(1) 意義
東アジア諸国は、我が国と政治・経済・文化等あらゆる面において緊密な相互依存関係にあり、東アジアの発展と安定は我が国の安全と繁栄に重要な意義を有している。我が国は東アジア地域に対して、ODAによる経済インフラ基盤整備等を進めるとともに、民間投資や貿易の活性化を図るなど、ODAと投資・貿易を有機的に連携させた経済協力を推進することにより、同地域の発展に大きく寄与してきた。同地域は、1997年からのアジア経済危機の影響を受けたものの、世界の中で特に目覚ましい成長を遂げた地域であり、その経済発展の回復と維持は世界経済の発展のために重要である。また、同地域においては、高い経済成長を遂げ、既に韓国やシンガポールのように被援助国から援助国へ移行した国も現れている一方で、カンボジアやラオスなどの後発開発途上国が依然として存在している他、中国のように、近年著しい経済成長を遂げつつも、国内に様々な問題を抱えている国もある等、援助需要は多大かつ多様である。東南アジア諸国連合(ASEAN:Association of Southeast Asian Nations)との関係でも、加盟国の増加に伴い顕在化したASEAN域内の格差の是正や、民間貿易・投資を円滑化するための制度整備、経済社会基盤の支援、人材育成、環境保全の推進等、数多くの解決すべき問題がある。
(2) 基本方針
上記のとおり、経済社会状況の多様性、援助需要の変化に十分留意しつつ、国毎に戦略的に分野や対象などの重点化を図ることが重要であり、ODAを活用して、同地域との関係強化や域内格差の是正等に努めることが必要である。
東南アジアの中で近年まで高い成長を示していた諸国に対しては、現下の困難な状況を乗り越え順調な経済発展を回復し、政治社会的な安定を維持し得るよう支援することが我が国にとっても重要である。また、依然所得水準の低いインドシナ諸国やモンゴルについては、貧困緩和に取り組むとともに、これら諸国の市場経済への移行及び持続的な成長を引き続き支援していく。さらに、12億を超える人口を抱え、その動向が世界的に大きな影響を与え得る中国については、中国の経済成長に伴う援助需要の変化や対中国ODAに対する日本国内の厳しい見方等もふまえつつ、その改革・開放路線を支援し、国際社会のより一層建設的なパートナーとなるよう促すとともに、環境分野や人材育成等に重点を置きつつ支援を行っていく。
他方で、東アジア地域においては広域的な開発への取組、地域協力の深化と拡大が進みつつあるほか、他の開発途上国への支援を開始したいわゆる「新興援助国」が登場しており、このような動きを支援していく。
以上を踏まえ、我が国はこれまで、次の諸点を重視して支援を行ってきた。
(イ) 経済構造調整をはじめとした経済危機克服と経済再生のための支援
(ロ) 国民生活及び国内の安定に資するための社会的弱者への積極的支援
(ハ) 裾野産業育成や適切な経済・社会運営のための人材育成と制度造り等の支援
(ニ) 貧困対策、経済・社会インフラ整備、環境保全対策、農業・農村開発における各国の実情に応じた援助の実施
(ホ) 地域における広域的な開発(ASEAN域内協力、アジア太平洋経済協力(APEC:Asia-Pacific Economic Cooperation)域内協力、メコン河流域開発等)の取組及び「南南協力(経済開発のより進んだ途上国(南)が、他の途上国(南)に対して支援を行うもの)」への支援