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資料編 > 第3章 > 第3節 > 2.主な国際機関の概要と実績 > [11]国連開発計画(UNDP:United Nations Development Programme)


[11]国連開発計画(UNDP:United Nations Development Programme)

1.設立及び我が国の協力開始の時期・経緯・目的
開始時期
66年1月1日発足。我が国の同機関への資金協力は66年以来行われている。
経緯・目的
UNDPは、国連システムにおける技術協力活動を推進する中核的資金供与機関として、65年の第20回国連総会決議2029に基づき、それまでの「国連特別基金」及び「拡大技術援助計画」が統合されて設立された。
その任務は、国連憲章第55条の理念に基づき1961年から10年ごとに国連総会で採択される「国連開発の10年」(現在は2001~2010年の第5次)の開発戦略を指針にして、開発途上国及び市場経済移行国における持続可能な開発の実現を多角的に援助することにある。
また、UNDPは国連総会が設立した「国連資本開発基金(UNCDF)」「国連女性開発基金(UNIFEM)」等の基金や「国連ボランティア計画(UNV)」の管理も行っている。

2.事業の仕組み
概 要
UNDPは、開発途上国、市場経済移行国または地域を対象として技術協力の国別計画、地域計画、及びグローバルな計画を策定し、同計画に基づき受益国等からの要請に応じて専門家派遣、技術者の研修、機材供与のための資金を供給している。
その活動資金は、各国からの任意拠出によって賄われている。2001年の拠出金総合計(コア・ファンド、トラスト・ファンド等)は、約21億ドルであり、そのうちコア・ファンドは6億5,000万ドルである。
審査・決定プロセス
UNDPでは、各国からの拠出金(コア・ファンド)見込み額を基に、原則3年ごとに向こう3年間の国別援助割当額を定め、これをもとに各国にあるUNDP常駐事務所が中心になって、援助の重点分野や主要プログラムの概要を示した国別協力計画を策定する。その上で、被援助国政府および他のドナー国等との協議を踏まえて具体的なプロジェクトを確定している。
決定後の案件実施の仕組み
UNDP自身は、技術協力のための資金供与機関であるので、実際に事業を実施するのは、通常途上国政府機関が当たっている。

3.最近の活動内容
概 要
94年以降、「持続可能な人間開発」(Sustainable Human Development)を基本原則に掲げ、この原則の下、貧困削減、グッド・ガバナンスの確立、エネルギーと環境、危機予防と復旧、情報通信技術及びHIV/AIDSの6分野に重点を置いて援助活動を行っており、その中でも特に貧困削減を最重要課題としている。
また、国連開発グループの中核として、近年は地雷除去活動等、紛争後の開発問題にも積極的に取り組んでいる。
地域別実績
UNDPは、上記の通り貧困削減を最重要課題としており、コア・ファンド総額の90%を一人当たり国民所得が900ドル以下の途上国、特にアフリカ諸国支援に割り当てている。


分野別実績
2001年のUNDPの分野別事業実績は、支出額ベースで以下の通り。



4.我が国との関係
意思決定機構における我が国の位置づけ
我が国はUNDPの広範なネットワークとその専門的知識・経験に基づく中立的援助を評価するとの立場から、積極的な協力を行うとともに、UNDPの設立以来執行理事会のメンバーとして政策立案に参画してきた。我が国の拠出額(コア・ファンド)は常に上位にあり、最高意思決定機関である執行理事会においても、主要ドナー国である我が国の発言は理事会決議に大きく反映されている。
邦人職員
UNDPの専門職以上の邦人職員は、59名(2002年1月現在)である。
我が国の財政負担(暦年ベース)
我が国からは積極的に資金援助を行っている。UNDPのコア・ファンドへの拠出は、2001年度は9,600万ドル、2002年度は8,677万ドル、全コア・ファンドに占める2001年の我が国の拠出の割合は14.7%、2002年は同12.9%である(2002年はプレッジ・ベース)。

主要拠出国一覧


主な使途を明示した特定基金への拠出、活用状況
86年、我が国は途上国の人的資源開発を目的として、UNDPに「人造り基金」(Human Resources Development Fund)を設け、2002年度までに累計約7,200万ドルを拠出しているほか、96年度からは、南南協力を推進するために、使途を特に南南協力に限る基金を追加拠出している。2002年度においては、人造り基金に総額710万ドル(内350万ドルが南南協力)を拠出した。
95年には、我が国は途上国の女性支援を目的として、UNDPに「WID基金」を設置し、2002年度までに累計で約1,651万ドルを拠出している。2002年度においては、WID基金に200万ドルを拠出した。
また、中東和平プロセスを支援するために、西岸・ガザ地区の民政の安定と開発に資することを目的に設立された日本・パレスチナ開発基金に93年以降累計で1億ドル以上(2001年は約785万ドル)を拠出してきている。
更に、2001年UNDPが設置した「開発のための情報通信技術信託基金」に同年度500万ドルを拠出した。
我が国ODAとの協調実績
限られた援助資金を効果的かつ効率的に執行するとの観点から我が国はUNDPとの援助協調にも積極的に取り組んでおり、人造り基金等においては、UNDPという国際機関を通じた援助であっても、我が国の二国間援助とうまく組み合わせることなどにより、相互の補完性及び援助の効率を高め、併せて日本の顔がよく見えるような形で援助が行われるよう努めている。
大洋州のキリバス共和国に我が国は二国間援助で太陽光発電システムを供与したが、その管理運営の技術訓練はUNDPが人造り基金を使って実施したほか、パキスタンでは、ラワルピンディ市のゴミ処理改善計画に対し、我が国が無償資金協力援助でゴミ処理車やゴミ収集用ダンプを供与し、UNDP側が同地域の衛生環境改善に向けて組織・制度作りを支援した。フィリピンでは現在、固形廃棄物処理事業や女性の職業訓練の分野でJICAの技術協力とUNDPとの連携事業が進みつつある。

5.より詳細な情報
書籍等
●UNDPが毎年発表する「Human Development Report」(人間開発報告書)(Oxford University Press発行)
ホームページ
 http://www.undp.org



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