エル・サルヴァドル(国別援助方針)


  1. 基本方針

    (1)我が国の援助対象国としての位置付け

    (イ)エル・サルヴァドルを含む中米地域の安定は、中南米の平和と安定等にとり重要であること、
    (ロ)エル・サルヴァドルは、92年1月内戦終結後和平プロセスを順調に履行し、民主主義の定着及び市場指向型経済の導入に努め、多くの援助需要を有していること、
    (ハ)我が国の経済協力は、エル・サルヴァドルにおいて高い評価を得ており、同国は伝統的な親日国であることに加え、国連等の国際場裡において信頼できるパートナーとなっていること、
    (ニ)98年11月のハリケーン・ミッチによる災害からの復興が引き続き開発上の課題となっていること、

    等を踏まえ、援助を実施する。
     なお、我が国による援助実績は内戦終結後の92年度から大幅に拡大しており、エル・サルヴァドルは、我が国の二国間援助実績(99年までの支出純額累計)において第51位(中南米地域において第11位)である。

    (2)我が国の援助の重点分野

     我が国は、エル・サルヴァドルにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究並びに94年12月に派遣した経済協力総合調査団及びその後の政策協議等によるエル・サルヴァドル側との政策対話を踏まえ、以下を援助の重点項目としている。

    (イ)生産部門活性化に資する分野(運輸・交通、農業生産基盤、エネルギー関連等)

     エル・サルヴァドルでは、潜在能力の大きい生産部門の活性化に資する支援として、また、ハリケーン災害からの復興の観点からも、運輸・交通、農業、エネルギー関連等の経済インフラ整備及び人造り・技術移転が重要である。

    (ロ)社会開発分野(教育、保健・医療)

     エル・サルヴァドルは人口に対し国土が狭く資源も乏しいため人材開発が不可欠であり、初等教育の充実、教員の養成が急務である。また、社会的弱者、貧困層への保健医療サービス提供に向け地域保健医療に力を注ぐ。

    (ハ)環境(上下水道、廃棄物処理)

     持続可能な開発のためには、水資源の有効利用や全国的に深刻な問題となっている汚濁水の処理、大都市の廃棄物処理への協力が重要である。

    (ニ)民主化・経済安定化支援

     我が国は、エル・サルヴァドルに対し民主化と経済安定化のための支援をNGO活動の重要性を念頭に置き、草の根無償の活用及び日米コモン・アジェンダの下での日米協力等として行ってきており、今後とも、協力を継続していく。

    (3)留意点

    • エル・サルヴァドルに対しては、内戦終結後の緊急支援からその後の復興支援へと段階的に援助が強化された一方、同国の経済発展による所得水準の向上を踏まえ、今後は有償資金協力、技術協力を中心とした援助形態に重点を移行していく。
    • 内戦及びハリケーン災害による経済、社会インフラの荒廃が著しいことを踏まえ、他ドナーとの協調も視野に入れつつ各援助分野における案件の優先度を検討する必要がある。
    • 実施体制の強化等、援助の受入れ能力の向上が必要である。

  2. エル・サルヴァドル経済の現状と課題

    (1)主要経済指標

    一人当たりGNP (98年)とGDP成長率
    (90-98年平均)
    実質GDP成長率
    1,850ドル、5.2%
    (世銀資料)
    93年7.4%、94年6.0%、95年6.4%、96年1.8%、97年4.3%、98年3.2%、99年2.0%
    (IMF資料)

    (2)現状

     エル・サルヴァドル政府は反政府派との和平合意以前から自由化を進め、経済活性化に成功しており、マクロ経済も安定している。特に、内戦終結後は戦後の復興需要や直接投資の増加等により順調な経済成長を続け、インフレ率も97年1.9%、98年4.2%と落ち着きをみせている。

    (3)課題

    • 良好なマクロ経済の維持(インフレ率抑制の維持、一層の財政赤字削減、国内貯蓄の増強等)
    • 所得格差の是正、貧困対策、地方開発
    • 輸出の促進と産業再編成
    • 世界経済への参加促進と地域経済統合
    • 経済成長と環境保護の調和
    • 国家諸機構・法制度の一層の近代化

  3. 開発計画

     現在、開発計画等の策定がされていないため、直近の開発計画を参考として記載する。
     経済社会開発計画(1994~1999年)

    (目標)

    • これまでの経済安定化のための努力を継続し、構造改革をさらに深化させ、経済の国際競争力を強化し、雇用の創出を図る

    (主要な政策)

    (1)マクロ経済・財政・金融:経済自由化に伴う国内経済の体制強化、輸出促進、外国投資誘致のための体制整備、徴税機能の強化、財政支出コントロールの強化、生産活動の成長と物価安定に見合う流動性の維持、金融セクターの競争力及び能率強化等
    (2)社会開発:基礎教育の就学率を高める(93年の69.2%から99年に79.1%へ)、農村部での識字率の向上、幼児・妊産婦への保健医療対策、農村部・都市部周辺の居住環境の改善、上下水道普及率の向上、小規模企業の振興等
    (3)経済インフラ:電力サービスの品質及び信頼性の向上、電気通信への民間企業参入奨励、都市及び都市間交通網整備、港湾の近代化、農業の多角化・生産性向上等

  4. 援助実績

    (1)我が国の実績(支出純額、単位:百万ドル)

    有償無償技協合計供与先順位
    99年(暦年)2120115335位
    99年(暦年)までの累計1261945337351位

    (2)DAC諸国からの実績(支出純額、98年(暦年)、単位:百万ドル)

    二国間総額1位2位3位
    154日本 41米国 40ドイツ 20

    (3)国際機関のODA実績(支出純額、98年(暦年)、単位:百万ドル)

    国際機関総額1位2位3位
    25EC 22WFP 5UNDP 2

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