Q4対人地雷武器貿易条約 (Arms Trade Treaty : ATT) 生物・化学兵器の歴史は古く、学問や産業の進歩とともに人体に有害な化学物質・生物剤に関する研究も発展してきました。ただし、次第にこれらの戦争での使用の悲惨さが国際社会によって強く認識されるようになり、1925年のジュネーブ議定書で戦時の使用が禁止され、続いて生物兵器禁止条約(1975年)、化学兵器禁止条約(1997年)が発効しました。日本は,CWCに基づき,国内でも化学兵器の廃棄を行っています。これまでに福岡県苅田(かんだ)港などで発見された旧日本軍の老朽化した化学兵器の廃棄を実施してきました。また、老朽化化学兵器をOPCWに申告し、同機関による査察も受け入れています。 通常兵器には戦闘機、軍艦、戦艦、戦車、ミサイルといった大型の兵器から、拳銃などの小型武器、地雷・クラスター弾まで広く含まれます。通常兵器の問題は、各国の安全保障に密接に関わるのみならず、人道援助や復興、開発等の様々な分野に影響を与えています。日本は、通常兵器分野での国際的取組において、条約や国連決議作成への積極的な貢献、現場プロジェクトへの支援等を通じ、建設的な役割を果たしています。また、兵器の特質に着目して、人道的観点から特定の通常兵器の使用等を禁止・制限する枠組があります。過度の傷害や無差別の被害を与える兵器を規制する特定通常兵器使用禁止制限条約、地雷やクラスター弾の製造・使用等を禁止する対人地雷禁止条約とクラスター弾に関する条約です。さらに、犯罪や紛争で主な武器として使用され、多くの人命を毀損している小型武器への対応も大きな課題です。2001年に国連で採択された「小型武器非合法取引防止に向けた行動計画」を柱とした規制の枠組みの強化と、被害国における回収、破壊、備蓄管理といった現場プロジェクトの促進の両面から取組が進められています。また,新たな課題である,自律型致死兵器システム(Lethal Autonomous Weapons Systems : LAWS)への対応について,政府専門家会合等を通じ国際的な議論が行われています。 対人地雷禁止条約は2019年に発効20周年を迎えます。日本はこれまで、対人地雷の廃絶に向けて、条約の普遍化に努め、ODA等を通じて米国に次いで世界第二位の規模となる地雷対策支援を実施してきました。除去活動のための機材支援、地雷被害者への支援、地雷対策教育の推進等を迅速に行うため,関係国や国際機関とも連携して対策に取り組んでいます。日本は、武器貿易条約の普遍化を重視しており、アジア太平洋及び主要武器貿易国を含めた未締結の国に対して早期の締結を働きかけるなど、積極的な取り組みを進めています。条約交渉から関与してきた日本は、第4回締約国会議の議長国を務め、東京で締約国会議を開催しました。コロンビアでの対人地雷禁止条約会議で展示された日本製の地雷除去機2018年8月に東京で開催された第4回締約国会議の冒頭,河野外務大臣は,様々な関係者の協働を呼びかけました。生物・化学兵器での取組生物兵器禁止条約(Biological Weapons Convention : BWC) 生物兵器の開発、生産、貯蔵、保有を包括的に禁止する唯一の多国間の法的な枠組みですが、条約遵守の検証に関する規定はなく、条約をいかに強化するかが課題となっています。日本は生物兵器による国際平和への脅威に対処するために、条約未締結国への働きかけを行うとともに、日本の高い知見を各国と共有することで条約の強化に係る取組を積極的に行っています。化学兵器禁止条約(Chemical Weapons Convention : CWC)化学兵器の開発、生産、保有などを包括的に禁止し、保有する化学兵器を全廃することを定めた条約です。申告・査察といった検証制度を持ち、実施機関として化学兵器禁止機関(Organization for the Prohibition of Chemical Weapons : OPCW)が設置されています。近年、シリア、マレーシア、英国等で化学兵器が使用される事案が頻発しており、「化学兵器のない世界」を目指したOPCWの活動の重要性が高まっています。その中で、日本は、積極的にCWCの実施に貢献しています。例えば、日本は、CWCの執行理事国に継続して選ばれているほか、OPCWに対して米国に次ぐ第3位の分担金を拠出している主要締約国の一つです。さらに、シリアの化学兵器廃棄に関しては可能な限りの協力を行ってきており、OPCW及び国連に対し総額15億円を拠出しています。また、未締結国への締結支援や、アジア諸国の国内実施強化のための取組、アジア地域の途上国からの研修生受入れなど実施しています。遺棄化学兵器(Abandoned Chemical Weapons in China : ACW)日本は、CWCに基づき、中国に残された旧日本軍の化学兵器の廃棄処理を推進しています。2010年以降、廃棄処理が行われており、2019年1月現在、発見されているACW約7.1万発のうち約5.2万発が廃棄されています。また、中国各地で発掘・回収作業を実施しています。老朽化化学兵器(Old Chemical Weapons : OCW)生物・化学兵器通常兵器通常兵器での取組各国の軍備の透明性を向上させることで、信頼醸成を図り、過度の軍備の蓄積を防止する取組として、各国の軍事支出を報告する国連軍事支出報告制度(1980年設立)や、兵器の輸出入に関する情報を各国が報告する国連軍備登録制度(日本と当時のECの共同提案により1991年に設立)があります。最近では、こうした信頼醸成に留まらない、通常兵器の輸出入そのものを管理しようという動きがあり、武器貿易条約が作成されました。その他の兵器の軍縮核兵器以外の軍縮にはどのようなものがありますか?
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