授業の様子(校庭でペットボトル飛行機の実験)
イランの学校制度は,小学校6年,中学校3年,高校3年,大学4年,中学までが義務教育で日本と同じ教育制度です。日本と異なる点は,小学校から高校まで全ての学校は男女別学となり,大学は男女共学です。カリキュラムで特徴的なのは,高校までアラビア語が必修科目で,宗教の授業があることです。イラクとの8年にわたる戦争の経験から護身術といった授業もあります。
イランは教育に熱心な国です。大学入試にはイラン全土から100万人以上が参加するコンクールという全国統一試験があり,その順位で入学できる大学が決まるので競争は熾烈です。高校の上級生には,塾に通ったり家庭教師についたりする生徒も少なくありません。大学生の比率は女性60パーセント,男性40パーセントと,女性の大学進学が進んでおり,理系に女子学生が比較的多いこともイランの特徴です。
授業風景(機械の配線を繋ぐ生徒達)
ここで紹介するラッバーニー学園も教育に熱心な高校の一つです。テヘラン市に1993年に設立された中等部と高等部からなる理系の私立女子学校です。生徒数は中・高等部合わせ550人で,同学園はイランでも有数の先進的な高校の一つです。2005年に新たに建設された校舎には太陽光発電・風力発電を備え,紙や紙コップ等には再生紙を使用する他,教育の質を確保するためISOを取得しています。
授業は土曜日から水曜日までの週5日で,木・金曜日が休日です。朝7時半から午後2時半まで勉強します。同学園ではIT教育にも力を入れており,教師はパワーポイントを活用して授業を行い,生徒たちもパワーポイントを使って自身の研究成果を発表します。国際的に通用する人材育成の観点から,英語教育にも力を入れています。そうした教育の質向上の努力の結果,2013年度には,大学生も参加するイランの「ロボカップ」大会のデモ機作成部門において,同学園の女子生徒が2位と3位を獲得する快挙を成し遂げています。
放課後は,一般に,家の手伝いをしたり,英語塾やスポーツクラブに通ったりすることが多く,アルバイトはほとんどしないのが普通です。ラッバーニー学園の女子生徒も同様で,英語塾や音楽,スポーツクラブに通っている生徒がほとんどです。また,ラッバーニー学園は,スポーツは心身を鍛え健康を維持する重要な手段と位置付け,学校にはバスケットやバレーボールのコート,卓球台も設置されている他,空手,水泳の授業も行っています。ちなみに,男の子の間ではサッカーが人気で,最近はプレイステーションやニンテンドーDS等のコンピュータゲームも流行っています。
夏休みは6月中旬から9月中旬までの約3ヶ月です。その間,特別講座やスポーツのクラスが開催されます。冬休みはなく,ノールーズと呼ばれるイランの正月休みが3月20日(春分の日)から約2週間続きます。この他,ラマダン明けの休日や,殉教した宗教指導者を悼むイスラム教の宗教祭日があります。また,日本では新学期は4月から始まりますが,イランでは新学期は9月から始まります。
製作した模型の前で
イラン人の日本に対する印象は総じて良く,日本製品への信頼,第二次世界大戦後の焼け野原から経済大国になった点が評価されています。今回インタビューに応じてもらった同学園の生徒・先生にも日本の印象を聞いてみたところ,日本の経済的な側面だけでなく,時間を守る,協力して仕事をする,礼儀を重んじるという精神的側面を,イラン人が日本人から学ぶべき点として評価していました。他にも,日本の学校の子供達が自分たちで掃除をし,給食を配膳していること,東日本大震災においての日本人の規律ある対応は,イランのテレビで多く放映され,イラン人に感動を与えています。テレビでは,「おしん」や「一休さん」,「キャプテン翼」などが放映され,高い人気を呼んでいます。
ロボカップ2013の様子(製作したデモ機)
玩具のデモ機を製作する生徒
(2013年7月)
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