世界一周「何でもレポート」

外務省員の声
サムライ外交官 外国人初・世界最古のレスリング参戦報告(続編2:世界に飛翔編)

平成25年12月6日

  • 第4戦,第5戦目:若手ホープのアル=ムディリア選手と戦う

在スーダン大使館書記官 室達康宏

 「なぜ外交官がスーダンでレスリングを?」最近,よく問われる質問であるが,実は,そこには奥深~い理由がある。まず,(1)草の根レスリング交流による親日感情の醸成。そして(2)スーダンだけではなく、人類史にとって貴重な伝統文化であるにもかかわらず知名度が低いスーダンレスリングへ、世間の注目を集め盛り上げること。はたまた,(3)スーダン人レスラーに近代レスリングへの挑戦や2020年東京オリンピックへの関心を促す。さらには,(4)一部で紛争を抱えるスーダンに必要なのは,まさに健全な国民国家意識なのだが,私が日の丸を掲げ,外国人レスラーとしてスーダン人に挑むと,スーダン人は部族の違いを超えて皆例外なく私の対戦相手のレスラーを応援する。オリンピックやワールドカップが同様の例として挙げられるが,こうして人々の間にスーダン人意識が醸成される。なかなか大きなテーマであるが,私の無謀な挑戦が少しでも役に立てば嬉しい限りである。

  • 堀江駐スーダン大使と一緒に

 さて,私のスーダン・レスリング挑戦第4戦目は,8月23日に行われた。今度の対戦相手は,若手のホープとして知られるヌバ族のレスラー,サーレフ・オマル・ボル・ティア・カフィ選手(リングネーム:アル=ムディリア)。4戦目は,これまでの三連敗の経験を踏まえ,戦略を変え,攻めよりも守りを意識し,相手の隙を待つ戦略で挑む。しかしながら,初対戦の相手も緊張しており,ホームで外国人に負けることは絶対に許されないので,うかつには攻めてこない。4分近くの激戦の末,結局,アル=ムディリア選手の片足タックルに倒されてしまった。自分から攻めていないのに結局疲れてしまい,若くて元気な相手に倒されるという一番悔いの残る戦いでもあった。

 第4戦の後、悔しさを胸に休暇に入るのだが,今回も休暇返上で打倒スーダン人レスラーを目指し,滞在先のクアラルンプールや金沢で特訓に明け暮れた。クアラルンプールでは柔道,地元の金沢ではスポーツで有名な星陵高校や総合格闘技道場でレスリングを練習。高校生には勝てるだろうと思っていたが,毎日練習している現役世代は体力と動きが違う。拓殖大学(実は,大学時代は少林寺拳法部主将で, 後輩たちからは強くて怖い先輩として知られていたのだが…)卒業後の不摂生を改めて悔やむことになったが,いい練習ができた。

  • クアラルンプールでの柔道の稽古
  • 金沢の総合格闘技道場にて

 第5戦目は,10月25日,対戦相手は第4戦目と同じアル=ムディリア選手。今回は,4戦目に積極的に攻められなかった反省から,開始と同時に速攻をかけ,リング外への押し出しに成功した。この奇襲と押し出しに場内は大歓声。しかし,リング中央から試合が再開され,再び同じように突進したら,相手にうまく投げられてしまった。まさに柔道でいう「朽木倒し」,数千年の歴史を誇るスーダンレスリングは,実は素晴らしい技術をもっているということを体で学ばされた。

  • ヌバ族レスラーの投げ技(朽木倒し)
  • 試合後に日本国旗を掲げる

 さて,ここにきて私のスーダンレスリング挑戦は,「負け続けても戦い続ける外交官」として,スーダンを超えて大きく注目されるようになった。9月6日,AFPは「はだしの外交官,スーダンで平和のためにレスリング」と題して世界に記事を配信別ウィンドウで開くし,また,10月30日付朝日新聞は,国際面で「がっぷり,レスリング外交」と題して紹介した。さらに,11月11日,九州朝日放送KBCラジオの「武内裕己のThat's on time」へのラジオ生出演依頼を受けるに留まらず,なんと第5戦目に関しては,英BBCの密着取材を受け、その模様は11月18日に同局の「Focus on Africa」や「World News Today with Zainab Badawi」の番組内で紹介別ウィンドウで開くされ、全世界に放映されるまでになった。おかげさまでスーダンレスリングがここまで注目を集めることになったのだが,不甲斐ない結果を残している私に代わり,今後はぜひ日本の強者レスラーにスーダンレスリングに挑戦してもらいたい。もし本格的な「日・スーダンレスリング交流」が実現すれば,注目度もさらに大きく,外交上の効果も計り知れないだろう。

  • 試合後にBBCのインタビューを受ける

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