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巻 頭 言
今日、ODAは、国内外の様々な課題に直面しております。
国際的には近年、特に米国における同時多発テロ事件後、開発問題の重要性が大いに高まっています。また、国連にて採択された「ミレニアム開発目標」の実現も、一層重視されつつあります。この背景には、グローバル化の進展により大きな恩恵を受けている国がある一方で、私たちには想像もできないような悲惨な貧困や紛争の中にある人々が依然として大勢いること、また、貧困がテロの温床となりうることに、国際社会が危機感を強めている現実があります。特に、昨年は、欧米諸国が相次いでODA予算の大胆な拡充を発表すると共に、G8サミットやヨハネスブルグ・サミットといった首脳レベルの国際会議においても、開発問題が主要な議題の一つとして大きく取り上げられました。
国内に目を転じれば、長引く厳しい経済不況と財政状況の悪化の中で、ODAに対する国民の皆さまの理解を得る必要性が一層高まっています。私は、昨年2月の外務大臣就任以来、透明性、効率性、国民参加をキーワードにODA改革に精力的に取り組むと共にODAの戦略性を高めるべく努めてきました。今後とも、外務省としては、こうした取組を継続すると共に、外務省が中心となってODA関係府省の連携を強めつつ、アジア、平和構築(平和の定着と国づくり)、「人間の安全保障」に重点的にODAを実施していくこととしています。
今年のODA白書は、「戦略」と「改革」を主要なテーマに、こうしたわが国ODAの取組を解説しました。その中で、私が昨年12月に発表した政府開発援助大綱(ODA大綱)の見直しも含めて、わが国ODAの将来の方向性についても、できるだけ詳しく説明するように心がけました。本書が、途上国の開発問題とわが国ODAに対する国民の皆さまの理解を深める上で少しでもお役に立つことができれば幸いです。
2003年4月
外 務 大 臣
川 口 順 子