(5)人材育成と開発研究
開発問題の多様化・高度化により、高度な知識と豊富な経験、外国語でのコミュニケーション能力などを備えた有能な人材の育成と確保、そして開発途上国が何を必要としているかや、国際社会の動きを適切に把握するための研究活動が今まで以上に求められるようになっています。
1990年に国際開発大学構想を推進する機関として設立された(財)国際開発高等教育機構(FASID)(注94)は、援助にかかわる人材を対象とした研修や教育、調査・研究事業、政策研究大学院大学(GRIPS)(注95)と連携した修士課程「国際開発プログラム(IDS)」(注96)等を行ってきました。しかし、2010年5月に行われた公益法人事業仕分けにおいて、FASIDの役割は終了したとの意見が出され、外務省からこの財団に委託してきた上記の事業の廃止が決定しました。その一方で、開発分野の人材育成や調査・研究がとても重要であることには変わりがないことから、外務省がこれらの事業の内容や委託する方法等を根本から見直した上で、事業を実施していくこととなりました。
JICAは、専門的な知識や多様な経験を有する人材を確保してそうした人たちに活躍してもらうため、2003年に「国際協力人材センター」を開設しました。JICAやNGO、国際機関といった国際協力に関する求人情報を提供し、人材の登録、各種研修・セミナー情報の提供、そしてキャリア相談(進路相談)などを行っています。また、国際協力専門員制度により、高い専門的な能力と開発途上国での豊富な業務経験を持つ人材を確保しているほか、ジュニア専門員制度を設け、ある程度の専門性を持ちつつも経験の浅い若い人の育成を目指しています。2008年10月に設立されたJICA研究所は、開発途上国の政府や国際援助のコミュニティへの発信を行いながら、国際的に通用する方法論を用いて、政策について実際の援助経験に基づいた研究を進めています。
注94 :(財)国際開発高等教育機構 FASID:Foundation for Advanced Studies on International Development
注95 : 政策研究大学院大学 GRIPS:National Graduate Institute for Policy Studies
注96 : 国際開発プログラム IDS:International Development Studies