ブラジル(国別援助方針)


  1. 基本方針

    (1)我が国の援助対象国としての位置付け

    (イ)ブラジルは我が国と伝統的友好関係を有しており、特に、中南米の日系人・在留邦人の大部分(約140万人)が集中していること、
    (ロ)中南米地域においてブラジルは政治・経済面で重要な役割を果たしていること、
    (ハ)我が国との間に緊密な経済関係を有すること、
    (ニ)地球的規模の自然環境保護対策が緊急の課題となる中、アマゾン地域等における熱帯林の保全が注目されていること、
    等を踏まえ、援助を実施する。
     なお、ブラジルは、我が国の二国間援助実績(98年までの支出純額累計)において第18位(中南米地域で第2位)であり、ブラジルにとり我が国は第一位(97年)の援助国となっている。

    (2)我が国の援助の重点分野

     我が国は、ブラジルにおける開発の現状と課題、開発計画等に関する調査・研究及び92年3月に派遣した経済協力総合調査団及びその後の政策協議等によるブラジル側との政策対話を踏まえ、以下の分野を援助の重点分野としている。また、96年の両国首脳相互訪問に際しても、経済改革努力支援、南南協力支援を実施していく方針である旨表明している。98年3月の二国間援助協議においては、重点分野とされている格差是正・貧困対策として、これまで比較的開発が遅れていた北部・北東部開発を重視していくことで意見が一致している。

    (イ)環境

     ブラジルにおける環境問題に対しては、アマゾン地域における農牧業等の開発による森林破壊や野生生物の種の減少、北東部における砂漠化といった自然環境問題、さらに、工業化と都市化による大気・水質汚染、廃棄物処理問題等の公害対策などの環境問題対策への支援を中心としつつ、専門家派遣、開発調査の実施等による技術移転を図るとともに、環境関係プロジェクトに対する円借款供与を行っていく。

    (ロ)工業

     ブラジル工業の近代化、国際競争力強化のため、我が国の有する工業技術あるいは品質管理体制や生産性の向上といったノウハウを移転するための協力を行っていく。

    (ハ)農業

     農業分野はGDPの約1割を占めるに過ぎないものの、労働人口の約3割、輸出総額の約3割を占めている。我が国としては、地域の特性・技術レベルに応じた協力を行っていくことが重要であり、品種改良、灌漑技術の普及などによる生産性向上のための農業技術の移転・開発及び地域の所得向上を目指した農業への協力、環境保全に配慮した持続可能な農業、大豆等の農産物の生産増大を目的とするセラード(土壌が強酸性で灌木が散在する半乾燥地域)農業開発計画への協力を行っていく。

    (ニ)格差是正・貧困対策

     ブラジルの持続的成長を将来にわたって確保するため、地域格差、所得格差解消の努力が必要であり、保健・医療、教育等への支援を含め協力を行っていく。

    (3)留意点

    • 所得水準が高いブラジルに対しては、技術協力を主体として協力を実施するが、有償資金協力についても環境問題等に対応し、案件の成熟度、必要性、対外債務状況を勘案しつつ供与を検討する。
    • ブラジルに対しては環境関連分野での協力を重視し、下水処理、河川流域の汚染改善、代替エネルギー開発などの環境プロジェクトに対し、有償資金協力及びプロジェクト方式技術協力等の技術協力を考慮する。

  2. ブラジル経済の現状と課題

    (1)主要経済指標

    一人当たりGNP (97年)と同成長率
    (90-97年平均)
    実質GDP成長率
    4,790ドル、1.9%
    (世銀資料)
    93年5.0%、94年5.7%、95年4.2%、96年3.0%、97年3.0%、98年0.2%
    (ブラジル地理統計院資料)

    (2)現状

     長年高インフレが続いていたが、94年7月のレアル計画導入以降インフレ率は低下し、また、経済開放化政策の進展を背景に海外からの直接投資も堅調に増加している。しかし、アジア経済危機及びロシア通貨危機の影響により急激に外貨準備高が減少し、98年11月にはIMF等から総額415億ドルに上る支援が発表された。また、99年1月のミナス・ジェライス州知事の対連邦債務モラトリアム宣言を契機に変動相場制への移行を余儀なくされたが、その後、同年3月にIMFプログラムが改訂され、為替が落ち着きを取り戻しつつある。

    (3)課題

    • 公共支出削減、年金赤字削減等を柱とする財政調整プログラムによる財政再建
    • インフレの抑制の継続、国際収支均衡の維持
    • 経済の自由・開放化、国内産業保護政策の撤廃等の規制緩和の促進
    • 金融業界、自動車業界等の経営合理化等による失業率増大(98年11月時点で7.0%)への対策
    • 熱帯雨林保護等の自然環境保全や大気汚染をはじめとする公害対策
    • 工業の国際競争力強化、農業における生産性の向上、持続的農業の確立
    • 貧困対策・所得格差の是正、地域間格差の是正、雇用対策

  3. 開発計画

     1996―99年多年度計画

     レアル計画で達成された経済安定化を基礎とし、財政均衡を条件に、経済成長と社会的厚生の向上を達成することを目的とする。

    (主要目標)

    • 財政の均衡
    • 経済成長(GDP成長率で96年4.0%、97年4.5%、98年5.0%、99年5.0%と予測)
    • 国際経済への参加(市場の開放)

  4. 援助実績

    (1)我が国の実績(支出純額、単位:百万ドル)

    有償無償技協合計供与先順位
    98年(暦年)525510612位
    98年(暦年)までの累計53837221,26318位

    (2)DAC諸国からの実績(支出純額、97年(暦年)、単位:百万ドル)

    二国間総額1位2位3位
    193日本 62ドイツ 52フランス 18

    (3)国際機関のODA実績(支出純額、97年(暦年)、単位:百万ドル)

    国際機関総額1位2位3位
    296UNDP 201IDB 33UNICEF 20

BACK / FORWARD / 目次