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「中央アジア+日本」対話 第1回東京対話
平成18年3月30日(木曜日) 外務省
議長サマリー

 2006年3月30日に日本外務省の主催、総合研究開発機構(NIRA)の協力により、「中央アジア+日本」知的対話(通称「東京対話」)が東京において開催された。本対話は、「中央アジア+日本」対話の5本柱の一つである知的対話としてトラック2で開催された。東京対話には、中央アジアから4名、日本から17名の有識者、外務省から3名、16名のオブザーバーが参加した。トルクメニスタンの有識者も招聘したが、参加が実現しなかった。

 東京対話の冒頭、塩崎恭久外務副大臣は、日本の対中央アジア政策について、中央アジア諸国が市場経済に基づく自立的且つ安定的な発展を確保するよう日本が協力していくこと、各国独自の文化的・歴史的背景を考慮しながら、民主主義や人権尊重といった基本的価値の定着が図られることが重要であると述べた。また、東京対話が、トラック2として、有識者間で自由闊達かつ突っ込んだ議論を行い、政府間の対話と協力のプロセスに新たな視点と深みを与えることを期待すると述べた。また、八木欧州局審議官は「中央アジア+日本」対話の現状と今後について、本年2月にアスタナで開催された第2回高級実務者会合において地域内協力に関する種々のアイデアが議論されたことを説明し、第2回外相会合に向け、具体的協力内容に係る作業を加速していると述べた。

 その後、「中央アジア地域統合の展望」と「中央アジアと域外国の関係」の2つのテーマを取り上げ、活発な対話を行った。

 「中央アジア地域統合の展望」については、中央アジア諸国が地域的にまとまることによる政治力向上、自立性確保、市場規模の拡大、国際場裡における発言権の確保などの観点から地域協力を推進していくことが望ましいという点で基本的な認識の一致があった。同様に「統合」については、中央アジア各国の事情の違いから、求心力、遠心力の双方が働いているため、その実現には相当の困難を伴うという認識も示された。この関連で、すでに中央アジア諸国の間で様々な地域協力の合意はあるが、これがなかなか実現されていないことも指摘された。したがって、当面、協力可能な分野から、ステップ・バイ・ステップで具体的協力の実績を積み重ねていくことが重要であり、また、必ずしも最初から中央アジア諸国5カ国がすべて参加する形でなくとも、関心を共有する国々が2-3国協力するところから開始することも現実的方途として検討しうるとの認識が示された。東京対話参加者は以下のような具体的協力の可能な分野を提言した。

  1. 中央アジア地域共通の経済・貿易制度の構築(通関手続きの簡素化、将来的な通貨統合等)
  2. インフラ整備(鉄道、道路、通信、空港など)-越境整備のメリット
  3. 物流システムの整備(ソフトの面も含めて)
  4. 水資源と電力(地域内協力が不可欠でありながら、各国の利害対立から協力が進まない問題であり、当面、上流国の発電・給電能力の向上と下流国の洪水対策を進めることが適当。節水技術や水質汚染技術の支援・協力。)
  5. 安全保障面の協力(特に国境管理とテロ・麻薬対策協力、地雷除去)
  6. 国際観光開発

 これらの協力がまず、可能な中央アジア諸国の間で推進されていくことが重要であり、それに日本が支援をしていくという取り組みの整理も必要であることが指摘された。具体的には、物流システムについてはノウハウを持つ日本の商社など企業の協力、インフラ整備への日本のODA協力、経済政策、法整備分野での地域としての共通システム構築への専門家による協力、地雷除去への技術支援、難しいといわれる水資源協力でも二国間の協力の萌芽がみられ、これを支援することなどが提案された。

 また、地域協力推進にあたり、中央アジア諸国5カ国だけを対象とするよりも、アフガニスタンをはじめとする周辺国も視野に入れていくことが提言された。アフガニスタンについては、中央アジア諸国にとってはテロや麻薬の源泉であり、またエネルギーや物流の南へのルートとしての重要性があり、その順調な復興と安定が中央アジア諸国の安定にもつながる。日本はアフガニスタンの復興支援に多大な役割を果たしてきているが、今後「中央アジア+日本」協力にアフガニスタンの関与を得ることは、双方の共通の利益につながるであろうとの意見が出された。

 「中央アジアと域外国との関係」については、中央アジアにおけるここ数年のロシアの存在感の高まりが指摘され、その背景として、9.11後の欧米、特にアメリカとの関係の変遷、ロシアの経済成長、ロシアの外交政策の変化があるとの見方が述べられた。また、中国は、ロシアと比較すると中央アジアとの関係は浅いが、経済面を中心に、新疆ウイグル問題も念頭に、中央アジア諸国との二国間関係を急速に深め、かつ上海協力機構を通じてマルチでの関係も強化しているとの見方が述べられた。他方で、アメリカとの距離感が広がっており、近年の同国の民主化支援の方向性が中央アジア諸国内の政情にあわず、政治的不安定につながったという認識が生まれているという意見も述べられた。

 中央アジア側参加者からは、域外国との関係が、新たなベクトルを持ってきており、従来からのロシア、米国、中国のみならず、ドイツ、インド、日本との間で新たな展開が生まれているとの指摘があった。日本側有識者からは、中央アジアがいずれの国との協力関係を深めていくかは中央アジア自身が判断することではあるが、長期的な観点からは1カ国に対する過度な依存は避けるべきであり、対米関係もアメリカの勧告をすべて拒絶するのではなく、選択的に受け入れ調和的な関係を構築するなど、域外国とバランスのとれた関係を築くことが重要であるとの意見が述べられた。

 この中で域外国のひとつである日本については、領土的野心や歴史的な負債を負わないこと、日本と中央アジアの歴史的経験の相似性、さらにはインフラ整備や人的資源開発を含め、2004年度までに累計約2800億円(約25億米ドル)の支援の実績があること等から、ベストパートナーであるとの意見も中央アジア側有識者から出された。一方、一部の参加者からは、日本が中央アジアに対してどのような関心と意図を持っているのかがはっきりしないという指摘があったが、この点は、本日の塩崎副大臣の基調演説においても明らかにされているように、ユーラシア大陸の中央に位置し、アジアと欧州、中東などへの結節点にあり、エネルギー資源も豊富な中央アジア諸国の安定と繁栄が、日本を含む国際社会にとって重要であるとの認識から、日本はこの地域の自立的・安定的な発展に重大な関心を有しており、そのため、中央アジア各国の国造りに今後とも積極的に協力し、互恵的パートナーシップを深めていこうという意図、また、中央アジア諸国の共通の利益のために地域内協力の推進を支持・支援していく意図を有しているとの意見が述べられた。中央アジア諸国も域外国との関係をマネージしていく中で日本という野心をもたないパートナーの価値を見出しているとの認識も示された。

 中央アジアと日本の協力について、日本は中央アジア各国の具体的な状況や利害をきちんと把握して二国間関係の強化に取り組みつつ、並行して地域協力の可能性を模索していくのが適切であるという意見や、日本単独ではなく国際機関等をも巻き込んだ協力を行うべきであるという意見がだされた。また、経済面では、日本企業による投資、技術移転を希望するとの意見が中央アジア側有識者から出されたが、そのためには中央アジア諸国における経済・貿易政策の安定、投資環境の改善と政治の安定が必要であることが指摘された。特に、外国投資を誘致するには、市場経済化の進展、汚職の撲滅、契約の遵守、流通システムの効率化に中央アジア諸国が一層取り組むことが重要との指摘がなされた。また、日本人は中央アジア地域に親近感を持ち、最近日本からの中央アジア地域への観光ツアーも企画され、関心が高まっていることもあり、このような人的交流、さらには文化交流、教育、メディアなど多面的な協力の推進も重要との指摘がなされた。

 また、「中央アジア+日本」対話の下で、すでに活動している日本と中央アジア各国との二国間経済合同委員会の合同部会を設け、中央アジア諸国が地域として裨益できる協力について具体的に議論する場を設けてはどうかとの提案もあった。また、東京対話において、経済政策の共通のフレームワーク作りについて共同研究すること、中央アジア研究の拠点づくりなども提案された。

 以上、ここに東京対話の成果を今後の「中央アジア+日本」の政府間対話の参考としてもらうことを希望する。また、参加者は、第1回東京対話において、中央アジア諸国と日本の有識者の間で、胸襟を開いた率直な議論、情報交換ができたことを評価し、今後ともトラック2の知的対話である「東京対話」が1年に1回を目処に開催されることを希望した。今後の東京対話では、総論にとどまるのではなく、よりテーマを絞った議論や角度を変えた議論が望ましいこと、テーマによってはそれぞれの分野の実務家の参加を得ることも有意義であることも指摘された。

以上

2006年3月30日
「東京対話」議長
総合研究開発機構 主席研究員
福島 安紀子

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