パキスタン・イスラム共和国 Islamic Republic of Pakistan

モニターからの意見・感想:

5. コハットトンネル建設計画(I)~(III)(有償資金協力)

視察プロジェクト概要
実施年度
供与限度額
被供与団体等
(I)平成6年度 (II)平成13年度 (III)平成14年度
交換公文署名日 (I)平成6年11月13日 (II)平成13年7月24日
(III)平成15年1月24日
借款契約調印日 (I)平成6年11月22日 (II)平成13年7月30日
(III)平成15年2月4日
(I)54.37億円 (II)40.32億円 (III)31.49億円
(I)~(III)合計 約126億円
国道公団 イメージ
実施目的
必要性
 本事業実施地区である北西辺境州は、隣接するパンジャブ州及び南部のシンド州とは国道5号線及び国道55号線で結ばれている。同州の州都ペシャワールを起点とする国道55号線は、同州の主要都市であるコハット、バヌー等を通過し、1,200km離れたシンド州の州都カラチに達するパキスタン南北を結ぶ基幹道路である。円借款事業である「インダス・ハイウェイ建設事業」により同国道の拡幅・改良工事を進めてきたが、ペシャワールとその南方65kmのコハットとの間に位置するコハット峠はその急峻な地形から拡幅・改良が困難なため未改修のままとなっていた。
 現国道55号線のコハット峠通過部分は急勾配、急カーブが続き幅員も不十分なため、通行のネックとなっているだけでなく交通事故も頻発している。このためコハット峠はインダス・ハイウェイのボトルネックとなり、インダス・ハイウェイの基幹道路としての効果発現の障害となっていた。
 本事業はコハット峠の代替ルートとして新たにトンネル及びアプローチ道路を建設することにより、交通状態の改善を図るとともに、併せて国道55号線の基幹道路としての機能を発揮させるものである。
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事業概要
下記建設事業
トンネル(全長1,885m、幅員7.3m)
アプローチ道路(全長28.745km、幅員7.3m)
コンサルティングサービス(調達・施行監理及び完成後の運営管理支援)
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効果
 パキスタンの主要国道であるインダスハイウェイのボトルネックとなっているコハット峠の代替ルートを確保し、交通状態の改善を図るとともに、基幹道路としてのインダスハイウェイの機能を発揮させることにより、貧困率が高い北西辺境州の社会的・経済的発展を促し、パキスタン国土の均衡ある発展に寄与することが期待される。
 また、隣接するアフガニスタンとの流通状況が改善することになり、アフガニスタン復興支援にも資することが期待される。
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モニターからの意見・感想
江口 栄司
 「フレンドシップトンネル」、パキスタンの山岳地帯の道路にそう名付けられたトンネルがあり、その文字の両側にパキスタンと日本の国旗が添え付けてある。このことをどれくらいの日本人が知っているのだろうか。そういう私も全く知らなかった。しかし現地の人は、「知らない人はいないのではないか」という反応であり、このODA案件が現地の生活に溶け込み、大いに役立っていることが実感できた。大きな目的のための国策ともいえるプロジェクトだが、一般市民も喜んでいたことは素晴らしいことだ。地域間格差も激しいパキスタンでは、こういった事業により、徐々に間接的に資源・人材の流動化を図ることは、十分に納得のいく施策だと感じた。126億円もの巨額を投じたプロジェクトだが、先方管理で採算は取れているし、周囲の環境や今後を考えると一見過剰とも言える管理体制も納得出来る。「たかがトンネルに…」などといきなり捉えるのではなく、その国や地域のことを知ることが必要だ。
石津 藤好
 管理室に並ぶたくさんの計器類を見学しながら、何と近代的な設備を備えたトンネルなんだろうと驚いた。
 ここコハットトンネルは、社会経済上においては重要であると感じさせられた。それは、時間の短縮だけでなく、物流の促進・勤務地の拡大・北西辺境州の経済発展を促し、ひいてはパキスタン国土の発展に寄与し得るものであると確信する。
 また、工事は日本の建設会社が施行管理を行い現地の人が作業したことから、雇用拡大にもつながりCO2等の環境面での配慮からも日本企業への信頼が高まったとのこと。このトンネルがフレンドリートンネルとして一層両国の絆を深めていくことを願っている。
広田 初美
 最初見たときは、あまりの完成度の高さに驚いてしまった。トンネルの計画、建設、維持全てにいたるまで、大成建設がかかわったそうだが、日本のトンネルよりも立派なんじゃないかと思ってしまったぐらいだ。コハットが、地域一帯の経済活動に多大な影響を与える重要なトンネルであることは十分承知だが、同等の役割を果たせるもっと簡易なトンネルが低コストで建設できたのではないかとも思ってしまう。しかしながら、最高のものをと言うパキスタン政府からの要請のもと考案された建設物なので、その期待には十分に見合う援助だったはずである。日本の建設技術に対する評価の高まりとともに、これからインフラ整備の要請はふえていくであろう。
北原 和人
 目的地に向かって道路を走っていると、途中から路面の感覚が明らかに変わるのを感じた。後で聞いた説明で、そこが今回の事業で実施したアクセス道路と聞き、この建設で危険だった峠道も安全に通行できるようになったと聞き、これなら利用者に喜んでもらえるだろうと実感した。また安全施設面でもガードレールを設置したり管理センターのモニターで24時間監視するなどの通常管理に加え、維持補修については、日常茶飯事の過積載にも耐え得るような施工をしたりと、基幹道路であることを十分意識した対応が感じられた。輸送手段の主力を道路に頼るパキスタンにとって国内輸送の柱になるとともに、技術面においても安全面においても国土開発に貢献する先例になりうる案件であった。
飯塚 弘一
 コハット・トンネルを視察してみて、まず感じたのはトンネルが立派なことである。裏を返せば、過剰投資とも受け取れるほどであった。しかし、この事業はパキスタン側からの要請に基づいたもので、この地域のインフラ整備に掛けるパキスタン政府の期待の現れといえる。日本でも当初過剰投資とみなされ世界の三馬鹿工事と揶揄された新幹線が、その後の経済発展に大きく寄与したのと同様に、数十年後に経済発展のシンボリックなものとして評価される可能性は十分にあると思う。このODAの事業の成果は、長期的な目でモニタリングする必要があると感じた。
 それでも、現地の人の「このトンネルが完成するのを心待ちにしていた」という言葉に触れこの事業に対して日本国民として誇りを感じた。
佐藤 創
 日本国内の高速道路を走行しているかのような錯覚を受ける程綺麗な道路、そしてトンネル。管制室では10台以上のモニターがトンネル内を映し出す。「過剰投資」と捉えられても仕方がない位豪華なトンネルであった。
 「この案件をどう評価したら良いのか?」利用者数や事故の減数、短縮時間など数字として表れる効果で評価すれば簡単なのであろう。しかし私は、この案件がもたらす効果はそれだけではないと考える。利用者達が触れる先進諸国の安全対策や、建設に携わった現地の作業員達が得たノウハウなど、これら数字としては表れにくい効果が今後、パキスタンでどう化けるのか。そこを含めた上で評価をしたら、新しい景色が見えるのかもしれない。
渡辺 康英
 トンネルの土木構造物、トンネル内の安全施設が日本のトンネルと同等であったことや、トンネルの管理体制に労力をかけていたことが印象的だった。また、日本人技術者が中心となり、現地の材料・労働力を使い、トンネル施工という高度な技術をパキスタン人へ伝えたので、今後パキスタン人が自立しトンネル施工できる日が来るのを待ち望みたい。
 利用者側も国家側もトンネル開通によってメリットを感じているとのありがたい話を伺ったが、供用開始何年後においても引き続き、経済に波及する効果・利用者への効果・供給者への効果等の視点から、パキスタンの人々に重要な社会資本だと認識されているかを確認すべく効果測定をしていくことが重要だと思った。
鈴木 美佳子
 今回視察したコハットトンネルの周りには険しい、とても人間が超えられるとは思えない山々がそびえたっていた。まず山々を貫通させた日本の技術力に素直に驚いた。そしてそのトンネルにフレンドシップトンネルと名づけ、切手にしたパキスタン側の感謝が印象的な案件だった。現在ではそのトンネルを使って昔は行けなかった土地にも出稼ぎに行くことも可能になったという。またこのトンネルで日本の技術力への信頼が増し、インフラ整備などへの要望が増えたという。このように日本の高い技術力を使う、他国と差異化を図った援助をすることは日本の存在感を深めることにも繋がり、非常に有効だと思った。
鈴木 愛香
 デコボコ道の多いパキスタンにおいて、非常に鋪装が良く、管理システムの整っているこのトンネルには驚かされた。何も説明を受けずただ見ただけでは、有償とは言え何と巨額な資金を使って他とはバランスのとりにくいトンネルを造ったのだろうと思ったはずだ。しかし、建設段階では事業を請け負った日本企業が、パキスタン人と共に行い技術移転がなされ、完成後はパキスタン側が中心となりトンネルの管理が行われているという。私は専門家ではないので、どの程度のトンネルが適切なのかはわからない。しかし、安全なものを造る事が大前提であり、重要な事だと思う。大切にしながらも、実際に現地の人達が使用していることがうれしかった。
中野 真希
 トンネルへと向かう道、目を瞑っていたとしても、ここまではパキスタンの道路、ここからは日本の技術で造られた道路と言い当てることができたと思う。それほどバスの中からでも、道の滑らかさに違いがあった。友情トンネルとも名付けられたこのトンネルの入口を見れば、日本の援助で造られたことは一目瞭然である。トンネルが出来たことで事故も減り、時間の短縮もできるようになり、成果は確実に出ていると感じた。けれど、パキスタン側の要請で、日本の設備でもなされないような、最高水準の設備で造られた点には、要請といえどもそこまでする必要はあったのか、何か他に使うべきところがあったんではないかと疑問が残った。
津村 樹理
 “FRIENDSHIP TUNNEL”とパキスタン・日本の両国旗に狭まれた看板が印象的なこのトンネルは、決して名ばかりではないと感じた。日本企業を中心に行われた事業だが、工事材料は現地の物を使い、アドバイザーとして十人弱の日本人が入り、実際の工事は現地の人が行うという、建設事業だけではなく技術伝授も行われた。トンネルには排気ガス濃度計器、監視モニター、前後の道路にはガードレール、防音壁、崩岩ネットまで付いていたのには驚いた。過剰な支援なのではないのかとも考えたが、相手国に求められる以上、日本の責任とプライドをもって行った事がパキスタン側にも高く評価された事を知った。又、高い技術も評価され、今現在は必要以上と思われる事でも伝えられた技術や人の姿は、今後のパキスタンに活かされる事だろう。そして「トンネルが完成する事を心待ちにしていた」「日本の協力がある事を知っている」「安全で便利になった」等の利用者の声からも、両国の関係や日本のODAの意味が見出せるように思えた。
松岡 仁志
 当然かもしれないが、日本のトンネルをリアルに再現したものだと思った。コントロール室のたくさんのモニターや照明等や、トンネル内の硫黄酸化物のチェックができる等、日本でもトップ水準の装備がなされていたようだった。大成建設が建設から管理まで指導していることを知り、話を聞きながら、有用性と今後も引き続きこのトンネルが活用されていくことを強く感じた。このトンネルにかける国の熱い思いも伝わってきた。
土井 幸弘
 アフガニスタンとの国境に近い地域に住む部族の中には、中央政府に従わないものもあって、バスの前後には銃を持った警備車両が数台付いていた。ペシャワールの埃の中を抜けると、美しい山並みが見えてきた。いいところである。小さな集落もあって、住んでみたくなるような場所だ。
 コハット・トンネルに近づくと日本の高速道路のような道に入った。トンネル自体は2km弱だが、アプローチ道路が30km弱ある。できれば、もう少し、パキスタンの文化らしさを残して造ってもらいたかった。あのトラックのような、けばけばしい装飾でもあれば、それはまた気分の違うものであったかもしれない。パキスタンにはトンネルが少ないと聞くので、機能一辺倒でないものも造っていただくことを期待したい。
多田羅 幸代
 「フレンドシップ・トンネル」と名付けられたこのトンネルは、パキスタン政府の要請で、日本の最高水準の施工技を駆使し、派遣された4人の日本人が現地の人を指揮して作り上げたトンネルである。工事の途中、アメリカのアフガニスタンに対する攻撃などで、176日間に渡って工事が中断された。しかし、日本とパキスタン双方の関係者の努力と工夫により、3ヶ月間も工事短縮をして、完成することができた。全長約2キロメートルのトンネルは、常時コントロール室の20個のモニターや各種計測器で管理され、維持のためにも十分な人員が充てられている。日本から見ると過剰かとも思われる徹底した管理体制であるのだが、このトンネルはアフガニスタン国境からわずか60キロメートルの所に在り、貧困層も多い北西辺境州の部族地域に位置している。そしてパキスタンの経済発展の要であるインダスハイウェイの重点地区でもある。ここの視察には、私達にも多くの銃を持った警察官の警備があった。この国の国情には、日本の尺度では測れないものを感じた。
大沼 洋子
 トンネルに入る前の道路から、ガードレールや路肩のラインが整備され、日本の田舎の国道を走っている気分になった。トンネル内もライトがつき、県境を通っている感じがした。資金と技術を提供するだけでなく、その地域の人的物的資源を使い社会資本を整備することにより、その国の人々が技術を身に付け、労働の対価をもらい生活を向上させることにもなるという作ったことによる相乗効果が感じられるいい一例を見せてもらった。また、その後専門家として道路公団の方が派遣されその維持管理に協力していること、整った道路が快適であるという体験から、他の道路も同様に路肩やガードレールを整備し始めていることを伺い、資金と共に、人の協力があっての社会資本の整備なのだと思った。なおこの視察は、国境に近いことからマイクロバスの前後に数台ずつの車と警察官の警備という配慮の中で行われ緊張感があった。
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