一般プロジェクト無償の概要と実績
- 事業の開始の時期・経緯・目的
(1) 開始時期
昭和44年(1969年)より開始された。
(2) 経緯・目的
諸外国や国際機関による援助が我が国の戦後復興において重要な役割を果たした経験を踏まえ、開始された。開発途上国の経済・社会開発、民生の安定と福祉の向上に貢献することを目的としており、医療・保健、教育・研究、農業、民生・環境改善、通信・運輸といった幅広い分野におけるプロジェクト(施設建設や資機材調達等の事業)のために必要な資金の協力を行うものである。
基本的に経済収益性が低く、開発途上国が自己資金あるいは借入れ資金により対応することが比較的困難なもので、住民の生活水準の向上に直結している案件(基礎生活分野)あるいは「人造り」に貢献する案件に対する協力を中心としている。さらに後発開発途上国(LLDC)等については、橋梁や道路建設等基礎インフラ案件についても協力を行っている。
- 事業の仕組み
(1) 概要
被援助国が事業の実施主体となり、我が国から贈与された資金を使用して、プロジェクトに必要な資機材、設備及び役務の調達を行う。我が国政府が資機材、設備等を直接調達して供与するといういわゆる現物供与の援助形態はとっていない。
事業の実施に当たっては、我が国専門家の派遣を始めとする各種技術協力との連携を図る等により、被援助国関係者が技術的に十分習熟し、関連の機材・設備等を有効に活用できるよう図っている。
また最近では、ワクチンや微量栄養素の調達を行う「子供の健康無償」、植林事業を支援する「植林無償」等新たな取り組みも行われている。(2) 審査決定プロセス
一般プロジェクト無償は開発途上国からの援助要請に始まり、我が国政府部内における要請内容・妥当性の検討、調査等を経て援助規模の概算額が算定され、被援助国との交換公文署名により確定される。
開発途上国からの援助要請は、主として我が国在外公館を通じて提出される。
外務省はこうした要請に関して、無償資金協力の妥当性の検討を行う。妥当と考えられる案件については、関係省庁の技術的知見も活用しつつ国際協力事業団(JICA)による基本設計調査等必要に応じて事前の現地調査を行い、妥当性の裏付けを確認するとともに、適正な援助規模の概算額を算定する。右を踏まえて我が国政府部内の調整を行った上で、交換公文を署名する。交換公文の署名は、通常我が国の駐在大使と被援助国政府の権限を有する者との間で行われる。
交換公文においては、プロジェクトの名称、物資・役務の調達内容、調達が日本人(法人)により行われること、供与限度額、供与された資金が適正に使用されるべきことが定められる。(3) 案件実施の仕組み
(イ) 交換公文署名後、被援助国政府(実施機関)は日本の業者との間で契約を結ぶ(契約締結の後、外務省は契約書の認証を行う。)。日本の業者の選定方法は、経済性、効率性及び公平性の観点から、一般競争(入札)を原則としている。
業者はこの契約に基づきプロジェクトに必要となる資機材、設備及び役務の調達を行い、資金は契約履行の進捗に応じて、業者への支払いを可能とするよう指定銀行の被援助国名義口座に払い込まれる。(ロ) 交換公文署名後におけるプロジェクト実施主体は被援助国政府(機関)であるが、プロジェクトにおける施設の建設、資機材の引き渡しが適正、迅速且つ支障なく行われることを確保するため、国際協力事業団(JICA)は、入札、契約締結から建設の完了、資機材の引き渡し等の一連の過程で、被援助国政府及び関連業者に対して適切な助言や斡旋等を行う(実施促進業務)。
プロジェクト実施後は、在外公館は、被援助国政府(機関)より当該プロジェクトの実施状況に関する報告を受け、または現地国際協力事業団(JICA)事務所の協力を受けるなどしてプロジェクトの実施状況をモニターする。
- 最近の活動内容
(1) 概要
平成11年度(1999年度)実績は、実施国数64か国、実施件数163件、供与総額は約1,164億円となっている。平成10年度(1998年度)(182件、約1,238億円)と比較すると、金額にして約5.98%の減少となった。(2) 地域別実績
平成11年度の地域別割合はアジア39.9%、アフリカ25.8%、中南米16.0%、中近東14.1%、大洋州3.0%及び東欧・中央アジア1.3%(金額ベース、以下同じ)。前年度の実績に比べ、アジアでは特にインドシナ諸国の後発開発途上国(LLDC)におけるインフラ案件を重点的に支援していること、中近東ではインフラ案件の実施が進捗したこと等により、それぞれ増加となったほか、平成10年のハリケーン災害からの復興支援等のため中南米が増加した。
一般プロジェクト援助地域別配分(年度別) (単位:億円)(シェア:%) 会計年度
地域平成9年度 平成10年度 平成11年度 件数 金額 シェア 件数 金額 シェア 件数 金額 シェア アジア 62 520.28 39.46% 56 442.63 35.74% 57 464.25 39.87% アフリカ 68 385.66 29.25% 59 376.43 30.40% 51 300.64 25.82% 大洋州 9 58.92 4.47% 14 65.16 5.26% 8 34.47 2.96% 中近東 16 151.42 11.49% 14 107.09 8.65% 13 164.09 14.09% 中南米 24 137.00 10.39% 28 152.77 12.34% 32 185.88 15.96% 東欧・中央アジア 6 65.11 4.94% 11 94.3 7.61% 2 15.13 1.30% 合 計 185 1.318.39 100% 182 1,238.38 100% 163 1,164.46 100%
(注) 一般無償のうち、債務救済、ノンプロ、草の根無償は含まない。 (3) 分野別実績
一般プロジェクト無償を分野別に見ると、民生・環境28.74%、通信・運輸29.21%、医療・保健20.63%、教育・研究16.70%、農林業3.14%、その他1.57%となっているが、第一位の対象分野である民生・環境分野の平成11年度実績は、計46件約334.7億円(同分野の平成10年度実績は、56件334.9億円)となっている。
(注) 一般無償のうち、債務救済無償援助、ノンプロ無償援助、草の根無償援助は含まない。
一般プロジェクト援助分野別配分(年度別) (単位:億円) (シェア:%)
会計年度実績
分野平成9年度 平成10年度 平成11年度 件数 金額 シェア 件数 金額 シェア 件数 金額 シェア 民生・環境 63 406.53 30.84% 56 334.99 27.05% 46 334.71 28.74% 通信・運輸 45 387.49 29.39% 43 383.46 30.96% 41 340.19 29.21% 医療・保険 37 221.28 16.78% 45 259.98 20.99% 41 240.28 2.63% 教育・研究 27 233.71 17.72% 26 188.95 15.26% 24 194.51 16.70% 農林業 12 64.33 4.88% 8 40.61 3.28% 8 36.51 3.14% その他 1 5.05 0.40% 4 30.39 2.45% 3 18.26 1.57% 計 185 1.318.39 100% 182 1238.38 100% 163 1164.46 100%
- より詳細な情報
(1) 書籍等
- 「我が国の政府開発援助ODA白書(外務省経済協力局編(財)国際協力推進協会発行」
ODAを取り巻く最近の議論の動向、日本の援助活動の概要について取りまとめている。例年9月下旬に発行。政府刊行物センター販売。
- 「Japan's Official Development Assistance Annual Report」上記の英語版(内容は要約)。
(2) ホームページ
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/
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