日本の無償資金協力により建設された国立障害者リハビリテーション・センターODA評価 年次報告書202212た、2011年以降、継続して両国間のハイレベル協議を含む要人の往来を実現しており、政治リーダー間の交流緊密化と理解促進は、在留邦人及び日系人社会の安全と繁栄に資するものと考える。このような観点から、対ペルーODAは外交的な重要性を有している。(2) 外交的な波及効果二国間関係への効果(友好関係促進など)の観点では、日本とペルーは2011年以降、継続して両国間の交流実績を有していることが確認できた。さらに、日本の支援の成果が両国の友好関係促進に寄与した例も多数見られた。また、国際社会での日本の立場支持の観点では、ペルーは、国連安保理改革、貿易、環境、軍縮・不拡散などの分野を始めとして、国際社会での活躍が顕著であり、国際問題への対応について、日本とペルーが協力関係を構築するべく緊密な関係を深めることが期待できる。さらに、日系企業の進出など経済関係強化への効果の観点において、進出日系企業拠点数は増加している。このように、対ペルーODAにより日本とペルーのより良好な関係構築といった外交的な波及効果が確認できる。評価結果に基づく提言(1) 基本方針「持続的経済発展への貢献」の維持2010年代後半の政治危機及び南米大陸で最悪規模のコロナ災禍に見舞われたペルー経済を元の成長軌道に回帰させるため、持続的経済発展への支援を行うことはペルー側のニーズに合致しており、外交上も二国間関係の強化、地球規模課題の解決に向けた協働を図っていく上で重要である。(2) 「選択と集中」:3つの重点分野への各種ODAスキームによる支援の継続「経済社会インフラの整備と格差是正」、「環境対策」、「防災対策」の課題・社会のニーズは変わらず存在し、ペルーの基本的な開発の方向性は変更されていない。これらは日本の技術の活用が大いに見込まれる分野であり、今後も支援を継続する必要がある。(3) 多様な主体の資金・活動との連携強化日本のODA予算の有効活用と将来的なペルーへの援助資金の減少を鑑みれば、開発に資する多様な主体の資金・活動との連携強化は一層重要である。その観点から民間セクターとの連携によるスキームを積極的に活用して優良案件を形成・実施していくべきであり、また事業間連携、国際機関連携についても引き続き注力することが重要である。(4) 長期的な人材育成につながる技術協力の継続の必要性ペルー側が望む技術支援を通じた新技術の導入というニーズに応えるには、民間企業技術に加え、大学でのスタートアップ支援、SATREPSなどをより活用し、大学・研究機関の連携をより深化させることが可能である。(5)日系人社会との連携の維持日本のODA事業の受け皿及び開発効果のペルー社会全体への橋渡し的役割を担う日系人社会がそのアイデンティティを維持し、文化・社会・経済的地位をより高めていくことに寄与する協力は、彼らを日本のODAの連携パートナーとして維持する有効な手段であり、今後も継続していくことが望まれる。(6)ペルー国の自然環境及び気候変動の影響を踏まえたインフラニーズへの対応インフラニーズに対する各種ODAスキームによる支援は継続的に検討する必要がある。その際には、対象地域の自然環境や気候変動の影響を十分に踏まえたものにするほか、ペルー国が推進する地方分権化を考慮しつつ、環境社会配慮の適切な実施、特に地元住民への対応や関係者間合意形成への支援に十分な配慮が必要である。
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