1.基本方針
- (1) 我が国の援助対象国としての位置付け
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ラオスは、
(イ) 大メコン圏の中央に位置し、その開発が、インドシナ半島全域の政治的安定と経済的繁栄にとって重要であること、
(ロ) 我が国と伝統的に友好関係にあること、
(ハ) 後発開発途上国(LLDC)であることに加え、経済発展を図る上で内陸山岳国であるとの制約があること、
(ニ) 86年以降、経済開放化政策を推進し、中央計画経済から市場経済への移行に取り組むとともに、91年の新憲法採択、92年及び97年の国民議会選挙に見られるように民主化の動きも進めていること、
(ホ) 構造的な財政赤字・貿易赤字を抱えているとともに、97年のアジア経済危機を契機にマクロ経済運営能力の強化が求められており、また97年のASEAN加盟と同時にASEAN自由貿易地域(AFTA)に加盟し、2005年までに域内関税の引き下げが義務付けられている。これに対応するためには財政構造改革や制度・組織体制等の整備が不可欠であり、支援を必要としていること、
等を踏まえ、援助を実施する。
我が国は、ラオスにとり第一位の援助国(98年)であり、「ラオス円卓会議」等国際的な対ラオス支援においても重要な役割を果たしている。なお、ラオスは我が国の二国間援助実績(99年までの支出純額累計)で第29位の受け取り国である。
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(2) 我が国の援助の重点分野
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我が国は、ラオスにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究並びに98年に派遣した経済協力総合調査団及び99年7月の経済協力政策協議等によるラオス側との政策対話を踏まえ、以下の分野を援助の重点分野としている。
(イ) 人造り
ラオスではあらゆる分野において人材が不足しており、人造りが最重要課題である。
市場経済化促進、行政強化、農業開発、インフラ整備等に資する人材育成を重視し、特に、 行政官の育成、 税関職員・徴税官吏の育成、 公共企業及び民間部門の実務者・技術者の育成、 高等教育支援、 銀行・金融部門における人材育成を重点的に行う。
(ロ) 基礎生活分野支援
初等教育(校舎建設・改修、機材供与等)、 保健・医療(基幹病院を中心に施設改修・機材整備、子供の健康)、 環境保全(森林造成等)
(ハ) 農林業
農業はGDPの約6割、労働人口の約8割を占めるが、人口増等に伴い食料輸入が増える懸念もあり、食料自給の見通しは依然定かではない。具体的には、 農業政策の企画・策定、 灌漑施設整備、 ポストハーベスト(貯蔵、流通、加工)改善、 焼畑対策/森林保全、 農村開発を重点として農林業分野への支援を行う。
(ニ) インフラ整備
水力発電は重要な外貨獲得源となっているが、今後、売電以外の産業育成に努めつつ、環境・社会配慮、近隣国の電力需要等を見極めながら慎重に対応していく。道路及び橋の整備については、国土の東西・南北の骨格となる幹線道路整備を当面の目標とし、その後維持面の強化を図る。
また、通信分野については昨今の情報通信技術(IT)の高まりの重要性を踏まえ、政策的な支援及びインフラ整備を検討する。
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(3) 留意点
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- 上記の重点分野に加え、分野横断的な問題として、開発計画の策定、政策の立案と実施の能力向上、法的・制度的基盤の強化のための支援が必要である。
- ラオスの開発は、メコン河流域全体の開発の中で捉えていくことが重要であり、まずは東西回廊周辺の開発への支援が必要である。
- 97年の日・ASEAN首脳会議で橋本総理が提唱した「日・ASEAN総合人材育成プログラム」及び99年の日・ASEAN+3首脳会議で小渕総理が提唱した「東アジアの人材育成と交流の強化のためのプラン(小渕プラン)」に基づき、人材育成・人的交流の強化を支援する。
2.ラオス経済の現状と課題
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(1) 主要経済指標
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一人当たりGNP(98年)と
GDP成長率(90-98年平均)
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実質GDP成長率
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330ドル、6.7%
(世銀資料)
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93年 5.9%、94年 8.1%、95年 7.1%、96年 6.9%、
97年 6.5%、98年 5.0%、99年 6.5%(IMF資料)
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(2) 現状
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ラオスは、経済開放化政策による市場経済化を推進しており、アジア経済危機前の成長率は6~8%に達していたが、財政赤字・貿易赤字の構造的問題が依然として解消されておらず、市場経済機構の未整備、不十分な産業基盤、製品化(付加価値を高めること)の未発達により、経済危機の影響を大きく被っている。為替レートはアジア経済危機の影響により対米ドルレートが約5分の1まで下落したが、99年10月以降1ドル=7500キープ前後で推移している。しかしながら、効果的なマクロ経済政策を打ち出すには至っておらず、経済危機からの脱却は遅れている。
対外的には、ASEAN加盟に伴う近隣諸国との経済的交流の拡大のため、税制度や法律整備、運輸交通・通信網を中心としたインフラ整備、人材育成が最優先課題となっており、同時に、AFTAにも加盟したことから、貿易・関税対策も急務となっている。
また、経済の拡大と市場経済への移行に伴う貧富の格差や地域間の格差が拡大している。
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(3) 課題
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- 東西経済回廊の活性化
- 金融部門をはじめとする中・長期的なマクロ経済政策の企画・立案
- 輸出の増大による経常収支赤字の改善
- 貧困撲滅と農村・遠隔地の開発
- 恒常的な財政赤字の改善(税制改革による税収の増大等)
- 市場化経済運営上の改善(人材不足による非効率的な行政能力の向上等)
- AFTA加盟に伴う財政構造改革等の推進
- 食料自給率の向上
- 焼畑による森林破壊の抑制及び森林保全・復旧
- 初等教育・高等教育の充実及び保健・医療の体制整備
- 技術者・管理者等の人的資源開発
- 電力・道路・通信等のインフラ整備
- ケシ撲滅重点地域の生活環境の改善・麻薬対策
3.開発計画
- 長期開発計画:2020年までにLLDCから脱却する。
5か年(1996-2000)経済社会開発計画
目 標
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- 年成長率約8%(一人当たり所得500ドル)
- 公共投資の20%を教育・保健・社会福祉へ振り向ける(初等教育就学率を現在の63%から80%、5歳未満児死亡率を1000あたり142から100、全村落の70%の浄水化等)
- 貧困削減を最重視し、農村開発を最優先(食料の年200万トン生産、焼畑耕作農民中10万戸家族の定着、職業の創出等)
4.援助実績
- (1) 我が国の実績(支出純額、単位:百万ドル)
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有償 |
無償 |
技協 |
合計 |
供与先順位 |
99年(暦年) |
14 |
86 |
32 |
133 |
12位 |
99年(暦年)までの累計 |
13 |
556 |
182 |
750 |
29位 |
- (2) DAC諸国からの実績(支出純額、98年(暦年)、単位:百万ドル)
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二国間総額 |
1位 |
2位 |
3位 |
166 |
日本 86 |
ドイツ 18 |
スウェーデン 12 |
- (3) 国際機関のODA実績(支出純額、98年(暦年)、単位:百万ドル)
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国際機関総額 |
1位 |
2位 |
3位 |
116 |
ADB 64 |
IDA 24 |
EC 14 |
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