わかる!国際情勢 トップページへ

Vol.104 2013年11月18日
国連PKOを通じた日本の貢献の歩み

1992年に日本が初めて国連PKOに参加してから,20年が経ちました。この20年の間に,国連PKOを巡る国内の反応や国際環境は大きく変化しています。今回は,これまでの20年を振り返った上で,日本による国連PKOを通じた国際社会の平和と安定への貢献と,今後の展開について解説します。

「国連PKO」とは?

国連平和維持活動(United Nations Peacekeeping Operations:国連PKO)には,はっきりとした定義は存在していません。なぜなら,国連PKOは,国連憲章で想定されている「国際の平和及び安全の維持又は回復」のための措置(集団安全保障制度)が,戦後の東西対立の中で当初考えられていたとおりに機能しなかったことを受けて,国連が世界各地の紛争を解決するための手段として,国連憲章に明文の規定はないものの,試行錯誤を経ながら活動を積み重ねてきた取組だからです。時の政治状況にも左右されながら,時代の要請に応じて,今も発展してきている概念なのです。国連PKOを支えているのは,国連加盟国が任意で派遣する要員と,義務として拠出するPKO分担金です。世界で初めての国連PKOは,1948年に第一次中東戦争の休戦監視を目的として設立された国連休戦監視機構(UNTSO)で,この活動は60年以上経った現在でも継続して行われています。

国連PKOの展開状況(2013年8月現在)
 

国連PKOの基本三原則

国連PKOの基本三原則国連PKOの活動は,失敗や挫折を経ながらも,現在は基本三原則を順守して行われています。一つ目の原則は「主要な紛争当事者の受入れ同意」です。これは,国連PKO自体が紛争当事者となってしまう事態を避けるためのものです。二つ目の原則は「不偏性」です。これは単に国連PKOが中立の立場を貫くということではなく,国連PKOは特定の紛争当事者を優遇することも,差別することもなく,その任務を実施しなければならない,ということを表したものです。文民に危害を加える紛争当事者がいれば,国連PKOは見て見ぬふりをせず,文民を保護する任務を全うしなければなりません。三つ目の原則は「自衛及び任務の防衛以外の実力の不行使」です。国連PKOにおける実力行使は,他の手段が尽くされた場合の最終手段であり,かつ国連が定める武器使用基準に従って自衛や任務遂行のために必要最低限の範囲で行われます。ここでの実力の行使は,国連憲章第2条4で禁止されている「武力の行使」には当たらないとされています。

 

国連PKOの変遷

パトロールの様子(UNDOF:ゴラン高原)国連PKOは,伝統的には,国連が紛争当事者間に立って,停戦や軍の撤退の監視等を行うことにより事態の沈静化や紛争の再発防止を図り,紛争当事者による対話を通じた紛争解決を支援することを目的とした活動です。例えば,国連インド・パキスタン軍事監視機構(UNMOGIP)国連キプロス平和維持隊(UNFICYP)国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)は,こうした目的のために数十年間にわたって活動を続けています。しかし,冷戦の終結以降,国際の平和及び安全の維持の分野における国連の役割が高まるとともに,国際社会が対応を迫られる紛争の多くが国家間の紛争から一国内における紛争又は国内紛争と国際紛争の混合型へと変わった結果,国連PKOの任務も多様化してきています。

 

複雑化する活動内容

冷戦終結後の国連PKOの多くは,以前の伝統的な形に対して,「複合型」や「多機能型」とも呼ばれます。停戦や軍の撤退等の監視といった伝統的な任務は引き続き重要ですが,これに加え,元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)や治安部門改革(SSR),選挙,人権,法の支配等の分野での支援,政治プロセスの促進,文民の保護など,多くの分野での活動が国連PKOの任務に加えられています。例えば,過去日本が参加した国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)国連東ティモール暫定行政機構(UNTAET)国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)は,軍事部門に加え,文民警察,行政支援,選挙支援,人道支援に関する任務が与えられています。

国際情勢と日本のPKO法の変遷
 

日本の貢献①~人的貢献

カンボジアで活動する自衛隊員の様子(UNTAC)日本が国連PKOへの参加を開始したのは,1992年6月に「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」(通称PKO法)が成立してからです。この法律は,1990年の湾岸危機発生以後,国際社会の一員として,その平和と安全に日本がどのように貢献していくかを模索する中で,国民を二分する議論を経て制定されました。日本はPKO法の成立を受け,この法律に基づく初めての要員派遣として1992年9月に第2次国連アンゴラ監視団(UNAVEM Ⅱ)に3名の選挙監視要員を派遣しました。また同月,初めての自衛隊派遣として国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)に施設部隊等を約600名派遣しました。以後これまで世界各地で展開してきた延べ14の国連PKO等に約9000名の人員を派遣し,日本の要員の活動は規律正しく信頼性の高いものとして,国際社会から高い評価を受けてきました。また,内閣府による平成24年度の「外交に関する世論調査」によると,日本は国連PKOへ参加すべきとの回答が9割以上を占めており,近年格段に国民の支持が広がってきていることが確認されます。しかし,残念ながらUNTACでは1993年4月に国連ボランティアとして選挙準備に当たっていた中田厚仁さんが亡くなり,同年5月には文民警察要員の一員である高田晴行警視が殉職され,また1998年7月には国連タジキスタン監視団(UNMOT)に政務官として派遣されていた秋野豊さんが亡くなられたように,国際社会の平和と安定のために日本人のPKO要員の尊い命が失われたことは,決して忘れてはならない事実です。

 

日本の貢献②~財政的貢献,知的貢献

カンボジアで活動する日本の警察要員人的貢献に限らず,日本は加盟国による分担金としてアメリカに次いで2番目に多い約11%を負担しており,財政的にも著しい貢献を果たしています。また,主にPKO法に基づく物資協力の枠組みで,日本の部隊がPKO活動において使用した物資や機材を,現地政府や国連側に提供するという形の貢献も行っています。最近の例では,日本が2013年2月まで部隊を派遣していたMINUSTAHで,部隊撤収時にプレハブ式建物等を国連へ譲与したほか,現地政府に対してはブルドーザーなどの施設機材等を譲与するとともに,これらを有効活用できるよう,また現地政府の自然災害への対応能力を強化するため,現地政府への支援や現地住民への教育等も実施してきました。日本が2013年1月まで部隊を派遣していたUNDOFにおいては,部隊撤収時に国連からの要請に応じて,日本の輸送車両等を譲与しました。さらに,要員の訓練分野でも,国内において米国と共催でPKO幹部要員訓練コース(第1回) (第2回)や文民専門家を育成する平和構築人材育成事業を実施したり,他国のPKO訓練センターを支援するなど,日本は様々な場面で積極的な取組を行ってきています。国連PKOに関する政策を話し合う唯一の正式なフォーラムである国連総会のPKO特別委員会で毎年日本は副議長を務めるなど,国際場裏での議論にも積極的に参加し,知的貢献において主導的役割を担っています。

日本のPKOにおける貢献
 

現在の日本の要員派遣〜国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)

南スーダンにおいて施設活動を行う要員とそれを見守る住民(防衛省提供) キリスト教徒を人口構成の基盤とする南部スーダンは,アラブ民族主義国家建設を目指すスーダン共和国(北部スーダン)と長年にわたり内戦を繰り返してきましたが,2005年に包括和平合意が成立し,この合意の履行を支援する国連PKOである国連スーダンミッション(UNMIS)が設立されました。2011年7月,住民投票を経て南スーダンは長年望んできた独立を果たし,同時にこの地域の平和と安定の定着と発展を支えるために,UNMISの後継ミッションとして国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)が設立されました。日本は2013年10月現在,このUNMISSに司令部要員として3名及び施設部隊として約350名の自衛隊員を派遣し,誕生してからまだ間もない南スーダンの国づくりを支えています。施設部隊の具体的な活動内容は派遣地域の様々なインフラ整備であり,これは高度な能力が求められる活動ですが,日本の自衛隊がこれまでの国連PKOでの経験を積み重ねている得意分野で,その成果については国連から高い評価を得ています。これら自衛隊は,日本の政府開発援助(ODA),非政府組織(NGO),国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)等の国連機関,さらには他国部隊とも連携して,国づくりに向けた様々な協力を行っています。

 

国連PKOのこれからと日本の貢献の在り方

現在,国連PKOは,様々な課題を抱えています。ここ15年間で派遣要員数が約2万人から約10万人へと約5倍に増加し,PKO予算も年間12億ドルから75億ドルへと約6倍に増加しました。さらに国連PKOの任務内容が多様化・複雑化し,高度な任務に応えられるような,要員,装備面での能力が不足していることも大きな課題となっています。日本に対しても,航空や医療といった専門性の高い分野の後方支援部隊,警察官,女性要員の派遣,装備品の供与について国際社会からの期待は大きいものがあります。しかし,厳格な憲法解釈の下で,極めて謙抑的に制定・運用されている現行法制の下では日本が参加できる国連PKOの数や業務内容は極端に制限され,文民や他国部隊の警護等といった他国部隊であれば国連PKOにおいて当然実施できることすらできない状況にあります。現在の国際社会においては,どの国も自国のみで自らの平和と安全を維持することはできません。日本は,平和で安定した国際的環境が確保されることによって自国にも確かな安全と繁栄がもたらされることを改めて認識した上で,国際の平和と安定に責任ある一員として,積極的に国連PKOを通じて世界の平和と安定のために貢献していくための具体的な方策を今後さらに議論していきます。

わかる!国際情勢メールマガジン配信中!メルマガ登録希望の方はこちらからお申込みください。
ご意見ご感想もお待ちしています。 (外務省国内広報室)
このページのトップへ戻る
目次へ戻る