演説

伊藤外務副大臣演説

「中央アジア+日本」対話 第3回東京対話 伊藤副大臣基調スピーチ

平成21年2月20日
於:外務省国際会議室

(写真)

 中央アジア5ヵ国及び日本の有識者の参加を得て、環境問題をテーマに開催された「中央アジア+日本」第3回東京対話において、地元宮城での取り組みも紹介しつつ、基調スピーチを行いました。

1.はじめに

 第3回東京対話の開催にあたり、外務省を代表して、はるばる訪日された中央アジア各国からの参加者の方々を心から歓迎致します。また、ご多忙な中、出席を快諾いただいた日本側参加者の皆様に深く感謝致します。

 中央アジアといえば、歴史的に東西文明の交流を支えたシルクロードの中心地として有名ですが、私は、この地域自体、古来より独自の文化を創り出し、日本を含めた世界中の文化に大変大きな影響を与えた地域である点を強調したいと思います。また、中央アジア地域は、エネルギー・鉱物資源にも恵まれ、アジアと欧州、ロシアと中東を結ぶ十字路として地政学上の要衝にあることから、現代世界の安定と繁栄に大変重要な地域であることは皆様もご存じのとおりです。

 このような中央アジア諸国が持続的に発展していくためには、国境を越える問題に共同で対処するための地域内協力を進めることが有意義ですが、日本はその「触媒」として、中央アジアとの地域協力を促進するために、2004年に「中央アジア+日本」対話を立ち上げ、2006年には具体的な協力の指針を定めた「行動計画」を採択しました。

 本日の東京対話は、この「行動計画」に明記された協力分野の1つ「知的対話」の一環として始まったもので、有識者による自由闊達な議論を通じて政府間対話・協力に反映できる提言を生み出すこと、中央アジアと日本との知的交流の活発化を目的として行われてきました。
 東京対話は今年で3回目の開催になりますが、中央アジアにおける水資源と電力の調整問題をテーマとした前回の第2回東京対話では、日本の技術支援に関する提言が出されたことを踏まえ、昨年2008年には中央アジアへの水専門家派遣調査が実現し、近々に報告書がまとめられ、中央アジアの関係機関に提供される予定です。

2.第3回東京対話:テーマ「環境」

 本日の第3回東京対話でとりあげる環境問題は、21世紀を迎えた人類の持続的発展のために、国際社会が一丸となって取り組まねばならない問題です。

 日本は1950年代半ば~1970年代の高度経済成長を達成しましたが、同時に開発の負の側面としての環境破壊という問題に直面しなければなりませんでした。しかし、環境問題が地球規模の課題となりつつある現在においては、地球上全ての国が、環境保護に取り組みつつ、自国の経済を発展させる必要に迫られています。このような時代の中で、環境保護と両立させうる経済成長を達成するためには、各国が抱える問題と知見を共有しあうことが何よりも重要になってくると思います。そういった意味でも、今回、この東京対話で、日本と中央アジア各国が、環境問題に関する自らの知見を分かちあうことは、誠に重要な意義を有すると思います。

 日本の経験として、ここで1つ指摘したいのは、環境は一度壊してしまったらその回復に費やす時間とエネルギーは膨大なものであり、その予防が大切であること、そのためには国民1人1人の生活スタイルの改善、行政や企業、市民という全ての地域社会の構成員が協力して環境問題に取り組むことが重要であるということです。
 私の地元の宮城県には城下町として有名な仙台市と日本三景の1つである松島がありますが、そこでは自治体、企業、研究機関、市民やNGOが連携して環境保護活動に取り組んでいます。2006年に「アジア協力対話」の枠組みで第3回環境教育推進対話を行った際には、私自身、これらの町で行われている生ゴミのリサイクル活動や環境教育の授業、海の浄化運動等の取り組みを紹介させていただきました。

3.第1セッション「土壌を巡る中央アジアの環境協力」

 さて、第1セッションでは、土壌問題を取り上げます。中央アジア諸国は海洋から遠く離れた場所に位置し、降水量は極めて少なく、土壌劣化や砂漠化を防ぐことが地域共通の課題となっています。

 また、これら諸国では、かつての旧ソ連時代の環境負荷の大きい経済・社会体制がもたらした土壌汚染の問題も生じています。この点に関し、セッションの中では我が国による技術協力として実施したカザフスタンのヌラ河水銀汚染モニタリングプロジェクトが紹介される予定だと伺っています。日本でも1930年代から1970年代にかけ、化学工場から排出された水銀を含む工場排水による深刻な公害被害である水俣病が発生し、多くの死者を出した苦い経験がありますが、このモニタリングプロジェクトは過去に日本が痛みを伴って得た教訓がうまく活用された一例とも言えるでしょう。

 また、日本では過去の化学肥料や化学農薬の過剰使用に対する反省から、近年では伝統的に肥料として使われてきた堆肥や生ゴミ等の有機物から有害菌を除き、より栄養分の高い肥料として再利用する有機農業が盛んになりつつあります。これは400年以上前の日本の伝統的な農法がもととなっていますが、このような伝統的な循環型社会モデルが、現在、日本では注目を浴びており、宮城県でも、生ゴミや畜産廃棄物、動植物性残さから製造した堆肥の販売、バイオマス・エネルギーの活用、有機農業の促進、リサイクル技術の開発や再生資源利用製品の販売等、循環型社会形成のために様々な措置が執られています。

 今後、資源の枯渇と自然環境の破壊が大きな問題となってくる21世紀において、あらゆる資源や廃棄物を有効利用する循環型社会は、持続可能な社会の発展モデルの1つとなるのではないでしょうか。私は、こうした循環型社会の中で農業と工業が共生し融合した社会システムを作るべき時期が到来すると確信しております。

 中央アジア地域はかって遊牧民やオアシス商人が活躍した地域だと承知しております。特に、当時の自然条件に基づいた伝統的な牧畜業とこれに関連する産業システムが、現在の中央アジアにおいて、どのような形で残り、今後の社会の発展にどう関わっていこうとしているのか、大変興味深いところです。

4.第2セッション「気候変動が中央アジアの環境に与える影響と対策」

 第2セッションで取り上げる気候変動問題ですが、人類全体が緊急に対応することが求められている課題であり、中央アジアにおいても、温暖化による氷河縮小及び水資源の減少等が懸念されています。

 気候変動問題の解決には、すべての国がその責任と能力に応じた行動をとることが不可欠です。京都議定書の第一約束期間終了後の次期枠組は、すべての国が責任ある形で参加する公平かつ実効的なものでなければなりません。

 我が国が議長を務めた昨年の北海道洞爺湖サミットにおいて、G8諸国は2005年までに世界全体の排出量を少なくとも半減させるという目標を国連気候変動枠組条約の締約国と共有することを目指すことに合意しました。中央アジア諸国の皆様にも、この目標を共有していただきたいと考えております。

 この目標達成のために、すべての国が責任ある形で参加する枠組みの構築に向けて、我が国は2008年1月に「クールアース推進構想」を打ち出しました。「クールアース推進構想」の中で排出削減と経済成長を両立させ、気候の安定化に貢献しようとする途上国を支援するために、5年間で100億ドル規模の資金を活用した「クールアース・パートナーシップ」を途上国との間で構築する旨を表明しました。今後、こうした枠組みを通じて、地球温暖化防止に向けた日本と中央アジアとの協力が強化され、現在中央アジア各国が直面している気候変動問題の解決にも繋がっていくことを期待します。

5.結び

 今回の東京対話では、日本による協力の枠組み及び実績につきいくつか紹介させていただきますが、これら既存の取り組みについては、専門家である皆様の知見によって新たな視点を加えて頂ければと思います。また、日本と中央アジア諸国でどのような協力が必要であり、また可能であるかにつき、率直に議論していただき、その中から、今後の協力の一層の深化に繋がるような有益な提言が生み出されることを期待します。
 更に、中央アジアと日本という互いに異なる文化に属する有識者の方々による忌憚のない意見交換が、本来この地域が有する豊かな歴史的・文化的潜在力に立脚した、新たな発展モデルを生み出す一つのきっかけとなることを祈念いたしまして、私の挨拶とさせていただきます。ご静聴ありがとうございました。

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