フィリピン共和国 Republic of the Philippines
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12. フィリピン海上保安人材育成(技術協力プロジェクト)
視察プロジェクト概要
12. フィリピン海上保安人材育成(技術協力プロジェクト) 群島国家フィリピンの周辺海域では、毎年多数の海難事故が発生し、貴重な人命・財産が失われているが、海難救助体制が整備されていないため、死亡者・行方不明者数が極めて多い。また大型タンカーの油流出事故による環境汚染や、海賊行為や薬物の洋上取引等の違法行為も多発しており、沿岸警備隊(Philippine Coast Guard)の対処能力の強化が急務となっている。
 しかし、海軍の一部隊であった沿岸警備隊は、1998年に運輸通信省傘下の機関として海難事故防止・救助活動、海上防災活動、海上犯罪警備活動に従事することとなったものの、職員全員が軍出身者であり、新しい任務を適切に遂行できる知識と技能を有していない。
 このため、フィリピン沿岸警備隊の業務遂行能力が向上するように、人材の育成を早急に進める技術協力プロジェクトが実施されている。
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モニターからの意見・感想
亀田 義憲(団長)
 最後に視察したこの案件は純粋な海事面での技術協力であり、船舶や機材はむしろ豪州その他の国からの援助を受けている由。
 沿岸警備に関する対処法等のソフト面では全面的に日本の海上保安庁方式が採用されているが、図らずも私達モニター団員自身が如何に日本の海上保安教育が充実しているかを知らしめられることになった。
 フィリピン近辺の海上には地政的に見ても重要な海域であり、非力に思えるフィリピン・コーストガードのレベル向上を目指しての技術協力は、我が国の安全にとっても大いに有益な選択であると思う。
 説明によれば、指導・鍛錬の過程で両国の文化差が浮上し見解の相違も見られるとのことであったが、やはり日本方式にあまりにも拘泥することは排けなければならないと思う。
 杞憂に過ぎないと思われるが、日本の優秀な佐官・尉官が多数着任することにより、本国の指導体制に空洞化現象が起こることの無いようにお願いしたい。
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平井 秀治(副団長)
 フィリピンは日本と同様に、多くの島を持つ国である。沿岸警備は国の大切な業務の一つである。にもかかわらず、長いことそのような任務は海軍が担っていた。
 しかし、環境汚染対処能力や海難事故防止・救助活動、犯罪警備活動等の業務は、軍で補足できる範囲のものではない。どうしてもこれらに従事する専門家の育成が必要となる。
 この必要に積極的に応えた日本の海上保安庁は、当地で人材の育成に力を尽くしている。
 このプロジェクトに関わる日本人スタッフのひとりは、文化の相違から生じる摩擦がないわけではないが、「当地の文化や考え方を尊重しながらも自分達の力で業務遂行する能力を高めさせたい」と協力目的を強調。
 フィリピン人のプロジェクト責任者は、「日本人スタッフは厳しいか」の問いに「そういうことはない」と笑い、「もっと長くいて指導して欲しいんだ」と答える。この口調と表情に日本の支援が役立っていることを再認識することができた。
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藤岡 麻実
 「五年後に何が残るか、何が残せるか?」を常に考え、人を育てる支援をしている。
 しかし国民性の違いに一番苦労しているようである。フィリピンでは、警察であっても日本にある様な信頼はない。公共の利益、公正な立場、国民に奉仕するという認識をフィリピンの保安人材にもたせることから始まるようだ。
 当たり前の様なこの意識改革教育はとても難しく担当職員の方の悩み、苦労は多いようであった。けれども何とかやっていこうという現場の熱意と意識の高さを感じた。
 今ではフィリピン全土から希望者が来るようになり、生徒たちの意識も少しずつではあるが高くなってきているそうだ。
 教育の一環として日本の自衛隊と合同実習をしたりもしている。ここで仲良くなり、信頼関係を築くことは、将来、幹部となったときに、真の意味での意思疎通が図りやすくなるのではないだろうか。それが、日本・フィリピン間のお互いの発展につながると思う。
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原 義智
 ここでは日本の海上保安庁の方々が指導員をされていたが、日本人とフィリピン人では気質が異なるらしく、指導法にかなりの忍耐と苦労が窺えた。例えば、フィリピン人に怒鳴るのはタブーらしいし、5分前行動どころか時間を守るという概念がないらしい。本案件はあと残り3年と時間も限られている。まだフィリピン人のアドバイザーが不足しているとの事で、今後が心配である。
 しかし、潜水訓練設備やパソコンなどの教材は充実していた。また、空手や合気道なども取り入れ、日本風の教育が行われていた。なお、この案件は日比合同のプロジェクトとし、お互いに意見交換会も実施している。押付けではない技術協力が行われていた。
 フィリピン近海は日本のシーレーンとしても重要であり、原油の90%が、この海運ルートを通って日本にやってくる。なかなか直接お目にかかれない技術協力であるが、両国の経済的発展のためにも非常に重要な案件である。と同時に、フィリピン人の意識改革が必要であると感じた。
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中田 あけみ
 「日本の海上保安庁が指導に入って、何が変わりましたか?」
 「以前は仕事に集中できなかったが、今はきちんと仕事のことだけを考えられるようになりました」と若い警備隊員が話してくれた。
 技術を教えるどころか、1からの改善が必要だった。
 「人材育成、人を育てることが一番難しい」と聞いてはいたが、まさにその通りである。まずは人として信頼を獲得し、フィリピンにあった指導でなければならない。決して「おしつけ」であってはいけないのだ。
 ここで訓練を受ける警備隊の訓練期間は6ヶ月と短く、充分とはいえない。まだまだ沿岸を警備するための問題は山積みだ。その中で多くの人材が立派な沿岸警備隊として成長する事を願い、情熱を注いでいる職員の皆様に感動した。
 このプロジェクトは近い未来、指導した訓練生が、職員と同じ「志」でやがて引き継がれていくだろう。そして、大きな成果を上げるに違いないし、そうであって欲しいと思う。
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佐藤 菜穂子
 約7千の島からなるフィリピンでは、海運水産・観光が基幹産業である。しかし、海難事故や海賊、環境汚染などの問題は深刻であり、沿岸警備の能力向上が急がれている。
 海上保安庁より派遣されている3人の専門家は、ここで海上保安の人材育成に取り組んでいた。その際、日本式の文化を押しつけないようにするため、フィリピン人自身の手で育成のカリキュラムを作成できるよう配慮していると伺った。
 人材を育成するための訓練期間は、日本では4年半、一方フィリピンでは6ヶ月である。技術が充分に身に付かないまま、海上保安の活動にあたっているのが現状であるが、それでも隊員の技術や意識は徐々に向上しているときき安心した。
 フィリピン近海における安全な通行性の確保は、ひいては日本のためにもなる。専門家の方々の努力が実り、フィリピン人自身による教育の成果が現れるよう期待している。
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伊東 理恵
 人それぞれの使命。その人でないとできないことがある。その使命の場だからこそ1人1人が輝き、成長がある。選ばれし、優秀な4人の専門家。彼らは文化の違いを乗り越えて、相互理解に努めながら異国の発展のために現地に滞在し、現実の中で1人を大切に、ともに汗を流す。前例がなく、何もわからない中で手探りで始めた苦労は計り知れないものがあるのだろう。その中で自分たちのペースで物事を運べばやりやすいかもしれない。しかし彼らはそうはしない。異文化だからこそ、フィリピンの海上保安のメンバーの視点に立ち、彼らが自国のためにも自分たちで運営できる力をつけて自立できるような支援をしているという。「人材育成」―これほどの偉業はない。海外に派遣できるギリギリのラインで懸命に情熱を燃やしている。5年という有限の時間の中でこのフィリピンという国のために、彼らのために、何が残せるか、その命題に向け戦っているかのように見えた。
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高橋 義裕
 フィリピンにおいて、まだ歴史の浅い海上保安分野の指導者育成のために、日本から海上保安庁のスタッフが派遣されている。
 多くの資源を海外からの輸入に頼る日本においてはシーレーンの安全確保は重要問題であり、沿岸国任せではいられないと感じた。特に東南アジアでの海賊行為や不法薬物の取引などに対し、積極的に取り締まるべきだと思う。
 しかし、沿岸警備隊委員の中には水泳も満足にできない者がいるため、隊員の資質向上や業務能力の向上を目指した人材育成プログラムの開発から行う必要があったことを知った。
 日本のスタッフは日本人とフィリピン人の価値観の違いや国民性をよく理解し、実に丁寧に取り組んでいると感じた。日本の支援により、海上保安に対する意識が高まったという生徒の感想や、相手国幹部によるハーモニスティックな関係を保っているとの言葉は、大きな成果と考えて良いと思う。またこの支援が将来に渡って日本の国益に寄与することを確信した。
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浜野 直也
 他国での人材育成がいかに難しいかということを感じた。フィリピンでは、国民性の違いもあり、規律面での指導が大変だそうだ。厳しい指導には耐えられないし、時間にルーズで集合時間すら守れない。海上保安の仕事なのに、海の安全を守るという意識が低く、仕事に対する熱意があるのかと疑問を感じた。この環境の中で、日本から派遣された隊員の方々は人材育成のため、日々熱心に指導されている。私は、「なぜ日本を離れ、他の国でこんな苦労を。」と思いながら隊員達を見ていたのだが、フィリピン周辺海域の安全のために自分たちの力が絶対必要だという熱い思い、使命感があるからこそできるのだなと、彼らの話すひとつひとつから感じられた。彼らの努力の成果が少し実を結んでいる。ここで半年の訓練を受けた研修生が現場に出て、規律ある行動で質の高い救助活動や警備活動をしてくれているという。日本からの技術派遣期間はあと3年弱。彼らなら、この期間で世界レベルの意識と知識を持ったフィリピン沿岸警備隊を作り、その後も自分たちで日本から受け取った知識と技術を維持していけるような人材を育成してくれるにちがいない。
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野山 隆宣
 公僕が信頼されていない国。日本もよく似た状況ではありますが、フィリピンでは国のため国民のために奉仕するといった精神が極めて希薄であり、人材育成の場では意識改革が最重要課題であるとのことでした。現実は厳しく、あらゆる面で遅々として進まないと嘆いておられました。生徒たちは若い人を想像していたのですが、年輩の人が多く、年齢を重ねた人の人材教育は前途多難との感想を抱きました。多くの厳しい状況のなかで海上保安庁の方々は熱心に気長に取り組んでおられました。当日は水中での救助活動の訓練を、御厚意によりボンベを着け潜り水中より観察させていただきました。学校とは違い、訓練用プールは深度に差が設けられ、底にはフックがつけられ、訓練中の生徒の様子をモニターできる水中カメラも設置され、大変立派な設備であり訓練効果も期待できる。協力期間の五年が終了し全権を委託した場合、フィリピンの方々が自立できるかは、はなはだ心もとないものがあるが、ここはフィリピンであり、自立を促すべく海上保安庁は最大限の努力を払っている。
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