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5 主な関係機関の概要と実績

(1)独立行政法人 国際協力機構(JICA)

1.事業の開始時期・経緯・目的
開始時期及び経緯
 独立行政法人国際協力機構(Japan International Cooperation Agency。以下「JICA」)は、国際協力事業団(1974年8月に設立)の業務を引き継ぎ、政府ベースの技術協力等を実施する機関として、独立行政法人国際協力機構法に基づき2003年10月に設立された。
目 的
 開発途上地域に対する技術協力の実施、無償資金協力の実施の促進、開発途上地域の住民を対象とする国民等の協力活動の促進に必要な業務等を行い、これらの地域等の経済及び社会の発展または復興に寄与し、国際協力の促進に資することを目的とする。

2.事業の仕組み
概 要
(1) JICAは、政府の定める方針の下、技術協力(研修員受入、青年招へい、専門家派遣、技術協力プロジェクト、開発調査、援助効率促進等)、無償資金協力の実施促進、開発協力、青年海外協力隊派遣等の各種事業を実施している。(詳細はそれぞれの事業の概要説明を参照のこと)。
(2) 技術協力は、開発途上国の国づくりの基礎となる「人づくり」を目的とする援助であり、150か国以上の開発途上国を対象に実施している。日本の技術や知見を相手国の当該分野で指導的な役割を担う人々(技術協力の「カウンターパート」)に伝える。カウンターパートを通じてその技術が当該開発途上国の国内に広く普及することにより、当該国の経済・社会発展に寄与することとなる。現在、技術協力は、保健医療・飲料水の確保等の基礎生活分野からコンピューター技術や法律・制度の整備等の先端技術やソフト面の協力を含む幅広い分野に及んでいる。
(3) 無償資金協力業務について、資金の供与(支払い業務)は日本政府(外務省)が直接行っているが、JICAでは無償資金協力業務のうち、一般無償、水産無償、食糧増産援助、食糧援助、留学生無償、研究支援無償の6形態について、適切且つ円滑に進めるための業務を行っている。具体的には施設の建設及び資機材の調達を行うために必要な基本設計の調査団の派遣、無償資金協力がスムーズに行われるための調査、斡旋、連絡等の業務や援助プロジェクトのフォローアップのための調査等を行っている。(詳細は無償資金協力の概要説明を参照のこと。)
(4) その他、海外での大規模な自然災害が発生した場合の援助である国際緊急援助隊業務や、日本の青年男女が、途上国で現地の人々と生活を共にしながら経済・社会の発展に協力する青年海外協力隊事業、経済・社会基盤の整備を中心とした公共的な開発計画を目的とする調査、或いはそのような計画の基礎となる基礎的情報の整備のための調査を行う開発調査事業等を行っている。
審査・決定プロセス
 開発途上国政府から在外公館を通じ要請された案件の採択については外務省が行っている。JICAにおいては、要請案件に関し、先方政府の開発政策(重点課題)との整合性、優先順位、緊急性、技術水準の適正度、期待される成果等を考慮し、要請された各案件の妥当性につき検討し、JICAとしての見解を外務省に提出している。
 近年、JICAでは、案件の発掘・形成の段階から、情報収集や各国の有する課題の分析に努め、相手国政府との対話を通じ、具体的な協力案件をつくり上げる取組を開始している。
決定後の案件実施の仕組み
 開発途上国政府からの要請に対しては、外務省から在外公館を通じ、日本政府の採択結果を通報し、採択案件については、JICAが各事業形態ごとに必要となる手続きを進めている。

3.最近の活動内容
概 要
 2003年度予算におけるJICA事業実施に係る交付金は対前年度比3.6%減の1,640億1,000万円である。交付金のうち事業費は2.9%減の1,383億9,000万円、管理費は3.1%減の256億1,000万円となっている。
地域別実績



JICA事業における新たな取組
 2003年10月1日、JICAは30年近い国際協力事業団としての歴史を閉じ、独立行政法人国際協力機構として新たに設立された。
 このスタートを機に、JICAは、[1]成果重視・効率性、[2]透明性・説明責任、[3]国民参加、[4]平和構築支援の4つの柱を重点に自己改革を進めている。具体的な取組みは以下のとおり。
(1)成果重視・効率性
 現在、国際社会においてミレニアム開発目標(MDGs)に代表される開発途上国の特定の課題(教育、感染症、環境など)の解決に向けた協調が大きな流れとなっており、また、国内でもより戦略的なODAの必要性が強調されている。
 このような中、「国別・課題別アプローチ」の重要性がこれまで以上に高まっており、JICAは、独立行政法人化を機に、これを強化することを通じ成果重視の事業運営を図るため、現在次のような改革を進めている。
 (実施体制)
 ・在外事務所の実施体制強化
 ・本部の地域部体制の見直し
 ・課題別の体制の強化
 (事業実施方法)
 ・専門家派遣、研修員受入などの実施形態を柔軟に組み合わせ、被援助国の開発課題の解決に最も効果的な成果重視の事業を展開する。
 ・NGOを含む民間の活力、創意、ノウハウがより一層活かされるよう、広範な層から適格な人材を選定する方式や、プロジェクトの実施を一括して委託する方式などを拡充する。
 また、成果重視と並んで効率性の向上についても、JICAは取組を強化してきているが、独立行政法人化に伴い、事業の質の維持・向上に努めつつ、具体的な数値目標を掲げながら、更なる効率化を推し進めていく。具体的には、1)専門家派遣等の単位あたりコストの削減や2)組織内の意思決定プロセスや調達・会計制度の見直しによる事務処理の簡素化・迅速化等を進めている。
(2)透明性・説明責任
 JICAは、その事業の多くが開発途上国で行われており、国民の目に触れにくいことから、積極的な情報公開に努めてきている。具体的には、現在、[1]すべての実施中のプロジェクトにかかる基本情報、[2]技術協力プロジェクトなど個別案件を対象に行う事前・終了時・事後の全評価結果要約表、[3]調査研究報告書全文、[4]各種事業実績や契約情報など、幅広い情報をホームページなどを通じて情報提供している。
 JICAにおいては、「経営をガラス張りにする」方針の下、評価結果の記述方法や公表時期など各種情報の提供のあり方に関する見直しや、ホームページの全面的な改訂を行い、より迅速かつわかりやすい情報の提供の実現へ向けて注力している。
(3)国民参加
 JICAにおいては各種事業における国民各層の参加の機会を増やしていくとともに、草の根技術協力や青年海外協力隊派遣事業などの国民参加型事業をより積極的に推進する。
 (イ)草の根技術協力事業
 2002年度、JICAは従来のNGO等との連携事業の代表的存在であった開発パートナー事業や小規模開発パートナー事業等を発展的に解消し、「草の根技術協力事業」を発足させた。この事業は、国民各層からの提案に基づき人員の派遣や受入などを行うものである。JICAにおいては、法律上、青年海外協力隊やシニア海外ボランティアなどとあわせて「国民等の協力活動」を助長・促進する業務として実施している。
 (ロ)青年海外協力隊派遣事業、シニア海外ボランティア事業
 青年海外協力隊派遣事業、シニア海外ボランティア事業については、独立行政法人化を機に、国民、ボランティア、受入国それぞれのニーズにより確実に応えつつ、同時に効果や効率性の一層の向上を図っている。具体的には、短期派遣ボランティアの拡充や新たな分野・職種の開拓などといった参加メニューの多様化などを含む事業の改革を検討している。
(4)平和構築支援
 昨今、アフガニスタンやイラクをはじめ、多くの紛争が発生し、また、終息していく中、平和の定着や国づくりといった平和構築支援分野におけるODAの活用に対して国内外の期待がこれまで以上に高まっている。
 これまでもJICAは、開発援助機関としての経験や知見を活用しながら、カンボジア、東ティモール、アフガニスタンなどでこの分野の協力を進めてきた。JICAにおいては、これをより積極的に進めていく方針であり、そのために必要な体制・制度の強化を図っている。独立行政法人国際協力機構法においても、このような方針を明らかにする観点から、JICAの設立目的として、開発途上地域等の「経済及び社会の発展または復興」に寄与することが規定された。
 (イ)人材育成・確保の強化
 平和構築支援分野において、十分な専門性を有する人材は未だ多くなく、JICAがこの分野における協力をより積極的に進めていくに際し、人材育成・確保の強化は大きな課題の1つとなっている。
 そのため、JICAでは、2003年5月、この分野でのキャリアパスを念頭においた人材育成・確保に関する基本計画を策定した。現在、これに基づき、NGO等の外部人材のより広い参加を得て、国際機関を含む外部の研修も活用しながら、平和構築支援に関する研修を拡充している。同時に、「国際協力人材センター」を通じ、平和構築分野を含む人材の登録を促進していく予定である。
 (ロ)安全対策の強化
 平和構築支援分野における協力においては、対象国の治安状況が依然として不安定かつ流動的なことが多く、通常の協力を行う場合に比べ、関係者の安全に対する配慮がより強く求められる。
 そこでJICAでは、安全対策調査団の拡充、国際機関との連携の促進、安全管理対応マニュアルの整備、安全管理研修の充実などを通じ、安全関連情報の収集・分析能力や危機管理・緊急事態への即応体制を強化している。

4.より詳細な情報
書籍等
 「国際協力事業団年報(国際協力事業団編)」ODA及びJICAを取り巻く最近の状況と、JICAが実施する技術協力等の事業の実績を取りまとめている。例年10月上旬に発行。
ホームページ
 http://www.jica.go.jp/


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