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[3]技術協力プロジェクト
1.事業の開始時期・経緯・目的
開始時期
 1957年「プロジェクト方式技術協力」として開始。その後2002年度より「技術協力プロジェクト」として再構築を行う。
目 的
 従来、途上国の人づくりを中心とする事業目的の達成のため、専門家派遣、研修員受入、機材供与の3つの投入を、ひとつの協力事業(プロジェクト)として有機的に組み合わせながら一定期間実施するプロジェクト方式技術協力が行われていた。
 近年、途上国のニーズが従来にも増して多様化している状況を踏まえ、日本はこれまで以上に限られた資源を有効に活用し、成果重視の技術協力を行うことを目的として、専門家派遣、研修員受入、機材供与等の投入要素の組み合わせや投入規模、協力期間を事業の目標・成果に応じて柔軟に選択できる技術協力プロジェクトを導入した。これにより相手国政府の広範なニーズに応じることがより容易となっている。

2.事業の仕組み
概 要
 技術協力プロジェクトは、途上国の事業実施能力の確立をめざして、調査計画の段階から、実施、評価に至るまで技術移転を行いながら、一定期間事業運営に関する協力を行い、協力終了後は途上国の運営に引き継がれていくものである。
 プロジェクトでは、経済的自立発展、ベーシック・ヒューマン・ニーズの充足のための人づくり協力が中心となっているが、近年では、人づくりの基礎となる教育、感染症、人口・エイズ、女性の社会参加、環境等の地球規模の課題への協力にも重点をおいている。また、これらの協力には、相手国に適した技術開発、訓練、普及のための技術指導のみならず、移転された技術が確実に定着して、日本の協力終了後も相手国で独自にプロジェクトを実施していく自立的発展のための必要な組織、制度づくりも含まれている。
 このため、プロジェクトの投入の中で重要な位置を占めるのが専門家派遣である。事業の実施に必要な技術やノウハウは、日本から派遣される専門家から相手国のプロジェクトの運営を担う管理者、技術者(カウンターパート)に移転されるが、この場合、効果的な技術移転のために、お互いの文化、社会について相互理解を深め合うとともに、日本の技術をもとに現地に適合した技術を移転するといった視点を大切にしている。
 近年の途上国のニーズの多様化に合わせて、民間・NGOに知識やノウハウが蓄積されていると考えられる分野については民間から、またかつて日本の技術移転により、ある程度の技術力を備えた人材を第三国専門家として、派遣することもある。
 研修員受入も技術移転の重要な投入要素であるが、これは、国または民間の研究機関、病院、試験場などで研修を行い、技術レベルの向上を図るものである。日本での研修は、特定の技術だけではなく、これを生み支えている社会・文化を理解できるような機会を提供している。また、日本の協力によって技術力を蓄えた国の機関等で周辺国の人材に対する研修を行い(第三国研修)、技術普及の効率化に努めている。
 ほかにも必要に応じて機材の供与や施設整備等の補助を行っている。
審査・決定プロセス
 途上国の開発の現状、先方の要請内容・意図を踏まえ、外務省が関係省庁とともに検討のうえ、実施案件を決定する。要請背景等、案件審査のための情報が不足している場合は、必要に応じて事前調査等の予備的調査がJICAによって実施され、さらに案件実施の可否について検討が行われる。
決定後の案件実施の仕組み
 協力実施が決定された後は、相手国に通報して実施のための国際約束を結ぶ。その後、JICAが派遣する実施協議調査団またはJICA在外事務所と相手国関係機関が案件実施のための詳細な計画について協議を行い、その内容をまとめて討議議事録(R/D:Record of Discussions)を作成し、協力の大枠を決定する。

3.最近の活動内容
概 要
 2003年度の実績は、実施国数65か国、実施件数299件であった。
主要な事業
(1) 社会開発分野では、運輸交通、海運、電気通信、上下水道などの社会基盤に関する技術訓練分野、職業訓練や初中等教育、高等教育などの教育分野、地震や洪水対策などの防災分野、並びに環境、貧困対策など地球規模の課題に関する分野など、多方面にわたる人材育成を行っており、41か国において108件の協力事業を実施している。その例としては次のようなものがある。
インドネシア   市民警察活動促進(行政)
タイ       アジア太平洋障害者センター(福祉)
カンボジア    理数科教育改善計画(教育)
トルコ      海事教育向上(技術訓練)
ケニア及び周辺国 アフリカ人づくり拠点(貧困)
ルーマニア    地震災害軽減計画(防災)
(2) 保健医療分野では、地域における母子保健サービスの向上(家族計画を含む)や健康教育、風土病の予防等の活動への協力、ポリオ、結核、エイズ、マラリア、寄生虫症対策などの感染症対策、女性の役割を尊重し女性の社会参加を目指したWIDの理念や女性の性と生殖に関する健康と権利を尊重したリプロダクティブ・ヘルスの概念を取り入れた協力、医療従事者の人材育成、ウイルス等に関する基礎研究への協力、医療サービスの改善などに取り組んでおり、32か国において50件を実施している。その協力例としては次のようなものがある。
ドミニカ共和国 医学教育(人材育成)
ニカラグア   グラナダ地域保健強化(地域保健)
ベトナム    バックマイ病院(医療サービス)
タイ      国際寄生虫対策アジアセンター(感染症/寄生虫)
インドネシア  母と子の健康手帳(母子保健)
ザンビア    エイズ及び結核対策(感染症/エイズ・結核)
ホンジュラス  第7保健地域リプロダクティブ・ヘルス向上(人口・リプロダクティブ・ヘルス)
ガーナ     野口記念医学研究所感染症対策(基礎研究協力)
(3) 農業・畜産協力分野では、途上国に適した技術の大学や試験場での研究・開発、技術の農家への普及、農村振興に取り組んでおり、食糧の増産、農民の所得や生活の向上、環境に目を向けた持続的農業の実現を目指している。これらの協力は、現在、30か国において62件を実施している。
 その協力の例としては、次のようなものがある。
エルサルバドル 農業技術開発普及強化計画(農業技術開発・普及)
チリ      住民参加型農村改善保全計画(農業環境保全・農村振興)
ザンビア    孤立地域参加型農村開発計画(貧困軽減)
タイ及び周辺国 家畜疾病防除計画(広域協力)
(4) 自然環境保全協力分野については、人類の生存基盤であるかけがえのない自然資源の持続可能な利用と保全を、次世代のために私たちが今すぐ取り組まねばならない国際協力の重要な一分野ととらえている。2002年度は29か国で46件の協力を実施していた。
 その協力例としては次のようなものがある。
中国      四川省森林造成モデル計画
パナマ     運河流域保全計画
ラオス     養殖改善普及計画
モロッコ    零細漁業改良普及システム整備計画
マレーシア   ボルネオ生物多様性・生態系保全
(5) 鉱工業開発協力
 鉱工業分野では、中小地場産業、裾野産業の振興から、基幹産業、鉱業の支援まで、幅広い分野で協力を展開している。近年は、途上国における工業化の進展に対応して、工業標準、計量標準、工業所有権などの産業面での制度整備や、企業管理、品質管理、生産性向上などの横断的な管理技術、IT人材育成などの技術に協力範囲が及んでいる。さらには環境、エネルギー問題への対応などグローバル・イシューに関する協力も実施しており、19か国において33件を実施している。
 その協力例としては、次のようなものがある。
タイ      国家計量標準機関(フェーズI)
インドネシア  地方貿易研修・振興センター
スリランカ   情報技術分野人材育成計画
中国      鉄鋼業環境保護技術向上
イラン     省エネルギー推進

分野別・地域別実施件数の推移

表

4.より詳細な情報
書籍等
「国際協力機構年報 同資料編(国際協力機構編著)」等。
ホームページ
http://www.jica.go.jp


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