第3章 ODAの展開
1 ● 地域戦略
日本の二国間援助の地域別実績(2003年)は、アジア57.8%、アフリカ8.4%、中南米7.3%、中東6.6%、大洋州0.8%、欧州1.6%となっている。歴史的、地政的、経済的、文化的に密接な関係にあるアジア、とりわけ、近年、経済的相互依存関係が拡大・深化しつつあるASEAN等の東アジア諸国は、日本のODAの重点地域となっている。東アジア諸国には、これまでに日本のODAの半分以上が実施され、経済基盤整備などの協力により高い経済成長を遂げた結果、被援助国から援助国へと移行した国もある。
依然として厳しい貧困をかかえ、国連、G8等の国際社会の場における主要な関心事項であるアフリカの開発問題に関して、日本は、1993年、1998年、2003年にアフリカ開発会議(TICAD)を東京で開催し、アフリカ諸国の自助努力(オーナーシップ)と国際社会のパートナーシップを強調してきた。
有償資金協力による国道1号線橋梁復旧計画:
ベトナム
日本の二国間ODAの地域別配分(2003年)
DAC主要国の二国間ODAの地域別配分(2002年)
注 (1)地域分類は外務省分類による。
(2)東欧・卒業国向けは除く。
(3)四捨五入の関係上、合計が一致しないことがある。 (出典:DAC資料)
■
中国へのODA
中国がより開かれ、安定した社会となることは、アジア太平洋地域全体の平和と繁栄のためにきわめて重要である。日本のODAは、中国が1970年代後半に改革開放政策をとり始めて以来、その政策を支持する一環として行われてきており、中国経済・社会の発展に大きく貢献してきた。しかし、日本において厳しい経済・財政事情が続くなかで、中国の経済力や軍事力の向上といった変化を背景として、日本国内には中国に対するODAについて、厳しい批判があることも事実である。
2001年10月、日本政府は、新たな対中ODAの方針である「対中国経済協力計画」を策定した。この計画に基づき、2001年度から、中国への経済協力の大きな部分を占める円借款について、それまでの多年度供与方式からロングリスト(複数年にわたる円借款候補案件リスト)に基づく単年度供与方式に移行するとともに、支援額を所与のものとせず、「案件積み上げ方式」により実施することとした。さらに、国益の観点に沿って個々の案件を精査するとともに、援助対象分野を環境問題等の地球規模問題への対応、内陸部の民生向上と社会開発などに絞り、適正な規模で国民の支持と理解を得ながら中国へのODAを実施していくこととした。
その結果、たとえば2003年度の円借款は、ピーク時の2000年度と比較して3年間で約55%の減額となり、案件の対象分野も環境分野と人材育成分野にしぼられている。