
日英共同声明~未来のための枠組み~(仮訳)
(英語版)
安倍晋三日本国総理大臣とトニー・ブレア英国首相は、2007年1月9日、ロンドンにおいて、安倍総理の初の英国訪問の機会に、初の首脳会談を行った。
両首脳は、日英関係の現状を検討し、国際的に重要な関心事項について意見交換を行い、日英間の強化された協力の枠組みを構築することとした。今回の訪問の結びに、両首脳は、以下の声明を発表した。
我々日英の首相は、両国の関係はかつてないほど良好であることを確認する。この関係は多様な分野における活動に及ぶものであり、この関係の力強さは、何よりも我々が共有する価値と国際場裡における利益に由来する。両国は、持続可能な開発、人権の尊重及び法の支配に基づく平和、安全保障、国際的繁栄について地球規模の共通の視点を有する、自明の戦略的パートナーである。我々は、国際的安全保障、不拡散、気候変動、貧困削減を含む地球規模の重要な課題に取り組む上で共通の利益を有する。
これからの二年は、特に、2008年の日本におけるG8サミットを見据え、日英関係を更に発展させる機会を提供する。日本と英国は、この期間及びそれ以後も世界の平和と繁栄を達成するための協力を継続する決意である。
それゆえに、我々は、国際的安全保障、気候変動、国際開発、科学・技術・イノベーションの分野において一連の目的を達成するために協力することとした。我々は、これらの目標における、また、更に幅広い関係に基づく進展を見直すために毎年会談することとする。我々は、主要な閣僚や職員に対して、この過程を支え、その他の分野における関係も更に深めるために、定期的な意見交換の枠組みを構築するよう奨励する。私達は、知的交流、文化交流、観光を含む人的交流の増進は、相互理解の増進と協力の基礎となるものとして、重要であることを認識する。この関連で、両国の幅広い分野の著名な有識者により構成される有益な年次フォーラムである日英21世紀委員会等の取組を引き続き支援し、こうした交流の枠組みの更なる発展を支援する意図を表明するとともに、2008年の日本における科学、芸術、デザインに関する英国年の計画を歓迎する。
(国際的安全保障の増進)
南部イラクのムサンナー県における日英協力の成功を想起し、日本と英国は、地球規模の安全保障にとって最も深刻な脅威の数々への対処において緊密に協働し大きな貢献をすることが可能である。
- 日本と英国は、イラク、アフガニスタン、中東和平問題、北朝鮮における人権侵害といった国際的課題への対処に際し、緊密な協力を継続する。この関連で、我々は、北朝鮮に対し、拉致問題の早期解決に向けた措置を講じるよう求め、安倍総理は、英国の本件に対する継続的な支援に感謝する。
- 日本と英国は、国際的テロリズムを打破するために協力する。我々は、この重要な任務の範囲を広げるために、日英間のテロ対策のための協議を更に強化することとした。
- 大量破壊兵器とその運搬手段及び関連物資の拡散は、国際の平和と安全に対する主要な挑戦である。我々は、核兵器不拡散条約(NPT)に基づく国際的な軍縮・不拡散体制を強化し維持することの重要性を再確認し、その関連でNPT運用検討プロセス、拡散に対する安全保障構想(PSI)における協力を更に進めていく考えである。我々は、北朝鮮やイランに関する強化された協議や調整を通じたものも含めて、拡散に対抗する努力の強化に向けて一層緊密に協力する。我々は、ミサイル発射や核実験の発表を含む最近の朝鮮半島情勢に重大な懸念を表明し、北朝鮮に対し国連安全保障理事会決議第1718号の遵守、特にすべての核兵器及び既存の核計画の放棄を求める。我々は、イランが、全ての濃縮関連・再処理活動の完全な停止を含め、IAEA理事会及び国連安全保障理事会が要求する措置を講じていないことに対して深刻な懸念を表明する。我々は、イランが、問題の平和的・外交的解決に向けて、国連安全保障理事会決議第1737号に示されるような国際社会により提示された前向きの道を進むことを求める。
- 日本と英国は、平和支援活動の分野において、協力を強化する。英国は、NATOとのより緊密な関係を築くための日本の取組を歓迎する。
- 我々は、国連改革を継続する決意である。特に、我々は安全保障理事会の早期の改革の実現のために協力する。英国は、日本の安全保障理事会常任理事国入りを引き続き支持する。我々は、安全保障理事会で議論される事項について緊密に協力する。
- 日本と英国は、国連の枠組みにおける武器貿易条約(ATT)構想に関わる議論の機運を維持すべく協力する。
(気候変動への取組)
我々は、低炭素社会に向けての取組を喫緊に加速する必要がある。気候変動は、緊急に全世界的な対応を要する脅威である。日本の議長下での2008年のG8サミットは、我々がこの分野における協力を強化するための特別の機会を提供する。
- 日本と英国は、大気中の温室効果ガス濃度を、危険な気候変動を回避するに足るレベルで安定化させることが可能となるような国際的枠組み構築に向けて協力する。このような枠組みは、持続可能な開発と両立した形で、全ての温室効果ガス主要排出国における低炭素社会に向けた速やかな移行がもたらされるよう衡平に構築されるべきである。
- 日本は、その2008年のG8議長国下において、気候変動、クリーン・エネルギー、持続可能な開発に関するグレンイーグルズ対話からの報告に期待する。我々は、喫緊の要請である気候変動とエネルギー安全保障への取組を連携させつつ、このプロセスが前進に向けた転換点となることを確保するよう協力する。
- 日本と英国は、引き続き低炭素社会に向けた科学技術に関する共同研究において協力する。
(国際開発)
日本と英国は、国際開発が地球規模の貧困に対処し国際的な安全保障及び人間の安全保障を増進するために重要であることを認識する。両国は、最貧層が気候変動から最初に且つ最も深刻に影響を受けることを想起する。
- 日本と英国は、世界的規模で大きな影響力を有する主要な二国間のドナーであり、ミレニアム開発目標を達成するに際して共同で大きな影響を及ぼす機会を有している。両国は、開発援助政策における相互の補完性と、二国間及び多国間援助の効率性を高めるため協力する。
- 日本と英国は、アフリカの開発及びミレニアム開発目標へのコミットメントも含め、2005年のG8グレンイーグルズ・サミットにおいてなされた、両国の開発援助に関する約束を実現する決意である。英国は、日本のTICADプロセスを評価し、2008年に開催されるTICAD IVの成功を支援するため日本と協調する。
(科学・技術・イノベーション)
日本と英国は、経済の競争力のための科学、技術、イノベーションの重要性を認識し、両国は、世界が直面する最も喫緊の課題に対処するために科学技術を活用するための協力を継続する。両国は、これら課題に対処するため、若い世代における科学に対する関心を喚起し、次世代の一流の科学者を育てること、また、気候変動等の重要な課題に対処するには、人々の参画が重要であるとの認識を共有する。
- 日本と英国は、科学技術とイノべーションの分野における協働を活用する。両国は気候変動、持続可能なエネルギー技術、生命科学の分野における研究関係を強化するための協力を継続する。日英科学技術協力合同委員会は、次回会合において成果を確認する。
- 日本と英国は、特に学術研究機関と民間の間の知識の移転に関する最善の慣行を共有するため、協力する。
これらの分野の活動は、併せて行われることによって、日英関係を互いに利益のある方向で発展させ、同時に、地球規模の課題に対処するために多国間の枠組みの強化にもつながると信じるものである。