
小泉総理の東アジア首脳会議等への出席
(概要と取りあえずの評価)
平成17年12月
12月12日~14日、マレーシアのクアラルンプールにおいて、東アジア首脳会議、ASEAN+3首脳会議、日ASEAN首脳会議等の一連のASEAN関連首脳会議が開催され、小泉総理が出席したところ、その概要と取りあえずの評価は以下のとおり。
1. 各首脳会議の概要
東アジア首脳会議(EAS)(14日午前、ASEAN日韓中印豪NZの首脳が出席。冒頭のみ露首脳がゲスト参加。)
ASEAN+3首脳会議(12日午後、ASEAN日中韓が出席)
- ASEAN+3協力の現状や今後の協力のあり方について議論
- 小泉総理よりは、(1)鳥インフルエンザ、テロなどの地域の脅威に対処する能力向上(鳥インフルエンザについては1.35億ドルの支援策を表明)、(2)経済連携や通貨金融協力などを通じた地域の一層の繁栄確保、(3)地域の共通意識の形成促進、(4)ASEAN統合支援の重要性などについて発言。
- 首脳会議の結果、(1)ASEAN+3協力が引き続き東アジア共同体形成の「主要な手段」であること、(2)2007年に東アジア協力に関する第二共同声明等を作成するための努力を開始すること等が盛り込まれた「クアラルンプール宣言」が発出された。
日ASEAN首脳会議(13日午前)
- 今や日ASEANは、対等の立場で共通の課題に取り組んでおり、ASEANは地域協力の中心(「運転手」)として、東アジア協力に一層活発に貢献しているとの認識を踏まえ、「日ASEAN戦略的パートナーシップの深化・拡大」に向けた政治的決意を再確認する首脳共同声明を発出した。
- 小泉総理より、総額75億円のASEAN統合支援拠出金を拠出すること、鳥インフルエンザ対策として50万人分の抗ウィルス薬提供などの支援を行うこと、テロ対策、経済統合弱者支援などの分野においても支援を実施することなどを表明。
2. 取りあえずの評価
東アジア首脳会議(EAS)
- 参加国間の事前調整では、従来、東アジア共同体の形成の「主要な手段」として機能してきたASEAN+3に加えて、今回新たに設置されるEASが共同体形成に関与すべきか否かが大きな論点となった。結果的にEASも「共同体形成に重要な役割を果たし得る」との文言を宣言に盛り込むことでコンセンサスが得られたことは、今後EASが地域協力の発展に寄与するための重要な基礎を築いたと言えよう。
- また、(1)EAS宣言に、開放性・透明性・包含性や普遍的価値の強化などの我が国が重視する原則が盛り込まれたこと、(2)EASが毎年開催となったことも、今後EASの発展に資するであろう。更に、今後EAS参加16か国間で各分野の具体的協力に実績を上げる必要があるが、鳥インフルエンザ対策に関するEAS宣言が発出されたことは、その重要なきっかけとなろう。
ASEAN+3首脳会議
- ASEAN+3首脳会議においては、各国が、8年の実績を有するASEAN+3協力の重要性を再確認し、本枠組みの発足10周年に当たる2007年に「第二共同声明」及び「作業計画」を作成することに合意した。これは、豊富な協力実績を有するASEAN+3協力のモメンタムを維持・強化し、将来の東アジア共同体形成を視野に入れた地域協力を推進する上で新たな前進といえよう。
- 地域全体の喫緊の課題である鳥インフルエンザ対策について、日本が大規模の包括的支援策を打ち出したことは、日本の存在感を改めて示すこととなった。
日ASEAN首脳会議
- 「日ASEAN戦略的パートナーシップ」を謳った共同声明の発出は、日本が、東アジア共同体形成をはじめとする地域の諸課題への対応において、ASEANを真に対等な戦略的パートナーとして一層重視していく姿勢を印象付けるもの。
- また、ASEAN統合に対し、ASEAN対話国としては最大規模(75億円の拠出金)の支援を表明したことは、日本が強靱で結束したASEANを望んでいることを「実際の行動」において示すこととなった。