
玄葉外務大臣の中東・北アフリカ訪問(概要)
(イスラエル,パレスチナ自治区,ヨルダン,エジプト,モロッコ)
平成24年5月8日
1.訪問日程概要(5月1日~4日)
(1)イスラエル
1日:ネタニヤフ首相との意見交換(弔問の際),リーベルマン副首相兼外相との会談,日イスラエル外交関係樹立60周年記念レセプションの主催(挨拶:日本語・英語)
2日:エルサレム旧市街視察,ヤドヴァシェム(ホロコースト記念館)訪問
(2)パレスチナ自治区
2日:アッバース・パレスチナ自治政府大統領との会談,ファイヤード首相との会談,
ジェリコ農産業団地サイト視察
(3)ヨルダン
2日:ジュデ外相との会談
(4)エジプト
3日:ガンズーリ首相への表敬,アムル外相とのワーキングランチ,カタートニー人民議会議長との会談,エル・アラビー・アラブ連盟事務総長との会談
(5)モロッコ
4日:モハメッド6世国王への表敬,ベンキラン首相への表敬,エル・オトマニ外相との会談
2.成果
(1)中東・北アフリカ地域における我が国のプレゼンス確保
- 昨年来の「アラブの春」以降,域内の移行国及び中東和平問題の当事者たるイスラエル・パレスチナ自治区に対する我が国閣僚による初の訪問として,中東和平,イランの核開発問題,シリア情勢といった地域の主要課題,及び,「アラブの春」を受けた域内各国安定のための我が国の関与について,現地の指導者と率直な意見交換を行った。なお,外務大臣によるイスラエル,パレスチナ自治区,ヨルダンへの訪問は5年振り,エジプト訪問は3年振り,モロッコ訪問は18年振りとなった。
- エジプトではカタートニー人民議会議長,モロッコではベンキラン首相,エル・オトマニ外相と会談し,「アラブの春」以降伸長したムスリム同胞団関係者に我が国閣僚として初めて接触した。カタートニー議長からは,我が国の訪日招請に対し適当な時期に訪日したいとの意向が示された。
- ヨルダン,エジプト,モロッコにおいて,玄葉大臣から,「アラブの春」後,移行プロセスにある国々の自助努力を支え,日本の経験を活かした支援を行っていく考えを示し,各国から高い評価が述べられた。
(2)地域の主要課題への貢献
(1)中東和平
- イスラエル指導者に対しては,入植活動の凍結,安定的・持続的なパレスチナへの税還付,直接交渉再開に関するアッバース大統領発ネタニヤフ首相宛書簡への返書の内容を前向きにすべきこと,及び,パレスチナ自治政府指導者に対しては,従来のパレスチナ支援の継続・強化及び直接交渉のために慎重かつ現実的な対応を取るべきことを働きかけた。両当事者から,それぞれ,我が国の中東和平に対する取組を評価する旨の発言があり,パレスチナ側からは,我が国は約束した支援を必ず実行する信頼できる国である旨の評価が示された。
- また,本年初めより両当事者の仲介役を果たしてきたヨルダンに加え,エジプト,モロッコ,アラブ連盟の要人とも中東和平に関する意見交換を行い,先方からは,玄葉大臣が,イスラエルに対する入植活動凍結や持続的な税還付等の働きかけを含め,両当事者に対し交渉再開に向けた働きかけを行ったことへの高い評価が示されるとともに,我が国が対パレスチナ支援を含め中東和平問題の解決に向けて,より積極的な役割を果たしていくことへの期待が寄せられた。
(2)イランの核開発問題
- 玄葉大臣から,イスラエル側に対し,「対話」と「圧力」のアプローチの下,イラン産原油の輸入を削減する等,前例のない「圧力」をイランにかけており,このアプローチは一定の効果を持ち始めている旨述べた。また,同大臣より,イランに対する軍事オペレーションは,核問題等に対する同国内の結束を高め,核開発を進める更なる口実を与えることになり,中東地域で新たな政治的混乱と緊張を引き起こし,問題の解決がかえって遅延することになり得る,また世界経済をも混乱に陥れると考えられるとして,忍耐と自制を強く求めた。
- 先方からは,我が国の対イラン制裁を含めた対応への評価が示されたが,イラン大統領によるイスラエル殲滅発言などイランの政策に厳しい評価が示され,すべてのオプションをテーブルに載せておくとの立場が述べられた。
(3)経済関係の強化
- エジプトとの間では,ビジネス上の障害を取り除くための事務レベルの作業部会を早期に開催することで一致し,玄葉大臣から,エジプトにおける日本産品輸入規制について,一部規制が緩和されたものの,今後も規制の全面解除に向け努力を続けて欲しい旨述べた。モロッコとの間では,投資協定締結に関する予備的な協議の開始,及び,太陽エネルギー分野の協力強化の方向性で一致した。玄葉大臣からは,6月にビジネス・ミッションを派遣予定であることを紹介し,先方から歓迎の意が表された。加えて,下水道整備計画への円借款供与の交換公文の交換式を行った。