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演説
荒木副大臣演説

第4回日本・シンガポール・シンポジウム
荒木副大臣基調講演

平成13年1月8日
於:シンガポール

ヨー・チョートン運輸情報通信大臣閣下、
リム・チンベン会長、
大河原理事長、
トミー・コー・シンガポール政策研究所所長、
ご列席の皆様、

 本日、第4回日本・シンガポール・シンポジウムの開催にあたり基調講演を行う機会を頂き、誠に光栄に存じます。日本・シンガポール・シンポジウムは、これまで3回の会合を通じて、政治・経済・社会問題など多岐の分野にわたり両国の有識者が活発な議論を重ねられ、日・シンガポール関係の一層の発展に貢献されていると伺っております。改めまして、シンガポール政策研究所及び国際交流推進協会を始め関係各位のご尽力に感謝申し上げます。

 さて、私たちは、本日このように、新しい世紀の始まりにあたり、地域の今後の安定と発展のために日本とシンガポールとでいかなる協力が可能であるかについて議論する機会を得ました。振り返ってみれば、20世紀最後の10年間、国際社会は、冷戦構造の崩壊に始まる新たな国際秩序の模索、グローバリゼーションの急速な進展に伴う「光と陰」の顕在化など、まさに激動の時代を経験しました。翻って我々両国の位置する東アジアもまた、新しい世紀を目前にやはり様々な挑戦に直面してきました。
 最大の挑戦は言うまでもなく、97年に始まった通貨・経済危機でした。現在、マクロ指標から見る限り各国経済は着実に回復しています。一方で、危機の再発を防止すると共に持続的経済成長を確固たるものとしていくためには各国における経済構造改革にねばり強く取り組んでいく必要があり、、また、危機を通じてその対処の必要性が認識された社会的弱者支援にも引き続き取り組んでいかなければなりません。
 安全保障環境については、まず北東アジアでは、朝鮮半島の南北分断といういわば冷戦構造の残滓が存在しております。朝鮮半島では昨年は歴史的な南北首脳会談の開催を始めとする前向きな動きが見られましたが、このような動きをさらに確実なものとしていかねばなりません。また、東南アジアでは、地域全体の安定にとって死活的重要性を持つインドネシアが、経済危機による経済的打撃と政治体制の崩壊を経験しました。同国はあらゆる分野にわたる改革努力を続けていますが、地方の分離独立運動や宗教対立など様々な困難を抱えており、情勢の安定化が望まれます。さらに、中国と台湾の関係や南シナ海における領有権問題など、東アジア地域の安定を確保する上で注視していくべき要素は他にも存在しております。
 一方、肯定的な動きとして、経済危機を契機として域内諸国の相互依存関係が強く認識され、地域協力強化の気運が高まったことも指摘したいと思います。97年に開催されたASEAN+3(日中韓)首脳会議によって生まれたASEAN+3の枠組みは、99年のマニラでの首脳会議において経済、文化、政治・安全保障など幅広い分野での地域協力推進に向けた決意を謳った「東アジアにおける協力に関する共同声明」が採択され、また外相会議、蔵相会議、経済閣僚会議も開催されるなど、広がりと深みを見せつつ発展してきております。また、具体的な協力としても、通貨・金融分野での協力として、いわゆるチェンマイ・イニシアティヴに基づいて今後二国間でのスワップ取極の締結作業が行われていく予定であり、このASEAN+3の枠組みは今後の東アジアの発展の基盤としてますます重要となっていくものと思われます。その一方で、例えばASEAN諸国間での経済格差が大きな問題として存在するなど、今後、東アジアが共同体としてさらに発展していくためには、足元を着実に固めていくことが必要であるのも事実であります。

 では、このような状況の下、21世紀の東アジアの安定と繁栄のため、日本としていかに取り組んでいくか、また、日本とシンガポールとが協力していかに取り組んで行くべきであるかについて、安定の確保、繁栄のための枠組みづくり、地域協力の促進のそれぞれの側面から述べたいと思います。

 まず、地域の安定的な安全保障環境の確保のためには、この地域における米国のプレゼンスが引き続き重要であるとの認識の下、米国を始めとする各国との二国間関係を一層強固にしていくとともに、これを補完するものとして、ASEAN地域フォーラム(ARF)を始めとする多国間の安全保障対話を通じた信頼醸成に努めていくことが重要です。この点については、日本とシンガポールはまさに基本的考えを一にするものと承知しております。ARFにおいては、一昨年から昨年にかけて、日本とシンガポールは信頼醸成措置に関する作業グループ会合の共同議長を務めました。我が国は今後もシンガポールとも協力しつつ、このような取組を通じて、地域の安全保障環境を着実に向上させていく考えです。

 次に、通貨・経済危機の教訓を踏まえて、東アジアの繁栄のための枠組みづくりを進めていかなければなりません。ASEANは、ASEAN自由貿易地域(AFTA)の早期実現による域内経済の活性化を目指しています。我が国としてもこのようなASEAN統合の一層の進展は東アジア全体における貿易・投資の促進につながるものと考えており、ASEANの統合努力を様々な側面から支援していく考えであります。ASEANの域内格差の問題に関する取組についても、メコン河流域開発への支援、日・ASEAN総合交流基金の活用等を通じて積極的に協力していく考えであります。
 日本とシンガポールとは、経済先進国として東アジアの経済発展を牽引する重要な役割を担っております。この点、先に首脳間で締結交渉開始が合意された両国間の新時代経済連携協定(EPA)は、東アジア経済の活性化のための基盤を提供するものとして、重要な意義を有することとなりましょう。この協定でカバーすることが想定される二国間の幅広い分野での貿易や投資の自由化や金融、電子商取引、人材育成等の分野での市場の連携により両国の経済の連携が一層深まれば、その経済効果は両国のみならず地域の他の国々にも波及します。また、この協定は、我が国から見ればASEANとの関係の強化、シンガポールから見れば北東アジアとの関係強化の基盤となることも期待されます。
 さらに私は、東アジアの一層の発展のためのIT分野の重要性を強調したいと存じます。90年代の米国における景気拡大の例をひもとくまでもないでしょうが、今日、いわゆるIT革命は、生産性の向上や雇用の創造を通じて経済成長の原動力となっております。他方、いわゆるデジタル・ディバイドの問題は経済格差の深刻化をもたらしかねず、IT革命への対処如何が21世紀における経済発展を左右する鍵であるといっても過言ではないでしょう。我が国でも、森総理のイニシアティブにより「IT立国」に向けた取組が進められており、昨年11月には、5年以内に世界最先端のIT国家となるとの目標の下、超高速インターネット網の整備などを内容とした「IT基本戦略」がとりまとめられました。国際社会全体の発展のためのITの活用の観点からは、昨年の九州・沖縄サミットにおいて、我が国は議長国としてITを中心議題の一つとして取り上げ、「グローバルな情報社会に関する沖縄憲章」を採択して、国際的な情報・知識格差の解消を呼び掛けました。また、これに先だって、今後5年間で150億ドル程度を目途とするデジタル・ディバイド解消のための包括的協力策を表明しました。
 東アジアでも、経済危機からの回復の足取りを確実なものとするため、ITをさらなる経済発展の原動力としていかなければなりません。我が国は包括的協力策をASEANを中心としたアジア諸国に重点的に活用する考えであり、そのための政策対話ミッションをASEAN諸国に派遣しはじめています。また、今年、IT分野での協力のための「東アジア産官学合同会議」を開催する予定です。シンガポールは、この分野では我が国以上に先進的な取組を行っており、また、ゴー・チョクトン首相によるe-ASEAN構想の提唱など地域のIT革命にも先導的な役割を担っておられます。我が国は、デジタル・ディバイド解消を始め東アジア地域のIT革命推進にあたってシンガポールとの協力は極めて重要であると認識しており、近くシンガポールに派遣する政策対話ミッションの機会などを通じて、両国間の具体的協力の方途を探っていきたいと考えております。

 地域協力の促進については、やはり、ASEAN+3の枠組みとして芽生えた共同体意識をいかに育てていくかが重要であると考えます。先の当地でのASEAN+3首脳会合において、森総理は、東アジア協力推進のための原則として、(1)ASEAN+3におけるパートナーシップの構築、(2)グローバルなシステムを補完し強化する開かれた地域協力の枠組みとしてのASEAN+3の強化、(3)将来の方向性として経済のみならず政治・安全保障も含む包括的な対話と協力、という三原則を提唱しました。例えば、パートナーシップの構築に関しては、我が国は各国と協力して地域の第三国を支援する「日・東アジア・パートナーシップ・イニシアティヴ」を提唱しておりますが、このようなパートナーシップを通じて東アジアの共同体意識が一層高まることが期待されます。日本とシンガポールはすでに「21世紀のための日・シンガポール・パートナーシップ・プログラム(JSPP21)」の下、ASEAN新規加盟国を始めとする途上国への支援を実施してきております。私はこのJSPP21は他の三角協力のモデルとなり得るすばらしい成功例であると考えており、このプログラムにおける両国のこれまでの経験を各国と共有し、東アジアにおける協力関係が一層拡がることを期待しております。
 さて、ここまで、東アジアの安定と発展のための日本とシンガポールの役割について話して参りました。本日は、これをさらに一歩進めて、よりグローバルな視点からの両国間の協力の意義について触れさせていただきたいと存じます。
 申し上げてきたとおり、日本とシンガポールはそれぞれ有する経済力を背景に地域の安定と繁栄のため極めて重要な役割を担ってきておりますが、世界全体の平和と発展のためにアジアが与える影響の大きさから考えれば、両国の協力の可能性はなにもこの地域にとどまるものではないと考えます。私は、新しい世紀を迎えた今、我々両国が、共有する共通の価値観やこれまで培ってきた強固で成熟した関係を世界全体の安定や繁栄に関わる問題への取組に活かしていく、いわばグローバルなレベルでのパートナーシップの構築を目指すことを提案したいと思います。これは、森総理が先の日・ASEAN首脳会議で強調した、日・ASEAN関係を両者が共同で国際的な秩序の構築に関わる「ニュー・パートナーシップ」として強化していくことの重要性と軌を一にするものであります。
 例えば、両国はWTOを中心とする多角的な自由貿易体制強化に強くコミットしております。両国間の新時代経済連携協定についても、まさに多角的貿易体制を補完しつつ、世界的な貿易自由化を進めていくための一つの方策として、その重要性を意義づけております。多角的貿易体制を強化し、もって21世紀における世界経済の発展を確保するためには、WTOの新ラウンドの早期立ち上げを必ずや実現しなければなりません。日本とシンガポールとは、今年中の新ラウンド立ち上げという目標に向け、様々な局面において大いに協力していけるのではないかと思います。
 また、シンガポールは今年から国連安保理の非常任理事国となり、安保理メンバーとしての立場から国際社会全体の平和と安定に関わる問題に一層積極的に関与されることとなりました。ご承知の通り、我が国は、国連が現在の国際社会が直面する諸課題に対応するためには安保理を含む国連の機能強化が必要であるとの認識の下、国連改革に積極的に取り組んでおります。そして安保理については、その改革が実現された際には、常任理事国として一層の責任を果たしたい旨明らかにしてきております。また、安保理非常任理事国として身を置いていた時も、安保理から離れている現在でも、軍備管理・軍縮におけるイニシアティブの発揮、紛争予防への取組、国連平和維持活動への参加などを通じて、国際社会の平和と安定のため積極的な貢献を行っております。シンガポールが安保理理事国の任期を務める今後2年間、我が国としてはこれらあらゆる分野において、シンガポールと協力して一層充実した取組を行っていきたいと願っております。また、安保理改革を含めた国連改革の進展についても、安保理理事国としてシンガポールが重要な役割を果たすことを期待しております。
 さらに、グローバリゼーションの急速な進展に伴い国際社会全体でも貧富の差の拡大が深刻となりつつあり、途上国の経済的発展を促し、さらにこれにより紛争など不安定化の芽を摘むことが重要な課題となっております。経済先進国たる日・シンガポール両国としては、途上国の開発援助に今後ますます主導的な役割を担うことが求められていきましょう。幸い、我々両国は、先に申し上げたとおり、JSPP21という貴重な基盤を有しております。両国はすでにこの枠組みを活用して、アフリカ諸国の開発支援などを行っておりますが、今後はこの協力関係を基に、一層積極的にグローバルな諸課題に手を携えて取り組んでいくことができるものと確信しております。

 以上駆け足ではございましたが、21世紀の幕開けにあたり、今後の日本とシンガポールとの協力関係のあり方について述べさせていただきました。いかなる分野において協力を行っていくにせよ、その基礎となるのは、二国間の揺るぎない友好関係であり、信頼関係であります。これまでの先人の努力により、日本とシンガポールとは、政治、経済、文化などのあらゆる側面において極めて緊密な関係を築いてきております。この関係はすでに相当成熟したものとなっておりますが、その深みを一層増すためには、本シンポジウムのような知的対話がますます重要性を持つものと考えます。
 両国各界における第一人者の方々の参加を得ることができました今回のシンポジウムにおいても、多岐にわたる興味深いアジェンダの下、活発な議論が行われるものと期待しております。そして、このような着実な取組が、将来の両国間の具体的な協力として結実し、東アジア、さらには国際社会全体の一層の発展に寄与することを確信しております。

 ご静聴ありがとうございました。



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