ODA評価 年次報告書 2022
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07ODA評価 年次報告書2022ODA評価にも時代の変化がある。ODAに関わる実践と評価の理論研究、二つの変化がある。国際援助に関わる専門的なディシプリン、評価の実践をふまえた国際的な専門研究、そして外交と国際協力に関わる体制の整備と輿論の成熟がODA評価の分野を良い意味で変えてきた。また、アカウンタビリティ制度を整備した日本政府の取り組みもODA評価に影響したことは間違いない。情報公開法(1999年)、独立行政法人制度とその評価制度の創設(1999年)、中央省庁改革(2001年)、政策評価制度の設置(2001年)、国際協力事業団(JICA)の独立行政法人化と新しい評価制度の開始(2003年)、公文書管理法(2009年)、行政事業レビュー(2011年)などである。そしてこうした変化の原因を考える方法として、「形」から入るアプローチをここに提案したい。その時代の状況が「形」に反映されることが多いからで、また時の必要に迫られた結果が「形」になるからである。ここで指摘したい「形」の変化は3段階ある。厚い本格的な資料の段階、カラー刷りで写真や図表を多用するようになった段階、インターネットを主体にした段階である。第1段階は今から30年ほど前の『経済協力評価報告書』時代で、B5版白黒印刷の重い冊子を公表していた段階である。外務省が評価報告書を刊行して10年目の1992年度版が429頁、多いのは1993年度版574頁と1998年度版386頁である。この段階の記述はODAと評価それぞれに関する入門的内容と専門的内容の複合で、とくに1992年版は序論「評価とは何か」からはじまり、日本のODA評価の現状、組織体制、JICAとの関係、評価規準と評価ガイドラインについて懇切に説明する。第2部総論では評価の種類として国別評価、セクター評価、合同評価、有識者による評価、国際専門家による評価、JICAによる評価、海外経済協力基金(OECF)評価の各実践について解説する。第3部は各論で380頁ほどを使って上記第2部の評価の実践例を紹介し、現場の状況を詳しく語っている。とくに構造調整計画の実績と問題点を指摘している部分は時代を感じさせる。この第1段階の特徴はODA評価の基礎を専門的に解説するところにあり、ODA評価に縁が無かった研究者には極めて貴重な資料で、大学院講義の教材に最適だった。ただ、欠点もあった。ODAに無縁の研究者や一般市民、地方在住者や外国人研究者は、この報告書をどのように入手できるか分からない。そもそも経済協力評価報告書があることすら知らない人には、報告書が存在しないのと同じだった。「霞ヶ関」と「永田町」にアクセスできる方法が必要な段階だった。同志社大学政策学部教授/日本評価学会顧問山谷 清志寄 稿ODA評価年次報告書の30年

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