学校外観(普通学校に併設)
カザフスタンの初等・中等教育は,基本的には日本の小中高にあたる「普通学校」(カザフ語で「メクテプ」)で行われます。普通学校は午前と午後の二部制で,生徒は午前のみまたは午後のみに分かれて授業を受けます。児童や生徒の多くは,通常,平日の学校に行かない時間は,校外でクラブ活動を行うか,専門学校に通っています。これは,才能のある子どもを積極的に伸ばし,芸術やスポーツ教育に力を入れるお国柄が影響しているようです。
クラブ活動は校外の専用施設に行き,自分の興味に合わせて短期間から参加することができます。一方,専門学校では6年間にわたり対象科目をしっかりと学び,大学受験にも通用する修了証書をもらうことができます。今回紹介する「子ども美術学校」も,そうした専門学校の一つです。
授業の一風景
カザフスタンの首都アスタナ市は,1997年に首都となった世界で最も新しい首都のひとつで,北極海まで注ぐオビ川の支流であるイシム川をはさんで両岸に広がっています。
子ども美術学校は,1983年に開校しました。アスタナ市で唯一,子どもたちが美術を専門に学ぶことができる学校で,現在,420名の児童・生徒が通っています。卒業生の多くが芸術大学に進学し,その後デザイナーや画家,彫刻家などとして活躍しています。
子ども美術学校は6歳から11歳までと,12歳から17歳までの二つの部に分かれます。11歳までは,美術に興味がある子どもなら誰もが入学できますが,12歳以降はより専門的な授業となるため,入学のために試験を受けなければなりません。また,卒業前には学校で学んだことの総まとめとして卒業制作を行います。
昔話に着想を得ながら絵を描く生徒
授業は週に3回で,生徒の都合に合わせて午前の部(9時~12時)と午後の部(15時~18時)があります。各クラスの人数は10名程度です。授業はスケッチ,彩色法,彫刻,布を用いた制作,美術史等で,将来,美術の高等教育に進むことを意識した内容になっています。教師18名のほか,現役の美術家を招いたワークショップも実施され,それぞれの生徒の個性を伸ばすための熱心な指導が行われています。美化活動の一環として,市内の壁やゴミ箱に絵を描くこともあります。
また,国内やロシアなどの近隣諸国の美術学校とも交流を行い,国際コンクールへの出展も行っています。2010年には,「三菱アジア子ども絵日記フェスタ」にもカザフスタンからの代表として参加しました。
廊下にびっしりと並ぶ卒業制作の数々
2014年に在カザフスタン日本大使館が初代大統領博物館と協力して行った日本画のワークショップには,子ども美術学校の生徒約20名が参加しました。初めて見る墨や膠(にかわ)を使い,日本画家の宝居智子(ほうきょ・ともこ)氏のお手本を見ながらそれぞれがのびのびとした感性で日本画を仕上げました。また,大使館が学校を訪問して日本文化紹介を行った際には,持ち前の器用さを活かして,かわいらしいカエルと色とりどりの手裏剣を折り,力強い筆遣いで自分の名前などを漢字で書いていました。
勉学のかたわら,自分の好きなことに取り組む生徒たちは自由に才能を伸ばしていて,その表情は生き生きとして楽しそうでした。子ども美術学校で学んだ生徒の中から,世界で活躍する芸術家が生まれる日も,そう遠くないと感じました。
(2015年4月)
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