国連難民高等弁務官事務所(UNHCR:United Nations High Commissioner for Refugees)の概要と実績


  1. 設立及び我が国の協力開始の時期・経緯・目的

    (1) 設立時期:
     1951年1月1日。

    (2) 経緯・目的:
     UNHCRは、1949年第4回国連総会決議によって設置された。高等弁務官は、その権限の範囲にある難民に対して国連の権威の下に国際的保護を提供し、これら難民の自主的帰還又は新しい国の社会への同化(第三国定住、現地定住)を促進することによって難民問題の恒久的解決を図るとともに、緊急時には難民に対して法的、物的両面での保護・救済を与えることを目的とする。また、難民の保護に備え、国際条約(1951年の難民の地位に関する条約、1967年の難民の地位に関する議定書等)の締結及び国際条約の批准(加入)の促進等を実施する。
     我が国の同機関への資金協力は1967年以来行われている。

  2. 事業の仕組み

    (1) 概要

    (イ)対象
     1950年に国連総会にて採択された規定によれば、UNHCRが保護を与える難民とは、人種、宗教、国籍もしくは政治的意見を理由に迫害を受ける恐れがあるため、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者または国籍国の保護を受けることを望まない者をいう。
     また、その後の国連総会決議によって、UNHCRは自主的帰還に対する支援を提供すること(総会決議40/118)、国内避難民への保護・支援についても、事務総長、国連総会の要請等を得て行うこと(総会決議48/116)とされている。
    (ロ)内容
     具体的には、自主的な帰還、避難国における定住、または第三国への再定住を図ることにある。その他、難民の発生を未然に防ぐ予防措置に留意した活動、紛争終了後の復旧・復興への円滑な移行のために支援を行う。

    (2) 審査決定プロセス
     規程に基づき、計画執行委員会(例年10月、ジュネーヴ開催)が翌年の活動計画・予算を討議の上承認する。同委員会は、難民受入国またはドナー国を中心に構成されている(2000年1月時点57か国)。また、常設委員会が年に3回開催され、執行委員会の決議に従い、UNHCRの行う難民の保護、計画、財政問題等を議論している。

    (3) 実施の仕組み
     UNHCR事業計画のうちの一般計画については、執行委員会の決定を受けて実施され、同実施過程には、実施能力を備えるとUNHCRが判断するNGOが実施団体(Implemeting Partners) としてUNHCRから事業実施の委託を受ける方式が確立している。
     他方、特別計画は、緊急を要する事態等に対して、高等弁務官の権限で実施することができる事業であり、執行委員会に対しては事業報告のみで良いとされている。このため、緊急事態に対応して作成される計画については、NGOが実施面のみならず緊急度に応じプロジェクト形成過程から参加し、UNHCR緊急支援活動を支援している。

  3. 最近の活動内容

    (1) 概要

    (イ) 難民を含むUNHCRの支援対象者数:2,238万人(98年)
    2,146万人(99年)
    (ロ) 事業実施規模:973百万ドル(97年)
    841百万ドル(98年)
    (ハ) 職員数及び現地事務所数 118か国に244か所、5,528名(98年7月)
    120か国に274か所、4,436名(99年1月)
    (ニ) 実施委託したNGO数:443(97年)
    506(98年)

    (2) 地域別実績

    (単位:千ドル)
    地 域1997年割合1998年割合
    アジア・太平洋62,1646.3951,2956.10
    中央アジア・中東78,1748.0376,8049.14
    アフリカ429,39544.13328,45839.07
    欧州254,06026.11239,56928.51
    ラテン・アメリカ34,8083.5830,4173.62
    本部関係114,46111.76113,96813.56
    973,066100.00840,511100.00

    (3) 主要な事業

    (単位:千ドル)
    1997年緊急支援支援と維持自発的帰還現地定着再定住行財政支援合計
    アジア・太平洋026,50828,1913,2843723,81062,164
    中央アジア・中東041,88020,73811,8552523,45378,178
    アフリカ4,607167,562195,55344,27068716,716429,395
    欧州4,124194,17915,45730,5487369,017254,060
    ラテン・アメリカ06,7898,03817,33902,64234,808
    本部関係1,65438,61314,61711,8171,46646,294114,461
    合 計10,385475,531282,594119,1133,51381,932973,066
    割合(%)1.0748.8729.0412.240.368.42100.00
    注)事業実施ベースの金額。

    (単位:千ドル)
    1998年緊急支援支援と維持自発的帰還現地定着再定住行財政支援合計
    アジア・太平洋5019,40325,1283,1211413,45251,295
    中央アジア・中東041,81320,8519,7146233,80376,804
    アフリカ12,468126,262131,44542,35471915,210328,458
    欧州8,23778,74260,73082,0708118,979239,569
    ラテン・アメリカ04,0536,26017,71102,39330,417
    本部関係6,36635,5888,94012,5922,23648,246113,968
    合 計27,121305,861253,354167,5624,53082,083840,511
    割合(%)3.2336.3930.1419.930.549.77100.00
    注)事業実施ベースの金額。

  4. 我が国との関係

    (1) 意思決定機関における我が国の位置づけ
     我が国は、難民の保護、救済及び難民問題の恒久的な解決を目的として包括的に取り組んでいるUNHCRの活動を高く評価する立場から、積極的な協力を行ってきている。我が国は、1991年以降、米国に次ぐ第2のドナー国としての財政的貢献を行うとともに、1979年以降、UNHCRの活動計画・予算及び政策を討議・承認する同機関の最高意思決定機関であるである執行委員会(57か国から構成)のメンバーになっている。

    (2) 邦人職員
     UNHCRの長は、初のアジア出身で女性の緒方貞子氏である。UNHCRに勤務する専門職以上の邦人職員は、40名(全体の3.4%。99年末現在)である。

    (3) 我が国の財政負担
     我が国からは、積極的に資金援助を行っている。我が国のUNHCRに対する資金協力は、1998年(暦年)は約1.10億ドル、1999年(暦年)は約1.37億ドルである。全体に占める1999年の我が国の拠出の割合は約15%(米国に次ぎ第2位)。

    (4) 主な使途を明示した特定信託基金への拠出、活用状況
     該当事項なし。

    (5) 我が国ODAとの協調実績
     該当事項なし。

  5. より詳細な情報
(1)書籍等
  • 「GlobalAppeal(UNHCR)」
     UNHCRの年間活動計画の概要について取りまとめている。例年12月に発行している。英語のホームページ(下記)にて入手可能。
  • 「TheStateoftheWorld’sRefugees(UNHCR)」
     上記の日本語版「世界難民白書(UNHCR編読売新聞社発行)」
     難民を取り巻く現状とその課題についてを取りまとめている。原則隔年12月発行。2,700円。
(2)ホームページ
 http://www.unhcr.ch(英語:情報量 が日本語ホームページより多い)
 http://www.unhcr.or.jp(日本語)


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