第2段階はそれから10年ほどたった21世紀初頭である。経済協力評価報告書のページ数は大幅に減り(2003年3月刊行の2002年版は106頁)、薄くなった分だけ入門的な記述は簡素化された。写真や図表で美しくなったこともこの段階の特徴である。他方、当時のODA改革動向、評価実施体制の詳細な記述、評価専門家の氏名と肩書きなど、ODA評価の研究者にとって役立つ情報が増えている。専門的な研究を志す人にとって不可欠な知識が随所に見られる。それだけでなくさらに興味深いのは、この第2段階がさらに3つの時期に分かれることで、経済協力局が報告書を刊行した時期、国際協力局に組織改編された後の報告書の時期、そしてODA評価の独立性を担保するため大臣官房に評価部門が移った時期(2011年以降)である。局長や官房長の「はじめに」は、こうした3つの時代状況を知るために重要で、国際援助行政の研究テーマになる。第3は2018年度以降、紙の冊子媒体での一般配布をやめた段階である。インターネット公表を中心にした現在、ODA評価研究にとって注目すべき点がある。まずメリットである。誰でも、いつでもアクセスできるので、ODAとその評価について学習したい人は誰でも簡単に入手できる。執筆側にも、美的感覚から文章内容の見せ方まで、ネット公表を意識した努力が見られる。とくに国連ミレニアム開発目標(MDGs)や持続可能な開発のための2030アジェンダなど、重要な関連文献についてはURLをクリックすると一瞬でアクセスできるので、初学者にはとても親切な文献案内になっている。これはとても大きなメリットである。ただ、デメリットもある。目当ての文献に簡単にたどり着くために、苦労して手に入れた昔のような「ありがたみ」が薄い。クリックを続ければいろいろな文献にアクセスできるので、何のためにその文献が重要なのか考えなくなる。さらに、紙媒体の頃は報告書現物を時系列で並べて総覧しながら、小さな記述の違いや変化に気づき大きな発見につながったことがあったが、今はそれがむずかしい。とくに、報告書の保存が難問で、ODA評価のアーカイブを作成する方法に良いアイデアがないので不安が残る。ODA評価年次報告書を見て30年、広報としての報告書の在り方、報告書を使った研究と学習について、考えさせられることが多い。ODA評価 年次報告書202208
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