
鳩山由紀夫総理特使のマレーシア訪問(概要)
平成24年6月4日
6月1日(金曜日),鳩山由紀夫元総理大臣は,マレーシア日本国際工科院(MJIIT)の開校式に出席するため,総理特使としてクアラルンプールを訪問したところ,概要以下のとおりです。
1 日程
6月1日(金曜日)
- マレーシア日本国際工科院(MJIIT)開校式出席
- ナジブ首相との会談
- 中村在マレーシア大使主催MJIIT開校式祝賀レセプション出席
2 MJIIT開校式
(1)式次第
- ザイニ・マレーシア工科大学(UTM)副学長による歓迎の挨拶
- 鳩山総理特使による挨拶
- ナジブ首相による挨拶
- マレーシア工科大学とMJIIT日本側コンソーシアム大学による覚書署名式
(2)鳩山総理特使による挨拶(和文,英文)
(要旨)
- ア 東方政策30周年という記念すべき年に,日・マレーシア両国の極めて重要なプロジェクトであるMJIITが開校式を迎えたことは大変喜ばしい。
- イ 東方政策の下,これまで14,000人の優秀なマレーシアの若者が日本で学び,両国をつなぐ懸け橋として活躍。東方政策が緊密な二国間関係に与えた成果を高く評価。東方政策は,今後も日・マレーシア友好関係の基盤として維持・発展していくべき。
- ウ 日本とマレーシアは,貿易面で互いに重要なパートナーであり,マレーシアは我が国企業の海外進出において重要な拠点の一つ。また,両国は,二国間関係のみならず,地域・国際社会の課題に共に取り組む成熟したパートナー。
- エ MJIITは,マレーシアのみならずASEANにおける工学教育の重要拠点として地域全体の発展に大いに貢献すると確信。MJIIT設立に携わった者として,また,民主党日本・マレーシア友好議員連盟会長として,産学界と連携しながらMJIITを支援しつつ,アジアの持つ共通の価値観を共に育んでいきたい。
(3)ナジブ首相による挨拶(要旨)
- ア 本年初頭,野田首相との間で,東方政策30周年を祝う書簡を交換し,MJIITが両国の絆の証であることを確認。MJIITの開校は,東方政策30周年を記念するにふさわしい。待ちに待った歴史に残る本日の開校式実現を導いた,日本とマレーシア両国の関係者に心から感謝する。
- イ MJIITは,マレーシアの日本の技術に対する信頼,日本の企業倫理に対する賞賛,日本式生活へのあこがれの表れであり,技術革新と日本企業の技術をMJIITの学生に教え,「1マレーシア」のビジョンに沿った持続可能な成長に資する新しいタイプのマレーシ ア人エンジニアを生み出すことを期待。
- ウ また,MJIITは,地域の教育協力においても良い手本であり,マレーシアだけでなく,諸外国,特にASEAN諸国にとっても重要な日本型工学教育の拠点となる。
- エ MJIITは,マレーシアが世界経済において中心的な役割を担う手助けとなり得る。MJIITで生み出される新しい革新的な技術は,マレーシアの経済発展の原動力となる。MJIITは,持続的開発と成長に導く意欲に沿って設立された。ここに,MJIITの開校を宣言する。
3 ナジブ首相との会談
MJIIT開校式に引き続き,鳩山総理特使は,ナジブ首相との間で約20分間にわたり会談を行ったところ,概要以下のとおりです。また,会談後,コンソーシアム参加大学も交え,約40分間懇談を行いました。
(1)冒頭
- ア ナジブ首相から,鳩山総理特使のMJIIT開校式出席に対する謝意表明がありました。
- イ これに対し,鳩山総理特使から,東方政策30周年とMJIIT開校に祝意を表するとともに,MJIITを通じてアジアの未来を担う人材をナジブ首相と共に育成していきたい旨の野田総理のメッセージを伝え,野田総理からの親書を手交しました。
(2)二国間関係
- ア 鳩山総理特使から,2年ぶりの再会を祝うとともに,MJIITに少しでも関わることができたことをうれしく思う,MJIITはナジブ首相が式典挨拶で述べたとおり日本とマレーシアの絆の象徴であり,ASEAN全体の工学教育の拠点となることが期待される旨述べました。また,本年30周年を迎える東方政策の下,日本に14,000人ものマレーシア人が日本留学し,マレーシアの国家発展に寄与したことはすばらしく,2020年に先進国入りを実現するという「ビジョン2020」実現に向けて,MJIITが大きな原動力となっていくことを期待すると述べました。
- イ これに対し,ナジブ首相からは,鳩山総理特使と同じように確信している,MJIITは,技術のみでなく,日本の価値観や労働倫理を学ばせ,優秀な人間を育てる場となり,「ビジョン2020」を達成してくれるものと思うと述べました。また,MJIITが日本の産業界の協力を必要としており,日本企業との協力をMJIITのユニークな点にしてほしいと述べるとともに,MJIITが3,000人規模の学生を抱える組織として発展できるよう,日本の大学コンソーシアムからは更に多くの日本人教員を派遣してほしいと述べました。
- ウ これに対し,鳩山総理特使からは,コンソーシアムからの教員派遣を推進したいと述べつつ,日本は少子化に直面しており,優秀なマレーシア人留学生の受入れは,日本の活性化にとっても重要であると述べました。
- エ また,ナジブ首相から,マレーシアのインフラ整備に協力してくれるとの申出に感謝するとの発言があったのに対し,鳩山総理特使からは,日本は,高速鉄道,環境技術,特にスマートグリッドやスマートコミュニティ,水ビジネス等で高い技術を有しており,マレーシアの発展に貢献したいと述べました。
- オ そのほか,2020年オリンピック・パラリンピックの東京招致や,ASEAN5カ国とのサッカー交流を通じた青少年交流促進等について意見交換を行いました。
【参考】マレーシア日本国際工科院(MJIIT:Malaysia-Japan International Institute of Technology)
- (1) 2001年にマハティール首相(当時)が小泉総理(当時)に提案し,マレーシアに日本型工学教育を行う大学を設置する構想がスタート。2010年4月の鳩山総理(当時)とナジブ首相との首脳会談を契機として構想実現に近づき,2011年9月に開校。新校舎の移転を経て,今般,開校式実施に至った。
- (2) MJIITは,「東方政策」の集大成として位置付けられる日・マレーシア共同プロジェクトであり,日本から円借款供与(約67億円)のほか,日本人教員派遣,カリキュラム策定支援等の協力を実施。将来的には,ASEANにおける工学教育の拠点として発展していくことが期待されている。