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13.EU(欧州連合)

(1)援助政策等
EU(欧州連合)はEU加盟各国による二国間援助に加え、欧州共同体(EC:European Community)としても援助を実施している。
ECは、人権・民主主義・法の支配及び良き統治の促進を不可分一体とする、持続可能で、公平かつ参加的な人材・社会開発を共同体の開発政策の基本原則としている。そして主要政策目的を貧困の削減及び終局的なその撲滅におき、その目的のためには持続可能な経済・社会・環境開発への支持、途上国の漸進的な世界経済への統合の促進、不平等と戦う決意が必要としている(2000年11月開かれたEU閣僚理事会(開発)で出された閣僚理事会・欧州委員会共同ステートメント)。その上で、(イ)貿易と開発のリンク、(ロ)地域統合と協力への支援、(ハ)貧困削減戦略に直接リンクしたマクロ経済政策への支援、(ニ)運輸、(ホ)食料安全保障と持続可能な農村開発、(ヘ)グッド・ガバナンス及び法の支配を中心とした制度の強化の6分野を重点分野としている。
EUのODA総額(支出純額べース)は、2000年にはEU加盟国全体で252億7,700万米ドルとDACメンバーのODA総額全体の半分近くを占め、このうちECによるODA総額も49億1,200万米ドル(DAC報告ベース)で、日、米、独に次ぐ規模である。

(2)各地域への援助
(イ)アフリカ・カリブ・太平洋(ACP)諸国(77か国)に対する援助
EUは伝統的に加盟国の旧植民地諸国に対する援助を重視してきている。ACP諸国に対する援助の基本的枠組みは2000年6月、EUと77のACP諸国との間で署名されたコトヌ協定である。同協定は 1975年以来EUとACP諸国間の協力を規定してきたロメ協定の後継として、両者間の協力、貿易及び政治的対話の枠組みを規定している。コトヌ協定は2000年から2020年を対象とし、政治的対話の重視、市民社会その他の民間部門の参加促進、開発戦力において貧困削減に一層の焦点を当てること、新たな貿易の枠組みの形成、財政的協力の改革を柱に据えている。
資金協力については、本協定の下で設置された第9次欧州開発基金(EDF、EC一般予算とは別途EU 加盟国が拠出、対象期間は2000年から2007年)については、長期開発のための無償資金援助と投資ファシリティ(欧州投資銀行が管理する民間部門に対する投資ファシリティ)という2つの手段を通じて援助が行われ、規模は前者が113億ユーロ、後者が22億ユーロ。EDFに加えて、欧州投資銀行は独自の財源より17億ドルをACP向け貸付分として保留している(2000-2005年)。
また、貿易についてはACPを地域の経済的統合と貿易を通じた開発を促進するため、WTO協定と整合する新たな経済パートナーシップ協定の2008年発効を目指し、2002年9月に交渉が開始された。
EC一般予算及びEDFからの2001年の援助額(約束額べ一ス)は、総額で97億2,891万ユーロ(ODAと中・東欧向けの合計)なのに対し、ACP諸国全体で20億5,600万ユーロ、うちサハラ以南のアフリカ諸国に対しては17億1,904万ユーロとなっている。
(ロ)アジア
現行のアジア地域の多年度援助計画は2002年から2004年を対象としている。2001年の援助額(約束額べース)は、3億7,830万ユーロ。
(ハ)ラテン・アメリカ
現行のラテン・アメリカ地域への多年度援助計画は2002年から2006年を対象としている。2001年の援助額(約束べース)は、2億1,767万ユーロ。
(ニ)地中海・中東
1995年発表された欧州-地中海パートナーシップ(Euro-Mediterranean partnership)の下でのMEDAプログラムを中心に援助が行われている。現行の多年度援助計画は2002年から2004年を対象。2001年の援助額(約束額べース)は、8億5,780万ユーロ。
(ホ)東欧・中央アジア
NIS諸国(旧ソ連12か国)及びモンゴルについては、技術支援スキームであるTACISを中心に、2001年の援助額(約束額べース)は4億2,350万ユーロ。現行の多年度援助計画は2002年から2004年を対象としている。
南東欧諸国については、1999年始まった安定化・連合プロセスの下で援助を実施している。南東欧諸国の再建・開発・安定化のための主要なECの援助スキームであるCARDSによる2001年の援助額(約束額べ一ス)は7億9,618万ユーロ。
また、新規EU加盟候補国(中東欧10か国)に対する援助は、PHARE(加盟のために必要な組織構築や規則インフラの整備への支援)、ISPA(運輸及び環境分野での支援)及びSAPARD(農業及び農村開発分野での支援)の3つのプログラムからなる支援枠組みに基づき行われている。2000年から 2006年までの7年間については中期財政枠組みにより支援の上限が総計で218億4千万ユーロに設定されている。2001年の支援額(約束額べース)は、PHAREが16億5,069万ユーロ、ISPAは11億2,118万ユーロ、SAPARDは5億4千万ユーロである。

(3)人道援助
人道援助はEC通常予算を主な財源として欧州委員会人道支援事務局(ECHO:European Commission's Humanitarian Aid Office)が実施している。2001年のECHOによる援助額は5億4,370万ユーロである。このうちACP諸国が人道援助の最大の被援助国で、援助額は1億7,330万ユーロ(全体の35%)に上る。

(4)援助実施体制

(イ)欧州委員会が主にECの援助プログラムを運営・実施しているが、複数の総局が関与している。
(a) 政策レベル(政治的方向性及び複数年計画を被援助国と交渉しながら策定)
 (i)開発総局(ニールソン欧州委員が担当)
  コトヌ協定に責任を有し、ACP諸国との対外関係や経済協力を担当。
 (ii)対外関係総局(パッテン欧州委員が担当)
  NIS、地中海諸国、中東、ラテン・アメリカ及びほとんどのアジア諸国との関係や人権・民主化関連予算を担当。
(b) 援助実施レベル:欧州援助・協力事務局(Europe Aid Cooperation Office)
援助体制の機構改革の一環として2001年1月に新たに発足。5名の欧州委員(注)で構成される理事会が監督し、開発総局、対外関係総局が策定する国毎の複数年援助計画に沿って、プロジェクトの特定・策定から、予算策定、プロジェクトの実施・モニタリング・事後評価に至る援助実施の一連の周期を一括して受け持つ。
(c) その他の総局としては、人道援助を担当する欧州委員会人道支援事務局(ECHO)(ニールソン欧州委員が担当)、EU加盟候補国への支援を担当する拡大総局(フェアホイゲン欧州委員が担当)、第三国経済の監視やマクロ経済支援を担当する経済・金融総局(ソルベス欧州委員が担当)がある。
(d) 2000年5月欧州委員会が発表した計画に基づき、ECでは対外援助運営に関する改革が進められている。改革の主要目的は、(i)援助計画の質の向上、(ii)援助実施のための時間の短縮、(iii)財政上・技術上・契約上の運営手続が国際的な最高水準に適合することの確保、(iv)EU対外援助の影響・可視性の向上としている。その一環として、上記の欧州援助・協力事務局の設置に加え、国別援助計画の策定、援助計画の一貫性や高い質を確保するための総局横断的な質支援グループ(Quality Support Group)の設置、援助の評価・監視の強化などを進めている。更に、欧州援助・協力事務局は、2003年末までに援助運営の権限・責任を現場のEC代表部に委譲することを進めている(2001年は21の代表部に、2002年は26の代表部に、2003年は残り31の代表部に権限を委譲する計画)。
(ロ)欧州投資銀行(EIB:European Investment Bank)
1958年、EC設立条約に基づき、その金融活動を通じて欧州の統合とECの後進地域の経済開発に資する投資を促進することを目的に設立された融資機関。EUの開発援助・協力政策の一環として、加盟候補国、バルカン諸国、地中海諸国、ACP諸国、アジア諸国、ラテン・アメリカ諸国等EU域外への融資も行っている。2001年の融資額(契約べース)は域外国向けが29億3,300万ユーロである。EIBの所有者は同行の資本を拠出しているEU加盟国。EIBは融資の資金源として資本市場から債券等発行を通じ調達している。また、上記の通り、ACP諸国に対してEDFからの融資を管理・運営している。

(1)ODA上位10か国




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