はじめに




 我が国の政府開発援助(ODA)は、重要な外交上の手段であり、途上国支援の重要性はますます高くなっています。また、行政改革に関する最近の議論を踏まえて、政府が打ち出す政策に関して、合理的かつ的確な評価を行なうための準備が政府レベルで進められています。こうした「評価」一般に対する期待が高まる中で、ODAに関する評価が我が国のさまざまな分野から注目を集めています。

 また、昨今の厳しい財政状況もあり、日本のODAの意義は何か、日本のODAは効果的・効率的に実施されているか、が改めて問われているのも事実です。量的拡大から質的向上への転換を強く求められ、より一層効果的・効率的な援助実施のための評価の重要性が益々高まっています。国際的にも、評価の役割を重視しようとする流れが強くなっています。納税者たる国民にODAの成果を明らかにしていくとともに、より効果的・効率的なODAの実現に資する評価を行なうことが重要でしょう。さらに、評価結果の情報公開を一層促進し、ODAの透明性を確保するとともに、国民に対するアカウンタビリティ(説明責任)を果たすことも大切です。

 我が国のODA評価システムは、経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)からも高い評価を得ていますが、まだ改善の余地があると思われます。外務省としては、更なるODA評価の改善のために何をなすべきか、経済協力局長の私的諮問機関である援助評価検討部会及びその下に設置された評価研究作業委員会に議論してもらいました。その成果は「『ODA評価体制』の改善に関する報告書」としてまとめられ、2000年3月15日に河野外務大臣に提出されました。

こうした流れのなかで、我が国のODA評価システムの改善のための様々な動きが見られます。今年の報告書では、ODA評価体制の改善に向けての取り組みを紹介しました。一例をあげれば、従来評価の対象とされてきた個別のプロジェクトよりも上位にあたる政策レベルやプログラム・レベルの評価の取組み、事後の評価だけではなく、事前・中間・事後の一貫した評価システムの確立に向けての準備、インターネットを利用した迅速な評価結果の公表です。本報告書では、こうしたODA評価の改善に関する動きを説明するとともに、一年間の評価活動の結果を掲載してODAの成果の分析も行ないました。

 ODAを取り巻く環境も変化しており、ODA評価も「改革期」にあります。本報告書を公表することにより、ODAおよびODA評価の最近の動きに対する理解と支持が深まることに役立つことができれば幸いです。なお、昨年度から総論部分と個別の評価結果からなる各論を分け、分冊化する事により、使いやすい報告書としました。詳細な評価結果については、別冊の各論編を参照していただきたいと思います。また、昨年度から会計検査で指摘されたODA案件への対応についても掲載を開始しましたが、今回、その他問題を有する案件を含め現状やフォローアップについてまとめました。今後も、国民の皆様の関心に応えるように努力していきます。
 今後とも、ODA評価の更なる改善に向けて努力を続けていきますので、本報告書に対するご質問・ご意見等がありましたら是非お聞かせ下さい。
(外務省経済協力局評価室メールアドレス:hyoka-iken@mofa.go.jp

2001年2月

外務省経済協力局長 飯村 豊


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