早わかりODA

どうして今ODAなの?

援助は、開発に伴う様々な困難に直面する途上国を手助けするためのものであり、また、環境や感染症など地球全体の問題を解決するためのものですが、援助を行うのは日本自身のためでもあります。しかし、東日本大震災を経験し、そこからの復興に取り組む中で、私たちにとって政府開発援助(ODA)がなぜ今必要かという議論があります。こうした議論について、世界における日本のODAの現状をまじえ、あなたの疑問にお答えします。


1.日本は震災もあって、どうして今ODAなのでしょうか、ODAよりも他に国内でやるべきことがあるのではないでしょうか。

東日本大震災に際して、日本は途上国を含め世界163の国・地域から支援の申し入れをいただき、私たちは援助を受ける側の立場に身を置くという経験をしました。そのことで、日本が世界の国々との関係の中で生きていることを改めて実感しました。国際社会の仲間同士困っている者を助けることは、信頼される国であるためにも重要なことです。途上国の抱える貧困や病気、清潔な水といった開発に関する問題や紛争などは、先進国を含めた世界の国々が力を合わせなければ解決できません。

また、感染症や地球温暖化など、他の国や地域の問題だと手をこまねいていると、日本をはじめ世界全体に悪影響を及ぼす問題があります。国際社会の一員として、こうした地球全体の問題解決に努めることが必要です。

加えて、世界各国と持ちつ持たれつの関係にある日本にとって、経済成長の著しい途上国との経済関係を深めながら、途上国のみならず日本の経済成長を後押しするための手段としてもODAは大きな力になります。たとえば、ODAによって港や輸送路などが整えられれば、日本の企業が進出しやすくなったり、日本との貿易が盛んになったりして、日本のビジネスにとっての機会が増します。同時に、目先のことばかりでなく、長い目で考えることも大切です。たとえば、アフリカ諸国への支援が日本の国益に直接結びつくとは限りません。しかし、その地域が安定し、人々が安心して生活を送れるようになれば、日本製品を買えるほど経済力をつけることになるかもしれません。ワクチン配布等により衛生状態を改善することを通じ、子どもたちが健康に育つことで、日本の進出企業にとって貴重な労働力につながることもあるでしょう。途上国の平和や経済発展を支援することは、日本の安全や繁栄を守るのに役立つことになるのです。こう考えていくと、日本と途上国との間を結んでいるODAがどんなに重要かがわかっていただけるのではないでしょうか。

カンボジア、プノンペン市で新設された水道の蛇口に集まる子どもたち(写真提供:今村健志朗/JICA)

カンボジア、プノンペン市で新設された水道の蛇口に集まる子どもたち(写真提供:今村健志朗/JICA)

検診の順番を待つ母と子(写真提供:レイモンド ウィルキンソン/JICA)

検診の順番を待つ母と子(写真提供:レイモンド ウィルキンソン/JICA)


2.日本の途上国に対する援助は世界の中で現在どの程度なのですか。

2010年の日本の政府開発援助(ODA)(支出純額)は約110億ドルです。これは、米、英、ドイツ、フランスに次ぐ第5位。日本は1990年代に世界第1位の援助国(1991-2000年)でしたが、その後、厳しい経済財政状況の中、次第に減ってきています(下のグラフ参照)。

主要援助国のODA実績比較


額で世界第5位とはいえ、国の経済規模に応じた貢献の度合いを示す援助額の国民総所得(GNI)比ではDAC(OECD開発援助委員会、主要援助国の集まり)のメンバー23か国中の第20位でしかありません(日本は0.20%下のグラフ参照)。日本より下位はギリシャ、イタリア、韓国の3か国のみです。国連で決定した先進国の共通目標はGNI比0.7%です。国際社会における日本の経済力や地位からすると、日本からの援助についてはより大きな期待があります。主要援助国ODA実績の対国民総所得(GNI)比


3.経済状況が厳しいのは日本だけではありません。他の先進国のODAに対する取組はどうなっているのでしょうか。

厳しい経済状況にかかわらず、ODAを増額している国もあります。たとえば、英国は、政府が歳出削減に取り組む中で、2010年のODAは2割も増えています。フランスも厳しい財政状況の中にありますが、ODAは増額傾向です。ドイツも増額していますし、オーストラリアは、2005年から2010年の5年でODAを倍増しました。2010年にDACの正式メンバーとなった韓国は、2009年0.1%の援助額のGNI比を2015年までに0.25%とすることを目標に掲げています。

厳しい経済状況の中でもこれらの国が援助を増やしている背景として、欧米等の多くの国では、途上国、とりわけ貧困問題が深刻な国々に対して国民の関心が高く、ODAについて国民の間に広く強い支持があるということがあります。先進国がODAを減らさないのは、先進国にとって、途上国が平和で安定し、発展していくことが、自らの安定や繁栄につながっているという認識が浸透しているからだと思われます。どの国もODAは国際的な責任であるとともに、外交の重要な手段であるという考え方に立って実施しています。また、最近では、援助はその国のイメージ向上などに役立つといわれることもあります。