アメリカ合衆国

2019年度予算教書

平成30年2月28日

 2月12日(米国時間),トランプ大統領は,米国3大教書(注1)の一つである2019年度(2018年10月~2019年9月)の予算教書(注2)を議会に提出した。概要は以下のとおり。

要旨

  • 2019年度予算:歳入3.4兆ドル,歳出4.4兆ドル,1.0兆ドルの財政赤字。
    (注)2017年度(2016年10月~2017年9月)実績:歳入3.3兆ドル,歳出4.0兆ドル,0.7兆ドルの財政赤字。(なお,現行の2018年度については実績等が示されていない。)
  • 本教書の提言により,10年間(2019~2028年度)累積で財政収支が3.6兆ドル改善する見込み。
    (注)本教書の提言を反映しない現行制度(税制改革法を含む)と比較した場合の収支改善(OMB(米国行政予算管理局)による試算)。
  • 実質成長率は,2018年3.0%,2019年3.2%,その後2028年にかけて2.8%まで逓減する見込み。財政収支は経済成長によっても10年間で0.8兆ドル改善する見込み。
    ⇒財政赤字は2028年度には0.4兆ドルに縮小する見込み。
  • 本予算教書の柱は無駄な歳出の停止,経済成長と機会の拡大,強さによる平和の保持,「壁」の建設,移民法の施行,インフラ再建,米国労働者家庭の支援,高い薬価との戦いなど(冒頭のトランプ大統領からのメッセージ)
  • 米国内のインフラ投資については,地方政府による投資及び民間投資を喚起するため,2,000億ドルの予算を確保。その他,連邦政府による認可手続の簡素化,地方政府への権限委譲等も提案。
  • 各省庁の予算は,国防省,国土安全保障省,商務省を除き,ほぼ全ての省庁について2017年度実績比減額要求となっている。
  • 予算教書本体には,9日に成立した「2018年超党派予算法」による裁量的経費(国防費及び非国防費)の上限額引上げは反映されていないが,追加的に出された「付録」において,上限額引上げ分に係る追加歳出項目が提案されている。
(注1)米国3大教書
種類 内容
一般教書 上下両院に外交や内政情勢を報告し,今後1年間の施政方針を表明
予算教書 来年度予算案の編成方針を大統領が議会に提示
大統領経済報告 当面の経済情勢に関する判断を示す(CEA(大統領経済諮問委員会)が作成)

(注2)予算教書
米国では,議会に予算編成権があり,また,行政府には法案提出権がないため,議会が歳入,歳出に関する予算関連法案を独自に作成して審議する。したがって,通常予算教書は議会に対する大統領の提案にとどまり,何ら拘束性を有していない。

1 2019年度予算案(歳入)

  • (画像1)2019年度予算案(歳入)の円グラフ
  • (画像2)参考:2017年度予算案(歳入)の円グラフ

(注:現行の2018年度予算のデータは示されていない。)

2 2019年度予算案(歳出)

  • (画像3)2019年度予算案(歳出)の円グラフ
  • (画像4)参考:2017年度予算案(歳出)の円グラフ

(注:現行の2018年度予算のデータは示されていない。)

3 財政見通し・経済見通し

(1)財政収支の見通しは以下のとおり。

  • (画像5)米国の財政赤字の見通し(前年度予算教書との比較)の折れ線グラフ

(2)経済成長率の見通しは以下のとおり。

  • (画像6)米国の経済成長率の見通しの折れ線グラフ

4 財政赤字の推移

  • (画像7)リーマンショック以降の米国の財政赤字の推移のグラフ

5 裁量的経費の上限額の推移

  • (画像8)2011年予算管理法による裁量的経費の上限額の推移のグラフ

6 トランプ大統領のメッセージ(予算教書冒頭)

 本予算教書は,以下の改革を柱としている。

Ending Wasteful Spending

  • 現在の財政の道筋は持続可能ではない。本予算教書は,無駄な支出を止め,国の債務を減らし,「国を守る」という最も重要な点にフォーカスするために必要で困難な選択をしている。

Expanding Economic Growth and Opportunity

  • 米国の経済を3%の持続的な成長軌道にのせる。

Preserving Peace Through Strength

  • 連邦政府の責務を全うするため,軍を再建し近代化する。

Building the Wall, Dismantling Transnational Criminal Organizations, and Enforcing Our Immigration Laws

  • 国境を十分に守るという私の政権の真剣かつ進行中のコミットメントを反映する。南西国境の「壁」及び法執行のための追加的なリソースを提供する。

Rebuilding Our Infrastructure

  • 1兆ドルのインフラ投資を産み出すという米国インフラの新しいビジョンを反映する。

Supporting American Working Families

  • 税制改革法による中間層への減税に加え,有給の家族休暇や職業訓練等の労働者家庭への投資の重要性を反映する。

Protecting Our Veterans

  • 退役軍人が必要なときに必要な医療処置を受け,治療に関して選択肢を持てるようにする。退役軍人が訓練を受け,再就職及び給料の良い仕事を見つけることを支援する。

Combatting Opioid Addiction

  • オピオイドや薬物中毒からコミュニティを守るという真面目で揺るぎないコミットメントを反映する。

Fighting High Medical Drug Prices

  • 不条理なインセンティブ構造に対処し,製薬会社をより競争にさらすことにより,高額な薬価問題に対処し,医薬品へのアクセスを向上させる。

Moving from Welfare to Work

  • 経済や労働市場の回復にもかかわらず,福祉プログラムへの加入は全国で高いままである。何百万もの米国民は労働に見返りを与えない福祉システムへの依存という痛ましい状況にある。前政権で拡大したこれらのプログラムは今改革しなければならない。

More Pathways to Affordable Education and Well-Paying Jobs

  • 米国民が,手頃かつ給料の良い雇用に直結する教育にアクセスできる機会を拡大する施策を講じる。

Promoting School Choice

  • 不利な環境にある若者の親が,最良の学校を選択できるようにする。

7 インフラ・イニシアティブ

 全てのインフラが州・地方政府に所有されていることが,アメリカのインフラの再建の課題を複雑にしており,州・地方政府が連邦政府から資金の提供を受けることを期待してプロジェクトを遅らせるという結果になっている。
 その上で,政権のインフラ・イニシアティブは,インフラにおける投資,所有権,責任の不均衡に取り組み,直接的な連邦資金とインセンティブを与えられた非連邦政府資金の組み合わせを通じて,インフラ全体で(最低でも)1兆ドル(注)を生み出す。
 本インフラ・イニシアティブに対して,本予算教書では,10年間で2,000億ドル(2019年度は446億ドルを計上)を要求。

(注)予算教書に付随して公表された「Fact Sheet」及び同日(2月12日)公表された「インフラ再建に向けた法制の概要」では,官民合わせて1.5兆ドル,同日開催されたインフラ・イニシアティブに係る州・地方政府との会合におけるトランプ大統領の発言では,インフラ全体で1.5兆ドル~1.7兆ドルとされている。

インセンティブのための補助金(Grant)【1,000億ドル】

 新たな収入を生み,メンテナンスを重視し,調達活動を近代化し,社会的,経済的なリターンを生むような革新的なアプローチに対して,そのプロジェクトの拠出者に競争的補助金(competitive grant)を与えることで,州・地方・民間のインフラ投資の増加を推奨する。

農村向けフォーミュラ資金【500億ドル】

 ブロードバンドインターネットサービスを含む農村でのインフラ投資の必要性に対処する。連邦資金は,州が作成する農村部インフラ計画での目標の達成度合いに基づく補助金コンペ(bonus competition)に加え,通常の分配(formula distribution)を通じて,州に提供される。

変革的な(transformative)プロジェクト【200億ドル】

 既存のインフラの状態やサービスを抜本的に改善することができる,大胆で革新的かつ斬新なインフラプロジェクトを支援する。収入を生み出し,公共の利益を提供し,国家,地域,州,都市部に対して大きなインパクトを与えるような,商業的に実行可能なプロジェクトに対して,競争ベースで資金が提供される。

既存の貸付プログラム【140億ドル】

 インフラプロジェクトに融資する主要な連邦貸付(credit)プログラム(運輸省,環境保護庁,農業省のプログラム)に対して,追加の資金を提供する。また,この貸付プログラムにおける適格性を拡大し,空港・港などの政府のインフラを含むようにする。

連邦資本回転資金(Federal Capital Revolving Fund)【100億ドル】

 連邦政府が使用する,不動産の購入・建設・改築の資金を融資するための回転資金を創設する。回転資金は,年間の歳出法に基づき,巨額の不動産プロジェクトに融資するため関連機関に送られ,当該機関は,裁量的経費を使って返済する。

私的活動債(Private Activity Bond(PABs))【60億ドル】

 多数で大規模な,地域的又は国家的に重大プロジェクトに際して重要な役割を持つ,「中核となる公共インフラプロジェクト」に対する私的活動債(PABs)の柔軟性を高め,対象事業を拡大する。

不動産改革(Real Property Reforms

 本教書では,政府全体における,連邦政府の不動産処分プロセスの簡素化及び改善を図る提案を支援する。連邦政府に不要な建物を売却する機会を増やすことで,歳入を生み出し,潜在的に地方の経済発展を促進する。また,退役軍人省に対して,既存の資産を柔軟に活用することを支援する。

公有地補修の遅延の削減

 国立公園,避難所等に対するインフラ支援のために,内務省に公有地インフラファンド(Public Land Infrastructure Fund)を創設する。エネルギー開発の拡大による収入の増分の半分を当該ファンドで使えるようにする。

許可手続の簡素化

 本イニシアティブには,環境の安全を維持しつつ,プロジェクトを加速化するため,許可に係る決定を簡素化する案を含んでいる。例えば,環境レビューの完了期限の厳格化や,各機関の重複するレビューの撤廃,州への権限委任,環境レビューに対する革新的なアプローチを試みるパイロットプログラム等が含まれる。

8 各省庁の要求

省庁別の「裁量的経費」の増減率

  • (画像9)省庁別の「裁量的経費」の増減率の表

(単位:億ドル,出典:2019年度予算教書)

  • (注1)「2017年度」は,実績ベース。2019年度予算作成時,2018年度の歳出割当ては完了していないため,2017年度の実績値を記載。
  • (注2)「国務省」には,国際開発庁及び財務省の国際プログラムの経費を含む。「住宅都市開発省」の数値は,本予算教書を基に計算。上記要求には,「海外緊急経費」等を含まない。
  • (注3)2月9日に成立した「2018年超党派予算法」による裁量的経費(国防費及び非国防費)の上限額引上げは反映されていない。

(1)農務省 要求額:190億ドル 2017年度実績比:16.4%減

  • (ア)農務省は,堅実な公共政策,最新の科学及び効率的な運用に基づき食料,農業,天然資源に関する諸課題においてリーダーシップを発揮。
  • (イ)予算は,農業生産・雇用の拡大や研究といった重要かつ不可欠な事業に集中するとともに,農務長官による部局全体の組織改革の取組を支持。また,財政上の制約と納税者の資源の責任ある活用のため,不要又は優先度が低い事業や民間の取組と重複する事業への予算を廃止。(低所得者向け栄養プログラム及び作物保険は,対象者の要件の見直し等により10年間でそれぞれ2,135億ドル,260億ドル減。)
  • (ウ)その他,先般成立(2月9日)した予算法案による予算上限の引上げにより,農務省関連では農業研究サービス局の研究施設等の近代化のための予算1.92億ドルが手当てされた。

(2)商務省 要求額:99億ドル 2017年度実績比:6.1%増

  • (ア)2020年国勢調査,貿易執行,知的財産,天気,地球観測,周波数管理を優先。業務を逸脱する補助金や不必要なプログラムの削減・撤廃。
  • (イ)国際貿易局(ITA)への300万ドルの増額。米国企業の競争力強化を支援するための努力を強化。2017年にはAD-CVD措置が前年比約60%増加しており,こうした努力を支える予算を要請。
  • (ウ)インターネット・ガバナンス等に関するマルチステークホルダー・フォーラムへの国家電気通信情報庁(NTIA)の対応を支援。政府利用者による周波数の評価と最大限の効率的な確保を担うNTIAへの支援を通じ,商業分野における5G,IoTを含む次世代無線サービスの発展を支援。

(3)国防省 要求額:5,971億ドル 2017年度実績比:14.1%増

  • (ア)2月9日に議会で通過した予算上限額引上げに伴い,6,170億ドルの基本予算と,690億ドルの海外緊急作戦予算となった。(海外緊急経費(OCO)から基本予算に200億ドルが移管された。国防省予算全体の水準に変更はなし。)
  • (イ)国防省は,戦争を抑止し,米国の安全を守るために必要な軍事力を提供している。
  • (ウ)新たな国家安全保障及び国家防衛戦略に合わせ,本予算は,米軍の競争空間を拡大し,より致死性のある軍事力を構築し,財政的に可能な形でかつ迅速により高い能力を実現し,より能力の高い,同盟・パートナーシップのネットワーク態勢を強化する。本予算は,国土を守り,米国の繁栄を促進し,力を通じて平和を維持し,米国の影響力を促進させるために不可欠である。

(4)教育省 要求額:599億ドル 2017年度実績比:10.5%減

  • (ア)初等中等教育及び高等教育における教育機会へのアクセスの改善を推進する。州及び学校区のサポート,大学への財政的支援の整理合理化及び新たな高等教育機会の拡大に集中する。初等中等教育における最貧困層の支援,高等教育におけるキャリア教育支援や奨学金返済の合理化等に取り組む。
  • (イ)予算上限引き上げ法においては33.25億ドルを割り当て,各種プログラムの継続措置を図る。
  • (ウ)学校選択制については11億ドルを計上し,子どもの通う学校の選択権を親や家族の手に戻す。
  • (エ)学生ローンの返済について,大学にも責務をシェアするよう要請する。
  • (オ)STEM教育に対し少なくとも2億ドルの直接投資を行う。これには,STEMに特化したキャリア教育プログラムが含まれる。

(5)エネルギー省 要求額:292億ドル 2017年度実績比:3.4%減
うち,国家核安全保障庁 要求額:151億ドル 2017年度実積比:17.5%増

  • (ア)エネルギー省の役割は,科学と技術の革新を通じた米国の安全保障と経済成長。本予算により,科学・技術分野でのグローバルリーダーとして米国の繁栄を確保。
  • (イ)米国民の安全と安全保障のため,核物質の国内外での保全,米核戦力の圧倒的優位を確保する核兵器近代化,核兵器製造・研究開発拠点の汚染除去,中間貯蔵ブログラム支援などの核廃棄物管理に取り組む。
  • (ウ)最先端研究及び将来の革新的技術の基礎となる主要な研究施設に投資。サイバーセキュリティとインフラ強化のため初期段階の国立研究所のR&Dに投資するとともに,新たにサイバーセキュリティ・エネルギーセキュリティ・緊急対応オフィスを設立。
  • (エ)エネルギー支配の時代(an Era of Energy Dominance)を実現するため,初期段階のR&D投資を通じた民間主導の技術開発により,豊富なエネルギー資源を最大活用。先進小型原子炉の開発,クリーンで省エネな化石燃料の研究,エネルギー貯蔵・再エネ・スマートビルディング・EVが統合された電力網の信頼性・強靱性向上に取り組む。
  • (オ)その他,予算上限引上の結果,15億ドルが追加配分され,国際熱核融合実験炉(ITER)を含む重要科学施設,クリーンコール技術及び再エネ・省エネ技術の初期段階R&D予算を措置。

(6)保健福祉省 要求額:695億ドル 2017年度実績比:20.3%減

  • (ア)保健福祉省は,効果的な保健福祉サービスを提供し,医療,公衆衛生,社会サービスの基礎となる科学の健全で持続的な進歩を促進することによって,米国人の健康と福祉を強化する。
  • (イ)使命を達成するための重要な投資を支援する一方で,効果がない,非効率又は重複する予算・政策を削減・廃止する。
  • (ウ)緊急性の高い公衆衛生上のニーズに対処する。具体的には,オピオイド問題と闘うための努力に投資し,重度の精神疾患に罹患した個人を治療するための新たな投資を行い,感染症を制圧するための取組を加速する。
    生物医学研究に投資し,研究資金の説明責任を高め,感染症の流行やその他の人為的災害への備えを強化する。薬物費の削減,メディケアプログラムの強化と保護,オバマケアの廃止と代替,州によるメディケイドの柔軟性の強化を行う。
  • (エ)主なプログラムへの投資を継続し,子供の福祉の増進,強固な家族の構築,低所得者の福祉から就労への移行に対する革新的な解決策を提案する。
  • (オ)国立衛生研究所(NIH)内の3つのプログラム(米国医療研究・品質庁,国立労働安全衛生研究所,国立障害者リハビリテーション研究所)を統合する。これらの活動は当初別々に行われるが,完全に統合する可能性を評価する。
  • (カ)オピオイド問題については,2019年に新たに10億ドルの新規資金,今後5年間で合計50億ドルを投入する。
  • (キ)高薬価の問題については,医薬品へのアクセスを向上させつつ,メディケアパートDとパートBの支払いインセンティブを合理化し,後発薬メーカー間の競争を促進する。メディケイドにおいて,州が民間のベストプラクティスをベースとして,カバーされる医薬品の範囲を決定し,薬価を企業と直接交渉する等のモデル事業を最大5州において行う。
  • (ク)その他,付録において,オピオイド問題への対応に50億ドル,医薬品の開発等を強化するために食品医薬品庁の経費として5億ドル,感染症等への対応強化のために疾病予防管理センターに約3億ドル,NIHの予算を2017年と同程度の330億ドルとするために約90億ドル等,計158億ドルの増額が行われるとともに,112億ドルが義務的経費から裁量的経費へと移管されている。

(7)国土安全保障省 要求額:460億ドル 2017年度実績比8.6%増

  • (ア)2月9日に可決した予算上限額引上げに伴い,14億9,100万ドルが追加。(2017会計年度予算成立額比48億9,100万ドル増。)
  • (イ)重要な歳出項目として,国境の壁建設に16億ドル,税関国境警備局(U.S. Customs and Border Protection: CBP)及び移民税関執行局(U.S. Immigration and Customs Enforcement: ICE)の法執行官及び捜査官を新たに2,750名採用し支援するために7億8,200万ドル等。また,1日当たり4万7,000人の不法滞在外国人を拘留するための25億ドルも含む((注)予算上限引き上げによって拘留施設の成人用ベッド5,000台を追加し,合計で5万2,000人分のベッドを確保できる)。
  • (ウ)本来国務省及び地方政府が担うべき活動への助成プログラムを削減することで,税金の適正な利用を確保。

(8)住宅都市開発省 要求額:292億ドル 2017年度実績比:14.1%減

  • (ア)低所得者向け賃貸住宅関係支援を継続する(要求額338億ドル。予算上限引上げ法による追加配分17億ドル。)一方で,これらの支援プログラムが,より財政効率的で,受給者の就労と自立を促すような支援となるよう改革を要請。
  • (イ)昨年12月にカーソン長官が新たに公表した,公的住宅支援受給者の自立支援促進センター(EnVision Centers)の評価予算を計上。
  • (ウ)公的住宅支援受給者向けの自立と就労を促すための支援事業(Family Self-Sufficiency Program及びJobs-Plus Inititative)を推進(合計8,500万ドル)。
  • (エ)ホームレス対策(要求額24億ドル)及び住宅における鉛等による健康被害防止のための措置(1.45億ドル)を2017年実績レベルで維持。
  • (オ)昨年に引き続き,地域開発包括補助金(CDBG)など,効果が不明確で州及び地方政府による実施がより望ましいと考えられる制度の廃止を要請。

(9)内務省 要求額:112億ドル 2017年度実績比:16.8%減

  • (ア)エネルギー開発プログラム,公有地におけるインフラ改善,省横断的な組織改革を優先。
  • (イ)公有地(陸上・沖合)におけるエネルギー開発支援プログラムを増額。再エネ開発のための貸与地域を新たに開放。
  • (ウ)エネルギー開発のための公有地貸与による増額分等からなる公有地インフラファンドを新たに立ち上げ,国立公園,野生生物保護区等のインフラ改修に充てる。
  • (エ)予算上限引上げ法通過後の調整により,国立公園局の運営等を用途として,3.4億ドル増額。

(10)労働省 要求額:94億ドル 2017年度実績比:21.4%減

  • (ア)無計画な支出の引締めや財政赤字を伴わない米軍再建のため,労働省は最も優先度の高い機能に焦点を当て,重複,不要,効果が不透明又は非効率な活動への投資をやめる。
  • (イ)アプレンティスシップ(養成型訓練制度)の推進に2億ドルを充て,支援を拡充。
  • (ウ)失業保険の不適正な支給を防止するとともに,各州の健全な財政運営を促す。
  • (エ)小規模業者等が共同して被用者に健康保険を提供する制度(AHPs)への支援を拡充。
  • (オ)失業保険を財源とした,育児のための有給休業制度(6週間)を各州に創設。
  • (カ)2025年に支払い不能となるリスクのある企業年金の複数雇用主制度について,保険料の追加により今後20年間の資力を確保。
  • (キ)外国人労働者のビザ取得時の雇用証明について,仕事量に応じた手数料を創設。

(11)国務省・国際開発援助庁 要求額:283億ドル 2017年度実績比:26.9%減

  • (ア)国務省・国際開発援助庁予算は,2018年会計年度予算や米国家安全保障戦略(NSS)で明らかにされたものを含め,米国の戦略的目標を支援。加えて,本予算は,米国の外交・国家安全保障上の目標を推進するために税金を利用に当たっての説明責任・有効性・効率性を改善する国際開発援助庁の改革及び重要な投資を支援。また,本予算は,国際的な資金拠出でより均衡のある負担を追求するとともに,国務省・国際開発援助庁や国際機関が結果に責任を持つことで,より繁栄した安全な米国の実現に向け,米国の海外における利益を支援。
  • (イ)また,主にシリアやイラク,アフガニスタンといった紛争地域における海外緊急事態作戦(OCO)費として120億ドルを要求し,合計で378億ドル。これは,2018年会計年度予算から1億9,100万ドルの増額。
  • (ウ)財務省の国際予算プログラムへの拠出金は,2017年会計年度予算成立額比で3億5,400万ドル減(20%減)の14億ドル。
  • (エ)9日に可決した予算上限額引上げに伴い,国際開発援助庁の国際災害援助予算に10億ドル,国際機関への資金拠出用予算に1億ドル,大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)向けの国務省世界保健予算に4億ドルが追加され,合計15億ドルが追加。

(12)運輸省 要求額:156億ドル 2017年度実績比:19.2%減

  • (ア)運輸省に対しては,交通の安全確保と,地域的・全国的に重要なプロジェクトへの投資に注力することを要求。非効率,説明困難,連邦政府との結びつきが不透明,州政府・地方政府・民間セクターによる実施が望ましいといったプログラムの削減,廃止又は改革を提案。
  • (イ)具体的には,交通の安全確保として,高速道路の安全対策,自動車及びインフラの自動化技術開発等を強化する一方,航空管制機能のFAAからの分離,地方空港の生活路線向け予算(the Essential Air Service)の削減,長距離のアムトラック向け補助金の削減(州政府共同負担に変更),未承認のTIGER補助金の削除,都市交通向け補助金の削減等を提案。
  • (ウ)義務的予算のうち,高速道路,橋梁及び交通システムの改善として,574億ドルを要求。その他,予算上限引上げ法による追加配分として,船員教育改革を進める海事庁について,州立海事大学校の老朽化した練習船2隻の代替予算3億ドルを計上。

(13)財務省 要求額:123億ドル 2017年度実績比:3.0%減

  • (ア)国の債務を責任ある形で管理し,効率的に徴収を行う一方で,金融システムを守り,北朝鮮や他の安全保障上の脅威に対して最大限の経済的な圧力をかける手段への投資に予算を配分するために必要なリソースを要求する。
  • (イ)金融システムを守り,経済的手法を活用し安全保障上の脅威に対抗するという重要な任務を継続するため,TFI(Terrorism and Financial Intelligence)の予算として,2017年度比3,600万ドル増の1.6億ドルを要求する。また,銀行秘密法を執行するとともに,テロ資金調達やマネー・ロンダリング等の金融犯罪の予防に重点を置くため,FinCEN(Financial Crimes Enforcement Network's)の予算として,2017年度比300万ドル増の1.2億ドルを要求する。
  • (ウ)支払われるべき税収と実際に支払われる税収の差額を縮めるためのイニシアティブを提案し,これにより今後10年間で約290億ドルの財政赤字縮小を見込む。
  • (エ)IRS(内国歳入庁)のベース予算として,納税手続及びITコンプライアンスのための23億ドル及びIT近代化のための1.1億ドルを含む,111億ドルを要求する。また,税法の執行を拡大・強化するための投資として追加資金を要求する。

(14)環境保護庁 要求額:54億ドル 2017年度実績比:33.7%減

  • (ア)州の権限を尊重し,州が自由に使える補助金,水道インフラ,土壌汚染の浄化,重要流域のモニタリング,取締り,改正化学物質管理法の施行,災害対応,R&Dへの予算計上を行うほか,エネルギー・スター・プログラムに関する権限をEPAに授権。
  • (イ)コア・ミッションへの集中のため,優先度の低い取組や他組織との重複が認められる取組,本来地方政府の権限に属するような取組は廃止する。具体的な廃止対象プログラムは,気候変動研究・パートナーシッププログラム,室内ラドンプログラム,海洋汚染・河口プログラム,環境教育プログラム,ビーチプログラム等。これらの廃止により,2017年比6億ドルの予算を削減。
  • (ウ)その他,予算上限引上げ法通過後の調整により,土壌汚染対策及び水道インフラへの支出を用途として,7.2億ドル増額。

(15)米航空宇宙局(NASA) 要求額:196億ドル 2017年度実績比:0.3%減

  • (ア)産業界及び国際パートナーとの連携により,月への有人宇宙探査を長期目標とし,その後火星等への有人ミッションにつなげていく。
  • (イ)月への探査等の有人宇宙探査に100億ドルを配分する。産業界との連携等により,2022年にスペースタグ(注:月近傍における月周回プラットフォームで深宇宙探査のゲートウェイとなる。)の商業打上げを実施する等,月探査における短期的目標の実現を目指していく。また,月以遠の有人探査に必要な低コスト技術・システムを可能とするための新たな探査研究・技術プログラムを立ち上げる。次世代宇宙ロケット(SLS)及びオリオン宇宙船(Orion)開発に37億ドルを配分する。これにより,2020年に打上試験,2023年頃に月への初の有人ミッションを計画どおり実施する。
  • (ウ)国際宇宙ステーションへの直接的な予算配分を2025年に終了し,NASAはその後の地球低軌道(LEO)における研究や技術実証を産業界のパートナーに依存していく。産業界及びNASAが活用可能な技術を開発するための新たなプログラムを立ち上げ,1億5,000万ドルを配分する。NASAにおける衛星の保有・運用体制も商業情報通信衛星の能力に大幅に依存していくよう移行していく。
  • (エ)惑星科学は,火星探査ミッション等に22億ドル配分する。
  • (オ)地球科学は,科学コミュニティによる優先順位を踏まえ,18億ドルを配分する。5つのミッション(PACE,OCO-3,RBI,DSCOVR,CLARREO)等を廃止するとの立場を引き続き維持する。
  • (カ)2019年以降の大幅な予算増が必要とされていた新たな宇宙望遠鏡(WFIRST)の開発を終了し,より小規模な宇宙物理ミッションに予算を振り向ける。2019年に打上予定であるジェームス・ウェブ望遠鏡に88億ドル配分する。
  • (キ)1億ドル規模で運用されている教育部門の廃止方針も維持する。
  • (ク)将来の探査や商業宇宙活動に資するため,宇宙空間におけるロボットを活用した大型構造物製造技術開発に5,400万ドル配分する。
  • (ケ)その他,予算上限引上げの結果3億ドルが追加配分され,このうち2億3,500万ドルが宇宙探査に措置。

(16)中小企業庁 要求額:60億ドル,2017年度実績比:24.5%減

  • (ア)既存の企業融資保証プログラムの料金体系の変更や昨年未執行の予算を撤廃。
  • (イ)災害対応として10億ドルを要求。
  • (ウ)零細企業に対する技術支援のために2,500万ドルに加えて,直接融資を支える400万ドルの補助金を要求。

9 付録

  • (1)予算教書公表直前の2月9日,議会は国防費及び非国防費の上限額を大幅に引き上げる合意を行い,「2018年超党派予算法」が成立した。
  • (2)国防費については「2018年超党派予算法」により上限額が6,470億ドル(2019年度),OCO690億ドルと合わせ,国防費は全体で7,160億ドル(2019年度)となる。付録においてはこの7,160億ドルが強く支持された。
  • (3)非国防費については,合計5,400億ドル(2019年度)の提案を行う。これは本予算教書本体における提案(4,650億ドル)より750億ドル多い水準であり,「2018年超党派予算法」による上限額(5,970億ドル)より570億ドル少ない水準である。

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