インド(国別援助方針)
- 基本方針
(1)我が国の援助対象国としての位置付け
(イ) インドは、南西アジアにおいて政治・経済上重要な役割を担っており、また我が国と伝統的に友好関係にあること、 (ロ) 人口の3分の1が貧困状態に置かれており援助需要は高いこと、 (ハ) 民主主義の伝統を有し、また、特に91年以降、先進国及び東アジア諸国との関係強化を図りつつ経済自由化、規制緩和に積極的に取り組み、市場指向型経済の推進を図っていること、 等を踏まえ、援助を実施することとしている。
しかしながら、98年5月の核実験実施を受け、我が国はインドに対し核実験及び核兵器開発の中止を強く申し入れるとともに、ODA大綱の原則に鑑み、新規無償資金協力(緊急・人道的性格の援助及び草の根無償を除く)や新規円借款の停止等の措置を講じている。
なお、インドは日本の二国間援助実績(99年までの支出純額累計)で第5位の受け取り国である。(2)我が国の援助の重点分野
我が国は、インドにおける開発の現状、課題及び開発計画等に関する調査・研究並びに95年3月に派遣した経済協力総合調査団及びその後の政策協議等によるインド側との政策対話を踏まえ、以下の分野を援助の重点分野としている。
- (イ)経済インフラ整備
5か年開発計画の優先目標である電力、運輸を中心としたインフラ整備支援を進める。公共投資とともに民間のイニシアティヴを重視するインド政府の方針を尊重し、民間のみでは対応が困難な経済インフラ整備への支援を重視する。
(ロ)貧困対策
インドは人口の3分の1という巨大な貧困層を抱えており、同国の社会セクターへの直接的支援は重要である。具体的には、(1)保健・医療(基礎保健・医療の改善とともに人材育成、安全な飲料水の供給等)、(2)農業・農村開発(人口増に対応した食料自給維持を図るための農業生産性向上、農業インフラ整備等)、(3)人口・エイズ対策、(4)小企業支援(輸出振興及び雇用創出の促進)に対する協力を重視する。
(ハ)環境保全
人口増加等による環境悪化への対応を強化していく。93年に派遣した環境ミッションの政策対話等を踏まえ、特に、公害防止対策、水質改善、水供給、植林、都市環境改善等への協力を推進する。
(3)留意点
- 実施体制の強化・行政手続きの簡素化等援助吸収能力の一層の向上、援助実施の効率化が必要である。
- 多くの貧困層の存在に鑑み、基礎生活分野への協力を更に充実させることが必要である。
(4)ODA大綱の運用状況
従来より我が国はインドに対し、核開発の可能性への内外の懸念を踏まえ、核不拡散に関する二国間協議や援助政策対話等の機会を捉え、また、ヴァジパイ政権成立直後の98年3月には首脳レベルの親書においてインド側の自制を求めてきた。これらの機会においては、インドの核関連政策への我が国の懸念を申し入れるとともに、核不拡散条約(NPT)及び包括的核実験禁止条約(CTBT)への加盟を働きかけてきた。
しかし、98年5月、インドが地下核実験を実施したため、我が国はインドに対し、核実験の即時中止と核兵器開発の早急な停止、及びNPTとCTBTへの早期加盟を求めるとともに、ODA大綱の原則に鑑み、新規無償資金協力の停止(緊急・人道的性格の援助及び草の根無償を除く)、新規円借款の停止、国際開発金融機関による対インド融資への慎重な対応等の措置を決定した。
ヴァジパイ首相は98年9月の国連総会でCTBTに署名する可能性を示唆し、また、99年2月のパキスタンとの首脳会談において「ラホール宣言」を発表する等、パキスタンとの緊張緩和及び信頼醸成への取り組みを進めていた。しかし、99年4月にはインド・パキスタン両国が相次いで中距離弾道ミサイルの発射実験を実施、5~7月にはカシミールのインド側支配地域でのパキスタン側武装勢力との戦闘が発生し、10月のパキスタンの政変、12月のインド航空機ハイジャック事件の発生などもあり、両国の関係改善の見通しは不透明である。我が国は、99年1月の日印次官級政務協議、10月の山本外務政務次官の訪印、11月のシン外務大臣の訪日、本年2月の橋本外交最高顧問(前総理)の訪印、5月の深谷通産大臣の訪印、1月及び6月のフェルナンデス国防大臣の訪日等の機会に、安保理決議1172に基づきCTBTへの署名を中心として具体的な取り組みを引き続き粘り強く申し入れている。
- インド経済の現状と課題
(1)主要経済指標
一人当たりGNP (98年)とGDP成長率
(90-98年平均)実質GDP成長率 440ドル、6.1%
(世銀資料)93年度5.0%、94年度6.7%、95年度7.6%、96年度7.1%、97年度5.8%、98年度4.7%、99年度6.8%
(IMF資料)(2)現状
- 経済自由化・規制緩和等の構造調整の推進により経済は好調を維持し、94年度から96年度までは7%を超える成長率を達成しており、その後も6%前後の成長を続けている。しかし、財政赤字、税制改革等が課題となっており、2000年度予算案は、補助金の見直し、複雑な物品税の簡素化、関税の引き下げ等に重点を置いている。
(3)課題
- 恒常的な財政赤字の改善(税制改革、歳出の質向上、優先度の低い補助金の打ち切り)
- 規制緩和(価格・流通・投資等の統制や金融機関関連規制の撤廃)
- 輸出促進(輸出手続きの改善、輸出関連の管理や制限の撤廃、電力・通信・運輸等のインフラ整備、関税引き下げ、農産物の輸出自由化)
- 投資環境の整備(許認可手続きの簡素化、経済インフラ整備等)
- 貧困対策(上下水道等の公共サービスの最貧困層までの供給、公衆衛生の増進等)
- 民間部門がより効率的な目的を達成できる分野からの政府部門の撤退
- 初等義務教育の普及、技術者・管理者等の人的資源開発
- 開発計画
第9次5か年計画(97/98年度~2001/2002年度)
第9次5か年計画は、98年3月に原案が公表されたが、直後に政権が変わったため、計画の見直しが行われ、99年2月に最終的に決定された。既に経過した2年間を含む期間中の平均GDP実質成長率目標を6.5%としている。(政策目標)
- 国際収支安定化のため輸出を振興
- 政府保有株式の売却を進める
- 農産物の輸出を自由化
- 対外資本取引の自由化には慎重に対処
- 補助金削減のため、公共料金を引き上げる
- 道路整備財源として、ディーゼルへの課税と通行料の徴収を行う
(公共投資計画)
- 前計画に対して投資額を33.2%増
- 優先分野 食料と農業、インフラ整備、保健・教育・住宅・飲料水の供給、情報技術産業の振興、水資源開発
- 援助実績
(1)我が国の実績(支出純額、単位:百万ドル)
有償 無償 技協 合計 供与先順位 99年(暦年) 597 15 22 634 5位 99年(暦年)までの累計 6,256 504 268 7,028 5位 (2)DAC諸国からの実績(支出純額、98年(暦年)、単位:百万ドル)
二国間総額 1位 2位 3位 915 日本 505 英国 187 ドイツ 107 (3)国際機関のODA実績(支出純額、98年(暦年)、単位:百万ドル)
国際機関総額 1位 2位 3位 700 IDA 579 EC 50 UNICEF 30
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