実現に向けた取組が一層強化されることが期待されています。例えば,障害者の表現の自由や,教育,労働等の権利が促進されるとともに,新たに設置された「障害者政策委員会」にて,国内の障害者施策が条約の趣旨に沿っているかとの観点からモニタリングが進められることになります。また,締約国は定期的に条約に基づく義務の履行等について報告書を国連に提出し,その内容は各国の専門家で構成される「障害者権利委員会」により締約国に対して様々な勧告が行われることになるため,国内だけでなく国外からもモニタリングされることになります。さらに,人権尊重についての国際協力も一層推進されることが期待され,例えば日本政府はこれまで国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の場で地域における障害者の取組において果たしてきている主導的な役割を継続していくほか,ODA等を通じて,途上国の障害者の権利向上に貢献していきます。

 
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