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国際セミナー「西バルカンの多民族社会におけるコミュニティ構築
~人間の安全保障の視点から~」
(概要と評価)

平成18年3月22日

(写真) 
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 3月22日、外務省は、やまなかあきこ大臣政務官が議長を務め、標記セミナーを東京(三田共用会議所)において開催したところ、概要と評価以下のとおり(プログラム)。本セミナーには、西バルカン各国(アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、マケドニア、セルビア・モンテネグロ)及びコソボ暫定自治政府の少数民族問題・地方自治等に関わる政府関係者及び研究者を招聘するとともに、EU加盟国・加盟候補国、G8諸国や欧州委員会、UNDP、UNHCR、UNMIK(国連コソボ暫定行政ミッション)、南東欧安定協定などの国際機関の関係者(ベルギーはOSCE議長国として出席)並びにJICA、JETROの関係者及び中満一橋大学教授等38カ国・機関約60名が出席した。

1. 概要

(1)全般

(イ)本セミナーは、多民族社会におけるコミュニティ構築の方策を人間の安全保障の視点から討議することを通じて、紛争後も多民族社会であることに起因する多くの困難を抱えている西バルカン地域の民族融和の促進に貢献することを目的とし、2004年に東京で開催した「西バルカン平和定着・経済発展閣僚会合」のフォローアップの一環として開催。

(ロ)山中大臣政務官の冒頭挨拶、グランディッツ南東欧安定協定第1作業部会民主化部長等による地域情勢報告に続き、西バルカンの出席者より、各国・地域における多民族社会のコミュニティ構築に向けた施策を報告。その後、高須人間の安全保障担当大使より、人間の安全保障が西バルカンのコミュニティ構築にどのように適用し得るのかという点について、また、橋本JICA国際協力専門員より、日本政府が同地域において人間の安全保障の観点から進めている支援活動等についての報告の後、「共存から融和へ」及び「復興から持続可能な発展へ」とのテーマの下討議を行った。

(2)セミナーの結果

(イ)西バルカンの参加者からは、多民族のコミュニティ構築における問題点や障害として、信頼の欠如、無関心、貧困、持続的な難民帰還、戦略の欠如等を指摘した上で、問題意識の昂揚努力、市民のエンパワーメント(能力強化)、コミュニティの牽引による開発等の施策を講じているとの指摘があった。中でも、多くの参加者から、それらの問題を克服する上で、教育、住居インフラ整備、医療・衛生、コミュニティ・レベルでのキャパシティ・ビルディングが有用であるとの指摘があった。また、コミュニティ・レベルでの共通の利益を創設する上で、雇用創出の重要性が強調された他、地方警察の強化や多民族で構成された警察の創設を通じた治安維持、移動の自由の重要性が指摘された。

(ロ)日本側からは、人間の安全保障の概念とそれが西バルカンに適用された場合に見えてくる諸課題について説明があった。特に融和促進、法の支配と良い統治の促進、開発機関による本概念の積極的な採用の慫慂、貿易、投資等を通じた持続的発展の実現等の重要性が指摘された。また、JICAより、旧ユーゴ紛争時代に民族間の軋轢が生じた地域における、果物栽培等を通じた住民自立支援やIT機器を使用した多民族合同課外授業といった具体的な取組の事例の紹介があった。

(ハ)「共存から融和へ」の討議においては、コミュニティ構築を効果的に進める上で、地域行政のキャパシティ・ビルディングやメディア、教育等を通じた融和促進等の施策、また法の支配の促進や政治的意志、NGOの役割が重要であるとの指摘があった。またEU加盟国の一部からは、この地域の将来の欧州統合に際して条件を付すなど、融和促進のために政治的影響力を行使すべきとの意見もあった。

(ニ)「復興から持続可能な発展へ」の討議においては、地場産業振興を通じた雇用創出やその振興のためのキャパシティ・ビルディング等の施策が、コミュニティに共通の利益を醸成しコミュニティ構築に資するとの指摘があった。

2. 評価

(1)今次セミナーでは、西バルカンのコミュニティ構築を成功させるためには、引き続き政治的・経済的両側面からの施策が重要であり、そのために国際社会が支援を継続していくことの必要性が確認されたことは、極めて有意義であった。また、コミュニティ・レベルでのキャパシティ・ビルディングの重要性が再三指摘されるなど、人間の安全保障の視点が有用であることが認識されたことは有益であった。

(2)特に、本年は、5月にモンテネグロにおいて独立の是非を問う住民投票が行われる予定であり、また、コソボの将来的地位に関する政治プロセスが国連によって進められている中で、多民族社会におけるコミュニティ構築がいずれの問題においても重要な課題となっていることから、今次セミナーにおいてコミュニティ構築の方策を討議できたことは時宜を得たものであった。

(3)また、我が国が推進する人間の安全保障の概念を具体的事例を踏まえ説明することにより、この地域の関係者にこの概念に対する理解を深める機会を与えると同時に、我が国のグローバルな外交努力に対して多くの参加者より高い評価を得ることができた。

(4)更に、西バルカンは我が国とEUが協力して取り組んでいる地域であるところ、日EU間の政治分野における協力を更に強化することができた。

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