国連工業開発機関(UNIDO:United Nations Industrial Development Organization)
の概要と実績


  1. 設立及び我が国の協力開始の時期・経緯・目的

    (1) 開始時期
     1966年の国連総会において開発途上国の工業化を促進することを目的として採択された決議に基づき、1967年1月1日、総会の補助機関として発足。

    (2) 経緯・目的
     1985年、UNIDO憲章の発効に同意する旨の通告をした国が80か国以上に達したことにより、1986年1月1日、国連の第16番目の専門機関として独立。
     UNIDO憲章によれば、その目的は、経済に関する新たな国際秩序の確立に資するため、開発途上国における工業開発の促進及び加速を図ることを主要な目的とする。また、世界的、地域的及び国家的規模にて、工業開発及び工業協力を推進することである。

  2. 事業の仕組み

    (1) 概要
     UNIDOは、開発途上国における持続可能な工業開発を促進するために、2年に1度開催される総会で決定される方針に基づき、技術協力活動を実施している。その活動資金は、UNDPやモントリオール基金より供与される資金、工業開発基金(IDF)やトラスト・ファンドに対する加盟国等の任意拠出金により賄われており、97年実績は約9,700万ドル、98年実績は約8,100万ドル。
     ただし、事務局の行政経費(人件費、地域事務所運営費、会議開催費等)は、加盟国の分担金である通常予算によって賄われており、97年は約7,800万ドル、98年は約6,500万ドル。

    (2) 審査・決定プロセス
     UNIDOは、自らノウハウを有する分野について、途上国と協議のうえ開発ニーズを踏まえて国別の全体的なプログラムを策定しており、これに基づき、被援助国政府及びドナー国等との協議を踏まえて、具体的なプロジェクトを確定している。

    (3) 決定後の案件実施の仕組み
     プロジェクト実施に際しては、UNIDO本部において、プロジェクト担当官が任命される。担当官には、予算執行権限が付与されており、責任を持ってプロジェクトの実施にあたる。プロジエクト終了時には、評価が行われ、評価結果は関係者協議(UNIDO、被援助国、ドナー)によって審査される。

  3. 最近の活動内容

    (1) 概要
     「持続可能な工業開発」(Sustainable Industrial Development)を基本原則に掲げて、競争力のある経済の実現、環境保全、雇用促進の3分野を重点目標に定めて援助活動を実施している。具体的には、LDC諸国(特にアフリカ地域)を対象として、中小企業支援や投資促進等に関する政策助言や勧告、標準化や基準・認証等の品質管理に関する助言、省エネルギーやクリーナー・プロダクション等の環境保全に資する技術移転、モントリオール議定書の履行などの活動を実施。

    (2) 地域別実績

     1997年1998年
    実績実績
    アフリカ30.618.5
    アジア・太平洋36.034.8
    ヨーロッパ・NIS諸国8.56.9
    ラテンアメリカ・カリブ諸国6.77.4
    グルーバル・地域間15.613.3
    合 計97.381.1
    (単位:100万ドル)
     LDC諸国を中心に技術援助を実施。

    (3) 主な事業
     1998年に行われた改革により、投資分野の統廃合が行われたため、統計上の分類も変更になっている。

     1997年
    人的資源、民間セクター開発17.4
    農業関連工業8.9
    化学工業21.5
    エンジニアリング・冶金工業22.6
    環境とエネルギー3.0
    投資促進18.9
    その他5.0
    合 計97.3
    (単位:100万ドル)

     1998年
    投資促進14.8
    工業政策・調査1.1
    民間セクター開発7.9
    標準化・基準化2.9
    工業統計1.1
    農業関連工業5.7
    環境関連41.9
    省エネルギー4.2
    その他1.5
    合 計81.1
    (単位:100万ドル)

  4. 我が国との関係

    (1) 意志決定機構における我が国の位置づけ
     我が国は、発足以来工業開発理事会(IDB)のメンバーを務めており、専門機関化後も工業開発理事会(IDB)及び計画予算委員会(PBC)のメンバーとして、UNIDO@4sの政策立案・活動実施面で参加協力してきた。96年の米国脱退後は、最大のドナー国となり、各意志決定機関においても我が国の発言力は大きい。

    (2) 邦人職員  UNIDOの専門職以上の邦人職員は、14名(2000年1月現在.全体の約5%)であり、幹部としては、丸野事務次長兼投資促進・制度的能力開発局長及び滝沢行政管理部長が活躍している。

    (3) 我が国の財政負担

    分担金:98年度約1,430万ドル(分担率 22.15%、第1位)
    99年度約1,430万ドル(分担率 22.15%、第1位)。
    拠出金(信託基金):98年度拠出無し、99年度約83万ドル
    拠出金(工業開発基金):98年度約3億100万円、
    99年度約2億9,500万円

    (4) 主な使途を明示した信託基金への拠出、活用状況

    (イ)信託基金に対する拠出は、主としてアフリカのLDC諸国での工業開発に関するプロジエクトの実施を目的としている。
    (ロ)TICADIIのフォローアップの一環として、民間セクター開発及びアジア・アフリカ協力を中心とする南南協力推進の観点より、アジアからアフリカヘの民間投資を促進するために、マレイシアにアジア・アフリカ投資・技術移転促進センター(通称:ヒッパロスセンター)を設置し、活動を行っている。
    (ハ)工業開発基金に対する拠出は、主として我が国より途上国への投資が促進されることを目的としている。「ASEAN 諸国の標準化・品質管理プロジエクトフエーズII」(約3,200万円)に充てられた外、UNIDO 東京投資・技術移転促進事務所(ITPO) は、右拠出金により運営されており、発展途上国の投資案件の紹介、発展途上国の投資促進ミッシヨンの招聘、セミナーの開催等を実施。

    (5) 我が国ODAとの協調実績
     我が国としては、限られた資金によって我が国の経済協力の効果をより一層高めるために、我が国の任意拠出金により UNIDO が実施する案件について、UNIDO と JICA のマルチ・バイ協力を実現することを目指している。
     98年6月、マガリーニョス事務局長が訪日し、藤田 JICA 総裁と会談した際に、フィールド・レベルで UNIDO と JICA の連携を推進することが確認された。これを受けて、JICA 調査団と UNIDO 事務所との間で、意見交換が実施され、平成11年度には、5つのマルチ・バイ協力プロジェクトが開始された。

  5. より詳細な情報
(1)書籍等
 特になし
(2)ホームページ
 http://www.unido.org

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