資料編 > 第3章 > 第1節 > 8 文化無償の概要と実績
75年度予算より、76年の閣議決定に基づき開始された。
開発途上国の多くは、社会の経済的発展のみならず、その国固有の文化の維持・振興に対する関心も高く、文化面を含む広い視野からバランスのとれた国家開発をおこなう努力がなされている。こうした努力に対し、我が国としてもその国と協力しながら、伝統文化や文化遺産の保存、芸術・教育活動等への支援を行っている。このような国際文化協力において、文化無償協力は重要な柱の一つとなっている。
文化無償協力は、文化財・文化遺産の保存活用、文化に係る公演及び展示事業等の開催、教育・研究振興等に使用される資機材の購入のための資金を贈与することにより、開発途上国の文化、教育の発展を支援するとともに、我が国とこれら諸国との文化交流を促進し、友好関係及び相互理解を増進させることを目的として開始された。
供与限度額は、1件につき5千万円であり、被供与国の文化・教育の振興のために使用される「資機材」並びにそれらの輸送及び据え付けのために必要とされる「役務」を購入するための資金を供与する。施設等の建設・修復や、セミナーやプロジェクトの運営費、人件費等の経費は対象としていない。
対象国は、世銀融資ガイドラインに基づき、グループIVまでの国(2000年度の場合、98年の一人当たりGNPが5,280米ドル以下の国)としている。
対象機関は、相手国政府機関ないし公共の機関あるいは団体としている。国際機関や民間の機関、個人は対象としていない。
相手国政府のとりまとめ省庁より我が国大使館に要請が行われ、大使館は優良案件につき本省に送付する。本省ではこれらの中から事前調査の対象とする案件を決定し、調査(現地調査と国内調査がある)の結果を基に実施につき検討する。実施決定となった場合、相手国政府との間で交換公文を締結する。
交換公文締結後、一般競争入札を行い、機材調達業者を選定する。調達業者は相手被供与機関との間で機材調達契約を締結し、外務省の認証後、業者が機材を調達する。機材の現地到着後、引き渡しを行う。
2000年度までに124か国・地域に対して、合計1,073件、総額439億5,140万円の文化無償協力を実施してきている。91年度に東欧各国を対象に加えてから、その後中央アジア諸国、バルト諸国、ウクライナ、南アフリカ、キューバなどを新たな対象国としている。
件数、並びに金額ベースの割合で見た場合、99年度は、中南米諸国にそれぞれ27.6%、27.5%、アジア諸国(中央アジア及びコーカサスを含む)にそれぞれ25.9%、26.8%、東欧、バルト三国等にそれぞれ15.5%、17.7%、アフリカ諸国にそれぞれ15.5%、13.5%、中東諸国にそれぞれ10.3%、10.4%、大洋州諸国にそれぞれ5.2%、4.2%を実施した(総額23億円)。
2000年度では、アジア諸国(中央アジア及びコーカサスを含む)にそれぞれ27.5%、27.8%、東欧、バルト三国等にそれぞれ23.5%、24.8%、中南米諸国にそれぞれ23.5%、24.0%、アフリカ諸国にそれぞれ13.7%、13.6%、中東諸国にそれぞれ11.8%、9.8%を実施した(総額21億2,800万円)。
2000年度はマリ、モルドバ、マケドニアに初めて文化無償協力を実施した。
2000年度に実施した案件としては、ベトナムのハノイ貿易大学に対するLL機材(4,020万円)、パナマの運河博物館に対する視聴覚機材(4,850万円)、マダガスカルのマダガスカル高等師範学校に対する体育器材(4,180万円)、アゼルバイジャンのアゼルバイジャン国立交響楽団に対する楽器(4,650万円)、ルーマニアのルーマニア国立歴史博物館に対する調査・保存・修復機材(4,240万円)などがある。