学校の正面玄関
中国の学校は,小学(6年),初級中学(3年,中学校にあたる),高級中学(3年,高校にあたる)に分かれており,小学と初級中学の9年間が義務教育です。中国では,大半が公立学校です。
北京市の中心部から西方に位置する北京市月壇中学(げったんちゅうがく)は,1963年創立の男女共学の中学(日本の中高一貫校にあたる)です。日本と中国の国交が正常化した1972年に日本語学科が開設され,現在,中国で唯一,生徒全員が日本語を第一外国語として必修で学ぶ学校として有名です((注)中国では,日本語を第一外国語としている学校は他にもありますが,全員が第一外国語として必修なのは同校だけです)。
日本語教育の他に,日本との交流も盛んで,これまでに190もの日本の学校と交流協定等の友好関係を結ぶとともに,毎年約4千人の訪問団や交流団を受け入れています。1996年には,長年にわたる日本との交流実績が認められ,日本の外務大臣表彰を受賞しました。
日本語の授業の様子。すべての教室に,パソコン画面を映す電子黒板が設置されている。
同校の生徒数は約700名,教員数は約100名です。1クラス当たり約30名が在籍し,初級中学は1学年4クラス,高級中学は同3クラスです。寮はなく,すべて通学制で,北京市内に住む日本語に興味がある生徒であれば誰でも入学の申請ができます(もちろん,入学試験があります)。一部,北京市外からの生徒も受け入れています。
授業は月~金曜日の週5日制で,授業時間は8時00分~16時40分。毎日7コマ(1コマは40分)。中国の学校は9月入学の2学期制で,1~2月(春節期間)に約4週間の冬休み,7~8月に約7週間の夏休みがある他,国家の規定に基づく労働節(5月),国慶節(10月)等の休みがあります。学校が定めた制服と運動服があり,生徒たちは,学校にいる間,ほぼ運動服を着て活動しています。学校独自の校則はない一方,北京市が,小中高校生の守るべき規則を定めています。
美術の授業の様子。中国伝統の剪紙(切り絵)を制作中。
授業科目は,言語・文学,数学,日本語,英語,物理,化学,生物,歴史,地理,政治,体育,音楽,美術,情報技術,一般技術,労働技術,青春期の心理と健康の17科目の他,生徒が自由に選択できる研究学習(ビデオ映像制作,日本の折り紙・将棋,日本概況等)があります。同校の特色は,やはり日本語を重点科目としていることです。
同校の生徒たちが最近熱中していることは,iPhoneやiPadなどのハイテク製品です。学校に持って来ることは認められていませんが,かなり多くの生徒が所有しています。また,サークル活動として,合唱,舞踊,話劇,ロック音楽,歴史,アニメ,美術,科学技術,体操,バスケットボール,卓球,サッカー,文学等があります。
同校では,中学から高校の6年間のうちに,生徒全員が一度は日本に行くことを目指しています。学校の修学旅行(希望者のみが参加)や観光旅行を含め,現在,高校3年生の約80%の生徒が日本に行ったことがあります。また,高校3年生の約15%が卒業後,海外留学を選択しますが,全員が留学先として日本を選びます。
日本との交流実績を示す外事交流展示室
北京日本人学校との交流も盛んで,毎年,お互いの言語を使っての国際スピーチコンテストを開催しています。
中国では,受験競争が激しいため,特に高校3年生は,毎日夜遅くまで勉強しています。生徒たちの悩みは,やはり進学です。
放課後は,多くの学生がすぐに帰宅しますが,一部の学生は,スケート,水泳,ビリヤード等の学校外活動に参加しています。また,多くの学生が,休みの時期を利用して,社会公益活動(ボランティア活動,地域社会や敬老院等でのサービスなど)に参加しています。
同校は,中国の対外開放の窓口,日中の文化交流のプラットフォーム,そして日本と中国のことをよく知る人材の養成基地となることを目標としています。
(2013年1月)