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● 重点課題 | | |
(1)平和の構築 | |
冷戦終了後、宗教的・民族的要因などを主因として世界各地で紛争が頻発している。これらの紛争は、それ自体が人道危機を引き起こすだけでなく、紛争により長年の開発努力の成果が瞬く間に失われるとともに、膨大な経済的損失を生み出す。日本政府は、2000年に発表した「開発と紛争に関する日本からの行動?アクション・フロム・ジャパン」で、紛争のすべての段階において貧困対策、基礎生活分野(BHN)支援、基礎インフラの復旧などを通じて被害の緩和に貢献するため、ODAによる包括的な支援を行っていくことを表明しており、ODAを通じた紛争問題への取り組みを行ってきている。また、2002年5月に小泉総理大臣がシドニーにおいて行った政策演説の中でも、ODAを含む平和の構築への取り組みについて、平和の定着と国づくりへの支援を国際協力の柱にするという決意を述べている。
日本は「紛争予防」「紛争下の緊急人道支援」「紛争終結を促進するための支援」「平和の定着」「国づくり」まで、状況の流れに即して継ぎ目のない支援を行っている。これらの取り組みは、新しいODA大綱においても平和の構築という重点課題の一つとして盛り込まれている。
日本政府は、これまでにアフガニスタン、イラク、スリランカ、フィリピンのミンダナオ、東ティモール、コソボ、シエラレオネなどの国や地域において、平和の構築に取り組んでいる。
アフガニスタンについて、日本政府は、「アフガニスタン復興支援国際会議」(2002年1月、東京)の際、向こう2年半で最大5億ドルまでの支援を行うことを表明した。続く2004年4月には、ベルリンで開催された「アフガニスタンに関する国際会議」において、2006年3月までの2年間で4億ドルの支援を表明した。また、「イラク復興信託基金ドナー委員会」の議長として、日本はイラク復興支援のための国際協調につとめており、2004年10月には同委員会の拡大会合およびドナー委員会会合を東京で主催している。スリランカについても、2003年6月、「スリランカ復興開発に関する東京会議」を米国、EU(欧州連合)、ノルウェーを共同議長として開催した。その結果、各国および国際機関から4年間で総額45億ドルに達する支援の意図が表明され、そのうち、日本は、向こう3年間で最大10億ドルまでの支援の用意があることを発表した。また、イラクの復興に関して、日本は、当面の支援(主に2004年の復興需要に対応するもの)として、総額15億ドルの無償資金の供与(支援分野は電力、教育、水・衛生、保健、雇用など、イラク国民の生活基盤の再建および治安の改善に重点を置く)、2007年までの中期的な復興需要に対する、基本的に円借款による最大35億ドルまでの支援(分野は電気通信、運輸などのインフラ整備も視野に入れる)の実施を表明している。
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学校現場で働く元兵士:アフガニスタン |
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(2)人間の安全保障 | | |
| 近年、グローバル化がすすみ、国際社会はこれまでにない緊密な相互依存関係を持つようになった。同時に、テロや環境破壊、HIV/エイズなどの感染症の蔓延、国際組織犯罪といった国境を越えた脅威、突然の経済危機や内戦などによる人道上の危機も増大している。
これらに対応していくには、グローバルな視点、地域・国レベルの視点とともに、個々の人間に着目した「人間の安全保障」の視点を導入する必要がある。「人間の安全保障」は一人ひとりの人間を中心に据えて、脅威にさらされうる、あるいはすでに脅威のもとにある個人や地域社会の保護と能力強化を通じ、それぞれが尊厳ある生命をまっとうできるような社会づくりを目指す考え方である。
具体的には、紛争、テロ、難民の発生、感染症の蔓延、環境破壊、経済危機、災害といった「恐怖」や、貧困、飢餓、教育・保健サービスの欠如といった「欠乏」の脅威から個人を保護し、また、脅威に対処するために、人々から自らのために選択・行動する能力を強化することである。 日本政府は、21世紀を「人間中心の世紀」とすることが重要であると考えており、森総理大臣(当時)の呼びかけに応じて、2001年には、緒方貞子アフガニスタン支援担当総理特別代表(現JICA理事長)とアマルティア・セン・ケンブリッジ大学トリニティカレッジ学長(ノーベル経済学賞受賞者)を共同議長とする「人間の安全保障委員会」が設立されている。この委員会は約2年にわたり議論を重ね、2003年、最終報告書を小泉総理大臣、アナン国連事務総長に提出した。これからはこの報告書に掲げられた提言を、国際社会全体でどのように具体的に実現していくかが、大きな課題である。 日本は、「人間の安全保障」をより確かなものにしていくため、今後ともODAを最大限有効に活用していく。1999年3月に国連に設置された「人間の安全保障基金」に対して、2002年度までに累計約229億円を拠出している。この基金によって、保健・医療分野や貧困分野を中心に2003年9月末時点で92プロジェクト(総額11,535万ドル)を支援している。さらに、開発途上国の現地住民に直接裨益する、きめ細かな援助との高い評価を得ている「草の根無償資金協力」を、人間の安全保障の考えをより強く反映させた「草の根・人間の安全保障無償資金協力」に改称し、より積極的な支援に取り組んでいる。 | | |
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日本の支援により作られた井戸に集まる子供たち:モザンビーク | | |
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難民キャンプの親子:アフガニスタン | ストリートチルドレンの支援施設:ベトナム | |
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(3)国際的な開発目標の達成への貢献 | | |
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