資源開発協力基礎調査事業の概要と実績
- 設立経緯及び根拠・目的
金属鉱業事業団(昭和45年度当時「金属鉱物探鉱促進事業団」)は、発展途上国に限定した技術協力として、資源を保有する発展途上国において非鉄金属資源の有望地域を抽出し、鉱床賦存状況を把握することにより、当該国における資源開発の基礎的データを与え、その結果、将来的に我が国の鉱物資源の安定供給に資することを目的として、昭和45年度から資源開発協力基礎調査事業を実施している。
- 事業の仕組み
(1) 概要
資源開発協力基礎調査は、(1)資源開発調査、(2)鉱物資源広域調査、(3)海洋資源調査、(4)地域開発計画調査(拡充型・従来型)、(5)プロジェクト選定調査等(プロジェクト選定調査:拡充型・従来型、フォローアップ調査:拡充型・従来型・アフターケア型)、(6)事前調査の各調査等から構成され、その概要は次のとおりである。
(1) 資源開発調査
この調査は、鉱物資源賦存の可能性を解明するために行うものであり、地形図作成、地質調査、地化学探査、物理探査、ボーリング調査、坑道調査等予察から精査・評価の段階まで相手国の要請に応じて実施し、その調査の結果から得られた資源開発に関する基礎的調査資料を相手国政府へ提供(報告書の提出)することにより、技術協力の推進を図ろうとするものである。また、調査の実施においては、現地調査及び解析作業を相手国関係機関の技術者と共同で行っており、相手国技術者に対する技術移転と幅広い人材を育成する役割をもっている。(2) 鉱物資源広域調査
この調査は、超広域にわたり鉱物資源賦存のポテンシャル評価と有望鉱床の抽出を行うことを目的として衛星画像解析、地質調査・地化学探査及び物理探査を中心に調査を行うものであり、資源開発調査と比較して、より基礎的な調査である。(3) 海洋資源調査
この調査は、深海底鉱物資源探査専用船「第2白嶺丸」を用いて南太平洋沿岸諸国海域における深海底鉱物資源(マンガン団塊、コバルト・リッチ・クラスト、海底熱水鉱床)の賦存状況等の調査を行うもので、昭和60年度から5カ年計画で実施し、平成7年度から第3次5カ年計画で実施している。(4) 地域開発計画調査
この調査は、資源開発調査等で有望性が認められた地域又は鉱山の(再)開発を行おうとしている地域に対して、鉱山開発又は再開発を進める上で必要なインフラ整備計画の策定に資する情報収集整理、ボーリング調査等による探鉱指針の作成、選鉱試験による選鉱方法の検討等を行い、相手国政府の計画作成に寄与しようとするものである。(5) プロジェクト選定調査等
1) プロジェクト選定調査
資源開発調査等を実施する前段階で行う調査で、相手国関係機関に対して、事前に当該調査の説明を行い相互理解を図るとともに、調査予定地域の予備調査を行い、計画立案に必要な情報収集を行うことを目的として実施するものである。
なお、要請のあった国に対して行う「従来型」と、要請案件の発掘・形成の段階から行う「拡充型」の2種類がある。2) フォローアップ調査
資源開発調査等が終了した地域について相手国政府に対して調査結果の説明を行ったり、その後の相手国政府のフォローアップの状況を調査したり、資源開発協力基礎調査に対する要望を聴取する等を行い、今後の制度の有効的な運用に寄与しようとするものである。
なお、前年度に調査が終了した地域を対象とした2種類(相手国政府が独自で継続調査を行う場合に専門家を派遣し技術指導を行う「拡充型」と単に説明や事情聴取に止まる「従来型」)と、過去に調査が終了した地域を対象とした1種類(有望な鉱床を発見したにもかかわらず、鉱山開発に至っていない有望鉱床の再評価を行う「アフターケア型」)の計3種類がある。(6) 事前調査
資源開発調査、地域開発計画調査等を開始するに当たり、相手国政府と要請内容についての細目を定めるとともに調査計画立案に必要な情報収集調査を実施し、実施計画書(S/W;ScopeofWork)の調印を行うためのものである。(7) 機材供与
各種調査に必要な機材を相手国政府からの要請書に基づき供与する制度で、1件当たり年間5百万円程度で次の調査対象国に供与する。
- 最近の活動内容
(1) 概要
資源を保有する発展途上国の自立的経済発展のためには、その国内の鉱物資源の探鉱開発を積極的に推進することが重要である。しかしながら、発展途上国の多くは、資源開発に必要な探査及び開発の技術力に乏しく、また自力による探鉱開発が不十分であり、我が国に対して資源探査の技術協力を要請している。
このため、資源消費国の我が国としては、これらの資源保有国との協力関係を深めることで鉱物資源の安定供給確保を図るとともに、その経済成長を支援する意味からも積極的に技術協力要請に対応している。
具体的には、相手国政府の要請に基づき、国際協力事業団(JICA)及び金属鉱業事業団(MMAJ)を通じ、既存データ解析、衛星画像調査、地質調査、物理探査、地化学探査、ボーリング調査、坑道調査等により当該国の銅、鉛、亜鉛、金等鉱物資源の有望地域の抽出、地質構造の把握、鉱量評価等を実施。(2) 平成9年度
平成9年度は予算額3,429百万円、実施地域はオマーン国、メキシコ合衆国、アルゼンティン共和国、フィリピン共和国、ウズベキスタン共和国、カザフスタン共和国、キルギス共和国、タイ王国及びマリ共和国を新たに加えた22ヶ国24地域。(3) 平成10年度
平成10年度は2,848百万円、実施地域はサウディ・アラビア王国、ブラジル連邦共和国、ペルー共和国を新たに加えた177国19地域
(平成9年度及び10年度資源開発協力基礎調査事業実施案件一覧) 国名等 地域 対象鉱種 実施年度 中国 揚子地台西縁
騰冲梁河銅
銅・鉛・亜鉛5~10
8~10モンゴル ツァガンツァヒルウール 金 8~9 フィリピン ビコール 銅、金 9~10 ヴェトナム ボークー 金 8~10 フィジー ヴァネアレブ 金 7~9 トルコ エスピーエ 銅、鉛,亜鉛 7~9 オマーン 南バチナコースト 銅、金 9~11 サウディ・アラビア ウム・アド・ダマール 銅・亜鉛・金 10~12 アルバニア シェベニック クロム 7~9 ジンバブエ スネークヘッド 金、銀、プラチナ 7~9 ナミビア オタヴィ・マウンテンランド 銅、鉛、亜鉛 7~9 マリ ケコロ北部 金 7~9 カザフスタン テレクティンスキー
アップリフト銅、鉛、亜鉛、金
モリブデン9~10 ウズベキスタン 南ヌラタウ 金 9~11 キルギス アライ
キチサンディク銅、金
金9~11
9~11メキシコ インマクラーダ・エルオレガノ
インデウノ銅、金 9~11 ホンデュラス サンアントニオ 鉛、亜鉛、銀 8~9 ペルー ウルバンバ川下流 鉱物全般 10~11 エクアドル インバオエステ 銅 8~9 チリ グアナカ・チョルキ
パストスラルゴス銅
銅8~9
8~10アルゼンティン 東部アンデス 鉱物全般 9~10 ブラジル アルタ・フロレスタ 金・銅 10~12 SOPAC ミクロネシア連邦海域
マーシャル諸島共和国
ミクロネシア連邦海域マンガン、コバルト
コバルト、ニッケル、
プラチナ9
10
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