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Vol.102 2013年6月27日
ハーグ行動規範(HCOC)とミサイル不拡散への取組

日本は2013年5月,ミサイル不拡散の枠組みである「弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範(HCOC:エイチコック)」の議長に就任しました。核兵器や生物化学兵器を搭載したミサイルは国際的な安全保障にとって大きな脅威となります。国際社会はいったいどのようにしてミサイルの拡散を抑止しているのでしょうか。今回は, HCOCの成立とその役割を中心に,世界の平和と安定を目指す国際社会と日本の取組について解説します。

グローバルな安全保障の脅威となるミサイルの拡散

弾道ミサイルや巡航ミサイルなどの種類があるミサイルは,核兵器を含む大量破壊兵器等の有効な運搬手段として,その拡散は国際社会の大きな懸念材料となっています。特に弾道ミサイルは,一旦発射されるときわめて短時間で目的地に到達し,また爆撃機などに比べると弾頭がはるかに小さく,通常のレーダーで追尾することが困難です。もし,弾道ミサイルに,核兵器や生物・化学兵器などが積まれていると,多少命中精度が悪くてもきわめて甚大な被害をもたらすことになり得ます。現在北朝鮮インドパキスタンイランを含め, 38の国または地域が弾道ミサイルの技術を保有しています。

世界の弾道ミサイル保有国(38か国・地域)
 
弾道ミサイルと巡航ミサイル

日本にとって大きな脅威となる北朝鮮のミサイル発射

現在,日本とその周辺地域の安全保障は,北朝鮮のミサイルによって脅かされています。日本国土のほぼ全域を射程下におく弾道ミサイル「ノドン」が配備されているほか,1998年に日本上空を飛び越え太平洋に着弾した「テポドン1」,2006年より発射実験が行われている「テポドン2」といった射程が長いミサイルも保有しており,「テポドン2」は米軍基地があるグアム島や米国本土にも到達すると言われています。2012年4月及び12月には,国際社会が北朝鮮に対し,ミサイル発射の自制を繰り返し強く求めたのにもかかわらず,北朝鮮はミサイル発射を強行しました。これは国連安保理決議違反であると同時に,日本を含む地域の平和と安定を損なう安全保障上の重大な挑発行為であり,日本は北朝鮮に対して強く抗議しました。また,国連安保理は2013年1月,北朝鮮による2012年12月のミサイル発射を非難し,制裁を強化する安保理決議第2087号を全会一致で採択しました。

ミサイル不拡散に向けた国際社会の取組

1987年,核兵器等大量破壊兵器の運搬手段であるミサイルの拡散防止のために,G7(先進7か国=日,米,英,仏,独,伊,加)が中心となって,ミサイルとその開発に関連する製品や技術の輸出を規制する目的で,「ミサイル技術管理レジーム(MTCR)」が創設されました。ちなみにミサイルの他にも核兵器,生物・化学兵器,通常兵器それぞれに対応した計4つの輸出管理レジームが存在しており,国際的な輸出管理の協調によって不拡散体制の強化を図ってきました。しかし,MTCR非参加国などのミサイル開発が進み,1990年代後半に世界的なミサイル拡散傾向が明白になってくると,輸出管理の協調だけでなく,ミサイル不拡散のための新しい政治的枠組みが必要であるとの認識が深まってきました。

「ハーグ行動規範(HCOC)」成立

このように弾道ミサイル拡散の国際的懸念が高まる中,21世紀に入ってMTCRを中心にグローバルなミサイル不拡散の枠組みづくりの検討がスタートしました。2001年9月のMTCRオタワ総会や全ての国に開かれた議論を経て,2002年,オランダ・ハーグで弾道ミサイル不拡散を目的とした初めての国際的合意である「弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範(HCOC)」が93か国の参加を得て採択されました。採択後,現在までに5回にわたり国連総会においてHCOCに対する決議(立上げの歓迎,参加の奨励など)が採択されており,ミサイル不拡散の国際規範として国際社会に広く認識されるようになりました。

 

HCOCの参加国と運営システム

HCOCは法的拘束力を持つ国際約束ではなく,参加国がその原則や措置に従うとの政治的意思を示す文書で,全ての国に開かれています。2013年6月27日現在,135か国が参加しており,参加国のさらなる拡大に向けて非参加国への働きかけを行っています。日本は立ち上げ時より参加している国の一つです。HCOCの運営に当たってはオーストリア政府が中央連絡国として事務局の役割を果たしています。総会における議長国は任期1年で,日本は,上述のとおり,2013年5月に初めて議長国に就任しました。

「HCOC」参加国(2013年6月現在)

HCOCの内容①~ミサイル拡散防止,実験・開発・配備の自制

HCOC年次会合(第12回総会)会議の模様HCOCの内容は,大きく以下の5つに分類できます。
①弾道ミサイル拡散を防止・抑制すること。 ②宇宙ロケット計画を用いて弾道ミサイル計画を隠蔽してはならないこと。 ③弾道ミサイルの実験・開発・配備を可能な限り自制すること。可能であれば弾道ミサイル保有の削減も含む。 ④軍縮・不拡散条約の義務や規範に反して大量破壊兵器の開発を行っている可能性のある国の弾道ミサイル計画を支援・支持しないこと。 ⑤信頼醸成措置 このうち②は,HCOC策定段階で日本が提案したものです。また,⑤は弾道ミサイルや平和目的の宇宙ロケットを保有する国が,情報の公開などにより,国際社会に与える誤解や不信を減少させる措置を指しています。

HCOCの内容②~信頼醸成措置

では,HCOCの信頼醸成措置として,参加国に具体的にはどのようなことが求められているのでしょうか。それは,弾道ミサイルや宇宙ロケットの「事前発射通報」,「政策や発射実績に関する年次報告の提出」,さらに「発射場の視察提供」です。「発射事前通報」と「年次報告の提出」に関して,日本はいずれも早いタイミングで着実に実施しています。また,「発射場の視察提供」として,2005年に,国産のH-IIロケットなどが打ち上げられる種子島宇宙センター国際視察を実施しました。

 

ミサイル不拡散とHCOCに対する日本の取組・貢献

HCOC年次会合(第12回総会)にて発言する議長
HCOC3つの課題

2013年5月,HCOC議長国に就任した日本は,5月30,31日にオーストリア・ウィーンで開催された第12回総会において,非参加国(特にアジア・中東地域)に対するHCOC参加働きかけ(アウトリーチ活動)を強化することと, HCOC参加国による行動規範の履行をさらに促進することを課題として掲げました。またこれらに加えて,日本国民および世界に向けてHCOCの取組と意義を広報し,ミサイル不拡散に対する国内外の意識向上を図ることが重要であるとの認識を示しました。今後日本は,HCOCが普遍的かつ実効的な規範として弾道ミサイル不拡散に寄与するよう,他国と協調しながら世界の平和と安定のために貢献していきます。

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