マラウイの小規模農家(丹羽克介氏提供)ODA評価 年次報告書202214も貢献している。JICA海外協力隊の継続的な活動は、日本とマラウイの二国間関係において重要な人脈の構築や相互理解の増進に役立っている。日本企業のマラウイ進出や民間投資の促進に関しては、「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ)」などを通じて日本の中小企業とマラウイの産業人材をつなぐ試みがなされてきたが、現在のところ、具体的な成果に結びついていない。評価結果に基づく提言(1) 日本の中小企業やNGOの進出や投資環境の整備に資する措置を強化すべきマラウイの法体系の形成を支援してきた国・ドナーとも協調して、マラウイの会社法・租税法を精査し、海外からの企業・NGOの進出や投資の参入障壁を取り除くための改訂手続きを支援する。他ドナーと協調して、税関手続きの簡素化に向けた課題別研修や技術協力を実施する。旧来の開発区分の枠組みにとらわれず、起業・金融・投資など日本の中小企業のビジネス・チャンスを促進する分野を掘り起す。「ABEイニシアティブ」の選考基準を、民間企業幹部候補を含め、起業家精神旺盛な人材の発掘が可能なように修正し、日本の中小企業がマラウイ人起業家と共同事業を展開するために必要な支援体制を強化していく。(2) 留学生・研修員の「人材バンク(仮称)」を設置し、彼らのネットワーク構築と活用を強化すべき人材ネットワーク構築のための留学生・研修員「人材バンク(仮称)」を、登録者の個人情報保護に配慮しながら、JICA現地事務所の管轄でクラウド上に設置する。その運用には、元留学生・研修員同窓会の有効活用を図る。同窓会が主体的に運用することで、留学生・研修員間のネットワークに加え、一般市民との架け橋となり、日本の中小企業、投資家、NGOとの架け橋としても機能するように支援する。「人材バンク」を日本の中小企業や投資家にとって利用しやすいものとすることは、提言1にも寄与するため、創設時には、課題別研修や技術協力と組み合わせてもよい。(3) JICA海外協力隊とマラウイ側中核人材の戦略的・継続的活用を図るべき対マラウイ支援における日本の比較優位は、草の根レベルでの人材育成を通じた技術協力にある。この取組での、JICA海外協力隊の経験者の登用・活用を図る。これを促進するため、元隊員が専門知識・技術を得る機会を増やす。隊員が、任期後も継続的にマラウイにて活動することで、経験を積み、専門性を磨く機会を提供し、シニア海外協力隊員や専門家へとキャリア・アップできる道筋を用意する。日本の支援事業の担当者や元研修員を、マラウイ側の中核人材と位置付け、彼らの継続的な関与を促すため、彼らに対するフォローアップを充実させる。彼らが学んだ知識や技術をリフレッシャー研修によって定期的に更新するとともに、知識や技術を向上させるために、「ABEイニシアティブ」や「SDGsグローバルリーダーズ」などの長期研修に加え、新たにマラウイを「人材育成奨学計画(JDS)」対象国に加え、大学院留学の機会を増やす。(4) マラウイの一般市民に向けた外交広報戦略の強化を図るべき外交的な波及効果を高めるために、「顔の見える援助」を継続的に発展させ、「顔が見える」だけではなく、「日本国民からマラウイ国民へのメッセージ」が声となって伝わるように、戦略的にODA広報を位置付ける。日本国民の声が、マラウイ政府や援助関係者だけでなく、一般市民にまで伝わるように、SNSなどの参加型ソーシャル・メディアを活用した双方向外交を展開する。日本マラウイ協会が、日本国内向け広報に果たしてきたような機能を同窓会に付与する。発信力のある元研修員・留学生を活用して、SNSでの発信頻度を高めるとともに、マラウイ人のインフルエンサーやアーティストにSNSでの効果的な広報を依頼し、ODA広報の質を高める。
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