我が国は、ラオスとは伝統的に友好関係にあり、同国の安定・発展がインドシナ全体の経済圏としての発展を図る上で重要であること、後発開発途上国(LDC)であることに加え、内陸山岳国であるとの制約があること、経済開放化政策や民主化を進めていること、さらに、2008年までのASEAN域内関税の引き下げに対応するために、財政構造改革や制度・組織体制等の整備が不可欠であり、支援を必要としていること等を踏まえ、また、ASEANの内部格差是正による統合支援の観点からも、我が国ODA大綱の理念・原則を踏まえつつラオスの経済開放政策に基づく国造りの努力に対し、着実に支援を行っていくこととしている。
我が国は、ラオスにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及び98年3月に派遣した経済協力総合調査団等によるラオス側との政策対話を踏まえ、以下の分野を援助の重点分野としている。
ラオスではあらゆる分野において人材が不足しており、人造りが最重要課題である。市場経済化促進、行政強化、農業開発、インフラ整備等に資する人材育成を重視し、特に、行政官の育成、税関職員・徴税官吏の育成、公共企業及び民間部門の実務者・技術者の育成、高等教育支援、銀行・金融部門における人材育成を重点的に行う。
(ロ) BHN支援
初等教育(校舎建設・改修、機材供与等)、保健・医療(基幹病院を中心に施設改修・機材整備、子供の健康)、環境保全(森林造成等)
(ハ) 農林業
農業はGDPの約6割、労働人口の約8割を占めるが、人口増等に伴い食料輸入が増える懸念もあり、依然食料自給の見通しは定かではない。具体的には、農業政策の企画・策定、灌漑施設整備、ポストハーベスト(貯蔵、流通、加工)改善、焼畑対策/森林保全、農村開発を重点として農林業分野への支援を行う。
(ニ) インフラ整備
水力発電は重要な外貨獲得源となっているが、今後、売電以外の産業育成に努めつつ、環境配慮、近隣国の電力需要等を見極めつつ慎重に対応していく。道路及び橋の整備については、国土の東西・南北の骨格となる幹線道路整備を当面の目標とし、その後維持管理面の強化を図る。
協力に当たっては、ラオスの援助吸収能力の現状に鑑み、他の援助国・国際機関との援助調整に配慮する必要がある。また上記の合意された個々の重要分野への支援継続と並び、ラオス側の開発計画の策定と実施の体制を支えるために、分野横断的な課題として政策支援型の技術協力(政策アドバイザーの派遣、開発計画策定・政策実施の能力向上、法的・制度的基礎強化の為の支援等)も常に念頭に置く必要がある。
また、ラオスは市場経済への移行方針の下に経済運営のノウハウ修得等につき我が国への協力を求めており、我が国としてもラオスのこのような姿勢を歓迎し、支援することとしている。
なお、99年7月に行われた政策協議(無償・技協・開協)においては、上記4重点分野への支援の有効性が確認された。
2001年度のラオスに対する援助実績は155.00億円。うち、有償資金協力は40.11億円、無償資金協力は70.03億円(以上、交換公文ベース)、技術協力は44.86億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)であった。2001年度までの援助実績は、有償資金協力は130.94億円、無償資金協力は881.18億円(以上、交換公文ベース)、技術協力292.19億円(国際協力事業団(JICA)経費実績ベース)である。
(ロ) 有償資金協力
有償資金協力では、2001年9月に「第二メコン国際橋架橋計画」に対して、40.11億円を限度とする円借款の供与を行った。同計画は、インドシナ中央部を東西に結ぶ国道9号線沿いのタイとの国境であるメコン河に位置する国際橋を建設するものであり、インドシナをベトナムからミャンマーまで東西に横断する「東西回廊」の一部をなすものである。また、国境を跨ぐ案件としては円借款として初めてのものである。
(ハ) 無償資金協力
無償資金協力については、ラオスがLDCであることから、農業、農村開発、医療等基礎生活分野における援助を行うとともに、国際機関等他のドナーとの協調を図りつつ運輸インフラ整備に対する援助も実施している。2001年度は、運輸インフラ整備、マラリア・寄生虫対策等の協力を行った。また、市場経済化を担う人材育成のため、99年以降毎年「人材育成奨学計画」を実施してきている。
(ニ) 技術協力
技術協力については、人造り、BHN支援、農林業、インフラ整備の4分野を中心に協力を実施しており、近年援助実績は拡大してきた。「日・ASEAN友情計画」の下、99年度から毎年30名のラオス青年を我が国に招聘している。2000年4月より2年間、財政赤字・貿易赤字の構造的問題を抱えるラオスの経済政策立案能力の向上を図ることを目的とした経済政策支援を実施し、ラオスの経済現状分析及び経済政策への提言策定を行った。2003年4月からは中小企業振興、農業農村開発、金融制度、経済統合を主な対象分野としたフェーズ2を実施する。また、2000年度からは、ラオスの市場経済移行を支える人材の育成のため、「ラオス国立大学経済経営学部・人材協力センター」への支援も行っている。開発調査では、2001年3月から保健・医療サービスの改善計画マスタープラン、2001年10月から電気通信マスタープランの作成等の協力を行っている。
(ホ) その他
援助協調については、特にラオス政府とドナー国・国際機関、NGOとの意見交換の場として、ラウンド・テーブルを開催してきており、現在のところ11の分科会が設けられている。また、貧困削減戦略書(PRSP)策定を進めており、2000年3月には暫定(interim)版が作成された。