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小渕総理のASEANとの首脳会議等出席及び越公式訪問
[概要と評価]平成10年12月18日
- I.ASEANとの首脳会談等出席
1.概要
(1)小渕総理は12月15日及び16日、ハノイにて開催された「ASEAN+日中韓首脳会議」及び「日・ASEAN首脳会議」に出席され、現下の経済危機をはじめとするアジアの直面する諸問題への対応や21世紀に向けての日・ASEAN協力等について意見交換を行った。また、会議に先立ちハノイの国際関係学院において21世紀のアジアビジョンについての政策演説を行った他、会議終了後に内外記者会見を行った。
(2)また、小渕総理はフン・セン・カンボディア首相、金大中韓国大統領及び胡錦濤中国副主席と個別に会談を行うとともに、議場においてマハディール・マレイシア首相、チュアン・タイ首相、シーサワート・ラオス首相に対し我が国の具体的な支援を表明した。
(3)なお、小渕総理はこの機会にヴィエトナムを公式訪問し、ハノイの他ホーチミンを訪れた。
2.各行事概要
(1)政策演説
- (イ)総理は、16日午前、ヴィエトナム外務省直属の国際関係学院主催の講演会において「アジアの明るい未来の創造に向けて」と題し政策演説を行った。会場には、ベトナム政府閣僚や党要人、同学院の学生や研究者、外交団、内外プレス等約200人余りの熱心な聴衆が参加した。
(ロ)演説では、21世紀のアジアを「人間の尊厳に立脚した平和と繁栄の世紀」にしたいとの総理のアジア・ビジョンを示し、その実現のためには、平和と安定の確保のための努力に加え、(A)「アジアの再生を図る」(B)「ヒューマン・セキュリティを重視する」(C)「知的対話を推進する」の3つの努力が重要であることを提唱し、演説は、同時に外務省のインターネット・ホームページ等を通じても内外に発信した。
- (2)「ASEAN+日中韓首脳会議」
- (イ)アジア経済回復に向けた協力と21世紀に向けたアジアの平和と安全のための協力の2点を中心に議論が行われたが、アジア経済危機の克服のための協力が議論の中心となった。ASEAN側より、日中韓各々の経済危 機への対応につき言及があり、特に日本については、日本経済の再生とそれを通じたアジア経済牽引に対する強い期待と大規模なアジア支援策に対する深々の謝意が表明された。また、東アジア全体の経済面での相互依存関係の深化を踏まえ、ASEANと日中韓各国との協力を一層強化していきたい旨発言があった。
(ロ)総理より、ASEANが経済危機の中でも開放的な経済体制を維持し、貿易・投資の自由化を図っていることを高く評価していること、我が国としても日本経済の再生を図り、アジア諸国の経済回復をリードする所存であることを表明した。併せて、アジア諸国の努力を引き続き支援していくとの方針を示し、新宮澤構想の早期具体化、3年間で6000億円の新しい特別円借款の実施、1万人の人材現地研修等の支援策を実施することを表明し、各国首脳より高い評価を得た。また、第1回日・ASEAN経済産業協力委員会の開催等のASEANの産業再生のための我が国のイニシアティヴに対する高い評価と期待が表明された。
(ハ)また、各首脳より経済危機克服のための協力に関し、危機発生の原因検 証と危機克服のための処方箋についての共同研究、国際短期資本移動の監視・規制を含む国際金融システムの強化、人材育成、中小企業育成をはじめとする中長期的な取り組みの必要性等についての意見が出された。
この関連で中国からはASEAN+日中韓の枠組みの下で国際金融問題について意見交換を行う大蔵次官級フォーラム設置の提案、韓国からは経済危機克服のための意見交換を目的とした民間人中心のフォーラム(東アジア経済協力ビジョン・グループ)設置の提案が行われ、今後事務レベルで各提案の詳細及び今後の取り扱いを検討していくこととなった。(二)ASEAN側より、(A)「ASEAN+日中韓首脳会議」をASEAN首脳会議に合わせ毎年開催すること、(B)東アジア及び中南米間の対話強化を目的とした「東アジア・ラ米フォーラム」(ASEMのラ米版)の設置について検討する作業部会を設けることについての提案があり、各々合意された。
- (3)日・ASEAN首脳会議
- (イ)97年の日・ASEAN首脳会議での合意事項のフォローアップ及び21世紀に向けた日・ASEAN協力について議論が行われた。
(ロ)総理より、昨年の首脳会議で合意された事項(橋本イニシアティヴ)が着実に実施されていることを紹介し、昨年の合意を発展させた形で21世紀に向けた日・ASEAN協力のための次の4項目からなる具体的な提案を表明した(4項目提案の概要別添)。
これに対し、ASEAN側より、我が国自身が経済的に苦しい状況下にあるにもかかわらず様々な支援策を表明するなど、ASEANとの協力促進に向けて積極的な姿勢を示したことに対し、賞賛と歓迎の意が表明されたほか、我が国の本件提案を「小渕ASEANイニシアティヴ」と呼びたいとの提案があり、了承された。
(A) 21世紀に向けての対話と協力の促進 (B) アジアの経済危機克服のための協力 (C) 人間の安全保障のための協力 (D) 知的対話と文化交流の推進 (ハ)更に各国の首脳からは、アジアの経済危機克服のためには日本経済の回復が極めて重要であるとして、我が国がアジア経済回復のリード役(Leading goose)を果たすことに対する強い期待が示された。総理よりは、ASEAN側から表明された期待に応えるよう最大限努力していきたい旨応答した。
- (4)内外記者会見
総理は、一連の会議を総括し、アジア諸国の我が国に対する大きな期待を強く感じた旨述べるとともに、今次会議を通じ、(A)東アジア諸国が協力して経済危機を克服しアジアの明るい未来を開くため共に取り組んでいくことを確認したこと、(B)政策演説でも示された21世紀のアジアのビジョンについて参加首脳の賛同を得ることができたこと、(C)21世紀に向けた日・ASEAN協力関係を強化するための具体的方策について合意できたこと等の成果が得られたことを紹介した(内外記者会見の模様は本邦においても生テレビ中継された)。
3.評価
(1)今回の首脳会議は昨年12月に比べ経済危機がアジア地域全体を覆う深 刻な問題となっている中で開かれたことから、各首脳の関心は経済危機への対応に集中した。そのような中、一連の会議を通じASEAN各国から我が国の日本経済再生のための取り組みとアジア支援に対し、高い評価と強い期待感が表明された。我が国としては今後ともこのような期待を十分認識しつつ、アジアの経済危機克服と将来の発展のために努力していくことが重要となっている。
(2)また、ASEAN自身が、アジア経済危機、加盟国拡大に伴う様々な摩擦といった新たな課題に直面しつつも、21世紀を展望する「ハノイ宣言」、「ハノイ行動計画」等を採択し、ASEAN自由貿易地域(AFTA)やASEAN投資地域(AIA)の目標年の前倒しを決定する等、政治的結束や経済自由化路線の維持を内外に示したことは注目に値する。我が国は、会議においてこのようなASEANの努力に対する高い評価と支持を表明したが、今後ともASEANのこのような取り組みが成功するよう様々な形で支援していくことが望まれる。
(3)アジア経済危機に関して我が国が今回表明した具体的な支援策は、新宮澤構想の具体化(マレイシア及びタイについては総理から個別に各首脳に対し、現在までに具体化している支援内容を伝えた)、3年間で6000億円の特別円借款の創設、1万人の現地研修等、アジア諸国のニーズに応える具体的なものであったため、各国より極めて高い評価を得ることができた。今後とも表明した支援策を各国のニーズに応える形で柔軟かつ迅速に実施していくことが重要である。
(4)日・ASEAN関係の強化については、16日、首脳会議に先立って行われた政策演説に示された考え方に基づき、21世紀に向けた具体的な計画を備えた4項目の提案を行ったため、ASEAN側から賞賛と歓迎の意が表明された。ASEAN側より「小渕・ASEANイニシアティヴ」と命名されたこれらの提案を、今後着実に実施に移すことにより、21世紀に向けて日・ASEAN協力の幅と内容を一層拡充していくことが期待される。
(5)なお、カンボディアのASEAN加盟については、加盟式典の開催は後日に取り行われることとなったものの、具体的な加盟の段取りにつき合意が見られたことは、一つの重要な成果であった。これにより、「ASEAN10」が近い将来に実現する見通しとなり、今後名実ともにASEANが地域全体を包含し、地域の安定と繁栄に貢献する安定勢力として、発展していくことが期待される。
II.越公式訪問
1.概要
(1)小渕総理は、16日のASEANとの一連の首脳会合を終えた後、17日に越を公式に訪問した。その中で、総理はカイ首相と約1時間の首脳会談を行い、越のドイモイ政策に対する日本の支援姿勢を表明したほか、フィエウ共産党書記長、ルオン国家主席と各30分の会談を行った。また、カイ首相夫妻主催による公式歓迎昼食会が政府迎賓館で開催された。
(2)17日午後、総理は1975年の越の南北統一後日本の総理として初めてホーチミン市を訪問し、タントゥアン輸出加工区、チョーライ病院を視察し、18日帰国した。
2.成果
(1)経済協力
- (イ)カイ首相との首脳会談において、小渕首相より、対越援助国会合(12月7日~8日、於パリ)で表明した1,023億円のプレッジを確認し、アジア経済危機に関する「新宮沢構想」について、その延長として越に対する支援を検討していく方針を明らかにした。更に、インドシナ半島を縦断する「東西回廊」プロジェクトの推進、「石川プロジェクト」をキー・プロジェクトとする対越知的支援の継続、人材育成のための留学生プログラムの充実、ハノイ、ホーチミン市における「日越人材育成センター」の設立等を表明した。
(ロ)これに対し、カイ首相よりは、我が国が経済困難にある中、対越支援を増額したことに対して謝意表明があり、また、「新宮沢構想」の下での支援や、特別円借款の対越供与に対して強い期待感の表明があった。更に、「東西回廊」プロジェクト等についても我が国のイニシアティヴを歓迎する旨の発言があった。また、続いて行われたフィエウ書記長及びルオン国家主席との会談でも我が国の積極的な対越支援は21世紀に向けて日越関係を強化するものであるとして謝意表明があった。
- (2)ハイレベル交流
小渕総理より、カイ首相に対し公式訪日の招請を行い、カイ首相は、これを快諾、今後、外交ルートを通じて具体的日程を詰めることとされた。なお、カイ首相よりは、早期(可能であれば99年第1四半期)の訪日実現への期待の表明があった。
(3)皇族に対する訪越招聘
ルオン国家主席との会談においては、天皇・皇后両陛下、皇太子殿下御夫妻をはじめとする皇族の御訪越に対する希望表明があり、日越関係の更に高いレベルでの交流に対する期待が示された。
3.評価
(1)今回の訪越では、厳しい日程にもかかわらずカイ首相、フィエウ書記長、ルオン国家主席の越のトップ3人との会談がアレンジされ、越側の総理を迎える熱意がよく表れていた。
(2)それぞれの会談の機会に総理より、転換期に立つドイモイ政策に対する我が国の支援姿勢を明確にした。これに対して、越側からは、最大の援助国である我が国に対して繰り返し深甚な謝意が表明されたほか、新宮沢構想をはじめとする我が国の対アジア支援策に対する大きな期待が示された。
(3)総理は、越側の具体的な要望に対して我が国として可能な限りこれに応えていくとの前向きな姿勢で臨まれ、越側はこのような総理の対応を高く評価していた。今回の一連の会談により日越の友好協力関係は一段と強化されたものと考える。
(4)また、総理よりカイ首相に対して訪日を招請したが、これに対してカイ首相は、明年のできるだけ早い時期の訪日を希望するとして積極的姿勢を示した。今後、右訪日に向けて、小渕総理が今回表明した対越支援措置を着実に実施していくことが重要である。
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