演説

岡田外務大臣演説

トルコ外務省大使会議における岡田外務大臣スピーチ

平成22年1月4日
於:アンカラ

(写真)

ダーヴトオール外務大臣閣下、
ご列席の大使閣下の皆様、

 日本国外務大臣の岡田克也です。本日は、トルコ共和国の外交を支える大使の皆様にお話しする機会をいただき、大変光栄に思います。ダーヴトオール外務大臣と関係者の皆様に深く感謝申し上げます。

 今年は、エルトゥールル号事件以来の、日トルコ友好120周年に当たり、本日、「トルコにおける日本年」が開幕します。これから1年にわたり、トルコ国内の各地で、日本の新旧の文化を紹介する行事や、両国間の人々の間の様々な交流が繰り広げられます。こうした行事を通じ、トルコの皆様に日本の魅力を知ってもらい、日本に親しんでもらうことで、両国の友好の裾野が広がり、その交流が未来につながっていくものと期待しています。私は、この日本年が、日本とトルコの新たな友好の扉を開くものと確信しており、このあと、オープニング式典に出席することを楽しみにしております。

 ご列席の皆様、

 昨年、日本の政治は大きな変革を遂げました。8月の総選挙において、それまで野党だった民主党が勝利し、鳩山由紀夫総理大臣が率いる新しい政権が成立しました。実は、日本にとって、選挙による政権交代は、第2次世界大戦後60年間で事実上初めての経験です。
 1955年以来、50年以上にわたって続いた自民党政権は、現在の日本の平和と繁栄を実現するために一定の役割を果たしました。しかし、長すぎた権力は改革能力を失い、経済のグローバル化や日本で今急速に進みつつある少子高齢化といった大きな経済社会構造の変化に対応できなくなっていました。そういう中で、日本国民は新しい政治によるリーダーシップに期待し、政権交代を実現させました。今の鳩山政権は、こういった大きな歴史的文脈の中に位置づけられているのです。

 このことは、しかし、日本とトルコのこれまでの友好協力関係を変えるものではありません。むしろ、我々は両国関係をより一層強化したいと考えています。今回、私が日本の外務大臣として8年ぶりにトルコを訪問し、こうして皆さんにご挨拶させていただいているのも、その姿勢の表れです。
 トルコは、欧州、中東、アジアの交叉路に位置して、独自の発展を遂げるとともに、中東を含む周辺地域の平和と安定のために重要な役割を果たしています。例えば、アフガニスタンにおけるISAFへの人的貢献、シリア・イスラエル間の仲介を含む中東和平のための努力などは国際社会でも高く評価されています。
 また、近年急速に成長を遂げるトルコ経済は、大きな潜在力と可能性を有しています。日本とともに、G20のメンバーとして、あるいは国連安保理の理事国として、世界の平和と繁栄に大きな責任と役割を担っています。

 我が国は、日本とトルコがそれぞれ果たし得る役割を認識しながら、両国の協力関係を新たな分野や段階へと発展させていくため、政策対話を強化していくことが、重要であると考えています。このため私は、先ほど行ったギュル大統領への表敬、そして、ダーヴトオール外務大臣との会談において、お互いの信頼関係を確認し、今後あるべき両国間の協力関係について、幅広く意見交換を行ったところです。

 ご列席の皆様

 先ほど私は、鳩山政権は歴史的な文脈にある政権であると述べました。本日は、その鳩山政権の外務大臣として、当面の日本外交の課題と基本的な考え方についてお話しし、その上で、特にトルコとの関係が深い中東地域における諸問題について言及したいと思います。

 日本外交の課題の第一は、日米同盟の深化です。
 日本の外交の基軸が日米同盟であることは、政権交代によっても変わりません。日米同盟は、単なる二国間の関係にとどまらず、アジア太平洋地域、そして、世界の「公共財」として、その平和と繁栄に、大きく寄与しています。また、日米同盟は、政治や安全保障だけではなく、経済、社会、文化など大きな広がりを持つものです。
 私は、60年にわたって、極めて大きな役割を果たしてきたこの日米同盟を、更に30年、50年持続可能なものに深めていくことが重要であると考えています。日米間ではいま、在日米軍基地の在り方をめぐって厳しいやり取りが行われていますが、それもこうした前提に立ったものです。

 日本外交の課題の第二は、東アジア共同体創設を視野に入れたアジア外交の推進です。
 我が国にとって、近接するアジア各国との関係が重要であることは言うまでもありません。特に、21世紀は「アジアの時代」と言われています。アジアには、中国やインドをはじめ、今後大きく発展する可能性を持った若い国がいくつもあります。そのアジアの中に日本が位置していることは、非常に幸運なことであり、これを最大限いかしていくべきであると考えています。東アジア共同体構想を長期的なビジョンとして掲げながら、開かれた地域協力の考えを原則として、貿易・投資、環境・エネルギー、開発、防災、保健・衛生、教育、人的交流などの分野において、積極的に協力を推進していきたいと考えています。

 日本外交の課題の第三は、グローバルな課題に対するリーダーシップです。
 日本は、気候変動や核軍縮・不拡散など各国が共通して抱える地球規模の課題について、より積極的にリーダーシップを持って取り組むべきであると考えています。

 気候変動問題では、鳩山政権は前政権の方針を大きく転換し、日本の温室効果ガス排出削減目標として、すべての主要国による公平かつ実効性ある法的枠組みを前提に、2020年までに1990年比25%削減という高い目標を掲げました。また、2012年末までに官民合わせて約150億ドルの途上国支援を行うことを含む「鳩山イニシアティブ」を打ち出し、COP15での合意成立に向けて国際交渉をリードしてきました。残念ながら、結論は11月のCOP16に持ち越されましたが、人類共通の課題である気候変動問題に引き続きリーダーシップを発揮していきます。

 核軍縮・核不拡散については、我が国はオバマ大統領が打ち出した「核兵器のない世界」という提案を強く支持しています。まずは、5月のNPT運用検討会議の成功に向けて全力を尽くすとともに、「核兵器のない世界」を実現するために、現在あるいは将来の政策として、具体的に何をすべきかを世界の国々が真剣に議論し、行動すべきであると考えています。

 ご列席の皆様、

 中東地域の平和と安定は、テロを封じ込め、大量破壊兵器の拡散を防止する上で、極めて重要です。この地域においてトルコが果たしてきた役割を高く評価するとともに、日本としても、更なる貢献を行いたいと考えています。

 アフガニスタンの安定と復興に向けた国際努力は、現在重要な局面に差しかかっています。日本は昨年11月、新たな対アフガニスタン支援策を決定しました。これに基づき、アフガニスタン自身の治安能力の向上、元タリバーン末端兵士の再統合、アフガニスタンの持続的・自立的発展を柱とし、2009年から概ね5年間で、最大50億ドル程度までの規模の支援を行う方針です。

 イランの核問題をめぐる問題は強く懸念される状況です。国際的な核不拡散体制を損なうことなく、同問題の平和的・外交的解決を目指さなくてはなりません。また、イランには、地域の大国として責任ある行動を促していくべきです。日本は、イランとの独自の関係に基づく働きかけを継続していきます。

 イラクに安定した政治的基盤ができることは、中東地域の安定の観点から極めて重要です。イラクが今後、選挙や米軍の撤収を経て、より統合した社会に向かうことを期待しています。日本は、円借款事業や技術協力の実施や、経済・ビジネス関係の強化を通じ、イラクの復興を支援していきます。

 中東和平問題については、現在の行き詰まりを懸念しています。当事者の交渉再開に向けた努力が倍加されなければなりません。日本も、当事者間の信頼醸成、二国家解決を後押しするためのパレスチナ支援を引き続き行っていきます。

ご列席の皆様、

 日本とトルコは、それぞれ置かれた国際的環境は異なるかもしれません。しかし、世界経済の回復と成長、中東地域の平和と発展、気候変動や核軍縮・核不拡散といったグローバルな課題への対応など、世界と地域の中で日本とトルコの果たす役割、重要性はますます高まっています。長く友好関係を育んできた日本とトルコ両国がこういった国際的、地域的課題に対して協調して取り組んでいくことは、二国間のみならず、世界と地域の平和と繁栄をもたらします。国連安保理のメンバーとして、そしてG20の構成国として、人類の未来に対し大きな責任を負う我々日本とトルコが今後さらに緊密に協力していくことが何よりも求められていると確信しています。外交に携わる者としてともに努力していきましょう。
 ご清聴ありがとうございました。

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