外交という仕事 地球に生きるわたしたち
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博士号取得の瞬間エジプト外務省の友人と筆者 エジプトに遠えん征せいした、フランスの英えい雄ゆう・ナポレオンは、「このピラミッドの頂上から、4000年の歴史が諸君を見下ろしている」と言い、兵士たちを激げき励れいしたと言われていますが、エジプトに赴ふ任にんする私を乗せた飛行機が首都カイロに近づき、左に大きく旋せん回かいすると、窓の下には、夏の夕日に映えるピラミッドが!  私がエジプトでの生活を語る上で、まず思い出すのがタクシーです。安く乗車できるタクシーは、研修時代、私の生活の「足」でしたが、当時のカイロのタクシーは、メーターがほとんど機能しておらず、慣れるまでは、その料金をめぐってタクシーの運転手と言い争いになることも。 一方、エジプトでは、通常、男性は助手席に乗るので、自然とタクシーの運転手と会話することになります。アラビア語を学ぶだけではなく、エジプト社会について知るいい機会でした。話してみると、やむを得ずタクシーの運転手になった大卒の若者もいて、エジプトがかかえる失業問題の一面をかいま見る思いでした。 大使館勤務で最も緊きん張ちょうした仕事は、アラビア語の通訳です。あるとき、日本の要人が、エジプトの閣かく僚りょうと会談した際、「世界三大美人」の話をしました。「世界三大美人」は必ずしも世界共通ではないので、一いっ瞬しゅんどうしようかと思いましたが、通訳に沈ちん黙もくは許されません。話の内容はそのまま伝えつつ、「日本では、世界には三人の美人がいると言われており、それは日本人の小野小町、中国人の楊よう貴き妃ひ、そして……エジプト人のクレオパトラです!」と通訳したら、その場にいた人たちはみな深くうなずいてくれ、私も「ああ、通じた」と安あん堵どしました。言語だけでなく、歴史的背景や文化も異なる国同士の間に、同じ概がい念ねんがあるわけではないので、そこを理解しつつ、コミュニケーションをとることの大切さを改めて感じました。 アラビア語研修や日本大使館での勤務をふくめたエジプトでの6年間を通じて、エジプト人から日本の歴史・文化・宗教等について聞かれることが多かったのですが、私自身、意外と日本についてきちんと理解していないことに気づきました。とはいえ、今持っている知識を使って、自分なりに説明することが大切だと感じ、自分の考えを伝えるようにしました。また、私は、カイロ大学大学院で法学博士号(国際法)を取りましたが、入学手続きなどで、たくさんのエジプト人に助けてもらい、その親切さ・優しさにふれたことを思い出すと、今でも胸が熱くなります。くわ首都:カイロ主要言語:アラビア語面積:約100万km²(日本の約2.7倍)人口:9,304万人通貨単位:エジプト・ポンドこんにちは=aアッサーラムs-salaamcアライクムalee-kumはまさきけんせいMEMOエジプト・アラブ共和国より 濱くわしくはここを見てね!さん18エジプトを流れるナイル川は世界一長いよ。ほかにはどんな川があるかな?しく調べてみよう 健崎聖詳

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