サウジアラビアの学校では今

ナムーザジーヤ校の校舎の一角
アラビア半島の大部分を占めるサウジアラビア王国は,1932年に,サウード家のアブドルアジーズ国王によって建てられた国です。日本では,イスラム教に基づいた国であること,また世界で最も多くの石油を生産している国であることがよく知られています。
サウジアラビアでは多くの場合,小学校(6年間),中学校(3年間),高校(3年間)が同じ敷地にあり,そのため一口に学校と言っても幅広い年齢の生徒,また多くの先生が在籍しています。ここで紹介するナムーザジーヤ校もその一つです。
ナムーザジーヤ校はサウジアラビアの首都リヤドに1960年に建てられた私立の学校です。その始まりは,当時,まだ国内の教育システムが整っていない頃に,世界最大の石油会社であるサウジ・アラムコ社のムハンマド・フダイルという人物が建てた夜間学校であり,国内で最も早くに女子教育を取り入れた学校の一つとしても知られています。
現在,ナムーザジーヤ校には,約6000人の生徒,約800人の先生がおり,サウジアラビアの他の学校と同様,校舎が男子部と女子部に分かれています。生徒は全員サウジアラビア人ですが,先生はサウジアラビア以外にもアメリカ,カナダ,ヨルダン,スーダン,シリア,南アフリカなど,色々な国の人がいます。その理由は,広く国際社会で活躍する若者を育てるという教育方針をナムーザジーヤ校が持っているからです。ナムーザジーヤ校の教育システムや運営にはアメリカやカナダ,またサウジアラビアの教育コンサルタントの会社が関わっており,早い学年から生徒に外国語やコンピューターを教えています。
教室にて。
ビデオ教材を使った英語の授業
教室にて。後の壁には
イスラム教の正しい礼拝手順を
説明するポスターが貼ってあります
学校は平日(サウジアラビアでは土曜~水曜日)の朝6時45分から午後2時まで,そのあと生徒は学校のチューター制度を使った個人授業や,クラブ活動に励みます。国際色の強いナムーザジーヤ校では,クラブ活動の種類も空手やホッケーなど幅広く,またボーイスカウトといった社会活動に参加する機会も与えられます。
一方で,他の学校同様に,ナムーザジーヤ校ではサウジアラビアの伝統的な教育も維持されています。伝統的な教育とは,サウジアラビアが国の教えとして定めているイスラム教に関する教育です。コンピューターや空手といった最新の科目,外国のスポーツを取り入れながら,イスラム教の経典コーラン,イスラム教を広めた預言者ムハンマドの言行集であるハディース,またイスラム教徒の日々の生活に根ざした宗教法の授業が行われています。
私立であり,多くのスポーツ施設を備えたナムーザジーヤ校の学費はサウジアラビアの平均と比べて決して安くはありません(小学校で年間約24万円,中学校・高校で年間約40万円)。それでも教育熱心な親はナムーザジーヤ校が取り組む教育に高い関心を持っています。そのため,ナムーザジーヤ校はツイッターやフェイス・ブックで生徒の保護者の要望・質問を聞いたり,また意見交換をしたりして,積極的にコミュニケーションをとっています。
今日,サウジアラビアでは,人口の半分以上が25歳以下と言われています。そのため,各家庭にとっては子供にどのような教育を受けさせるか,また政府や学校にとっては若者にどのような教育カリキュラムを用意するかが非常に重要な課題となっています。そうした社会の状況を受けて,今,伝統と最先端の両方を備えている教育カリキュラムを持った学校が,非常に注目されているのです。ナムーザジーヤ校は,まさにその名前(「ナムーザジーヤ」はアラビア語で「模範」を意味します)にふさわしい学校の一つだと言えるでしょう。
空手クラブにて。
審判を務めるコーチは
エジプト人の空手経験者です
校庭にて。
ボーイスカウト活動の練習
(2012年11月)